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次の日になると、メルローはやつれていた。
「どうしたの?」
「ラールがうるさくて、眠れなかったんだ。あいつは、眠らなくても平気なのか? ずっと騒いでいたぞ」
「あっ、ジュリアさ~ん、おはようございます~」
ラールは元気よくそう言って来た。
「皆さん、丁度いいところにいましたね。ユメの事について、ディックに報告しなければいけません、皆さんに協力してほしくてですね……」
ユメノがそう言って来た。
「いいわよ、みんな行こう」
ディックの元へ向かうと。
「ご苦労様、東のクライアント、あんたがそこまで優秀なクライアント何て思わなかったよ、それで、サーバントは?」
「この子です。ラール君と言います」
「はい、僕、幸せのサーバンです。昨日からジュリアさんのお世話になっています。よろしくお願いします」
「そうか、ジュリア君の物になったか」
少し残念そうにディックがそう言う。
「でも、ユメ君を救ってくれてよかった」
ディックは、ほっとした様にそう言った。
「それで、報酬なのだが……何が良い?」
「ラール君も増えたので、家を建て替えようと思っています」
「そうか、じゃあ、東に手配する様言っておく」
「ありがとうございます」
そう言って、下がった後。
「メルローはやっぱり本棚付きかな、チャニには大きいクローゼット、ラールは何が欲しい?」
「う~ん、部屋は自分で改築したい」
「リフォーム派か~」
くだらない話をして、中央の城を満喫していた。
「ディックさんも太っ腹だよね、家が建つまでの間、この中央の城にいていいなんて言うんだよ」
ジュリアは笑いながらそう言って。
「来る時に寄った。お店にも行きたいし~、城の秘密の部屋を見つけるのもいいかもしれないわね」
そんな話をしながら、とりあえず、ユメの様子を見にユメの所へ向かったところ。
「ユメ、元気になった」
「う~ん、とっても元気よ」
ユメノが優しい目でユメを見つめている。
「こんなこと言っては何だけど、お似合いだけど、サーバントとクライアントが付き合ったのって聞いたことないから、付き合うのは、無理なんじゃないかしら?」
チャニが小声でそう言って来た。
「まあ、最高クラスなら、大丈夫なのかもしれないけど」
「そうよね、でも、確かに聞いたことないよね」
少しメルローが頭に浮かんだ。
「あっ、家の設計図、もらったんだけど」
そう言って、紙を広げると、7LDKの大屋敷だった。
「……広過ぎ」
チャニが不満そうに言うと、ユメノが設計図を覗き込み。
「いいや、ジュリアさんほど、優秀であれば、サーバントは、どんどん集まるでしょうから、大きい方がいいとディックが言っていましたよ」
ユメノが説明をしてくれた。
「そうよね、住民は、増えるわよね」
チャニが笑ってそう言った。
「チャニさん、ラールさん、メルローさん、私にも改めてあいさつさせてください」
ユメがそう言って三人を手招く。
ユメノとメルローがすれ違った時、メルローが何か言った。でもジュリアには聞こえなかった。
「私は、ユメ・フィリアよ、皆さん、この前は、大変なご迷惑をかけてすみませんでしたね」
「いや、そうでもない」
メルローはどうでもよさそうにそう言った。
「あなたも成功すると良いですね」
ユメは笑顔でそう言った。
「ところで、ジュリアさん、屋上は星がきれいなんですよ、一〇時頃行って見てはどうですか?」
「いいですね、今日行こうかな」
☆ ☆ ☆
そして、夜になって、屋上へ向かうジュリア。
「サンドイッチを持って行こう、お腹空くから」
キッチンに寄り道して、屋上の階段を上って行く。
「ふんふ~ん」
屋上のドアを開けた。そこには、一面の星。
「ジュリア」
声の主はメルローだ。
「メルロー、星を見ても平気になったの? 前は嫌がっていたじゃない」
「もう、ジュリアに隠す必要がなくなったから、俺は、隕石、つまり流れ星をつかさどっているんだ」
そうメルローが言うと、流れ星がたくさん流れ出した。
「キャーキレイ」
身を乗り出して喜ぶジュリアに。
「俺、お前の事好きだよ」
「えっ、ありがとう、急にどうしたの、私達、ずっと一緒だったんだから当たり前だと思っていたけど、改めて言われるとうれしいね」
ジュリアの目は、家族に大好きと告げる子供の様だった。
「そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
「ああ、もう、なんでもない」
「流れ星に願い事をすると叶うって本当なのかな?」
「そんな、迷信信じているのか?」
「うん」
ジュリアは迷いのない目で返事した。
「そうか」
メルローは、先に屋上から降りようとした時。
「ねえ、メルロー、サンドイッチ食べない?」
無邪気なジュリアにメルローは戻って来てくれた。
「いただく」
「おいしいね、星の下で食べるのって」
「ああ」
そして、しばらく眺めていたらジュリアは眠っていた。メルローは仕方がなくジュリアを抱き上げ、階段を降りて行った。
「ほら、ダメだったでしょう?」
ユメノがそう言って笑った。
「サーバントとクライアントは主従関係以上にはならないんだよ」
ユメノは、そう言って去ろうとしていた。
「俺は、あきらめないぜ、お前みたいにはな、何度だって伝える。だから、お前も逃げるんじゃないぞ」
「逃げるね」
ユメノは少し眉を動かして去って行った。




