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悪夢契約者ナイトメアクライアント  作者: 花言葉
中央のナイトメアクライアント
11/19

3

 奥の部屋に入るには、カギが必要である。ユメノが首に付けていたカギを大きな鉄の扉に差し込んだ。

 ガチャッと音がして重い扉が開いた。そこには、一人の女性が眠っている。

「この方が今回のサーバントにとりつかれた方です」

 ベッドの上にいたのは、白いドレスを着た。結婚式前の女性の様だった。

「この人、結婚するはずだったの?」

「いいえ」

「じゃあ、なぜ、白いドレスを着ているんですか?」

「この方の仕事着だからです」

 よく見ると、ドレスの丈が短く、足が出ている。ベールを被ってはいるが、それは、結婚式のような華やかな物ではなく、白い布だ。

「彼女は、「私の友達になってくれる方に失礼の無い恰好をするべきだわ」と言って、この格好をして働いていたのです」

「彼女はどんな職業の方?」

「ナイトメアクライアント」

 ユメノがそう言い放ち、みんな固まる。

「お前が、ナイトメアクライアントじゃないのかよ」

「私は、臨時のナイトメアクライアントです。彼女は、本物のナイトメアクライアントです」

「そうか!」

 みんなの話は、ところどころ変だった。それは、この女の人の職業を隠すためだったんだ。

 そう気づきユメノを見る。

「どっちにしろ、救ってあげる方には変わりはないわ」

「ありがとうございます」

「サーバントに飲まれしクライアント、救って差し上げます」

「おー」

 チャニが喜んで声を出した。

 その女の人の夢に入ると、とても明るい光景だった。

「ユメノ、しっかりしなさい」

 女の人は、ユメノを叱っているようだ。そして、彼女の周りには、サーバントが集まっている。

「でも、ユメ、ユメの様には、できないよ」

「やる前からあきらめないって教えなかった?」

「うん、ユメ、わかった」

 女の人の名前は、ユメのようだ。そして、一つ疑問に思ったのは、これは、悪夢なのだろうか? と言う事だった。

(幸せそうな夢だけど……)

「どうだい、ジュリアさん、何かわかったかい? この夢の中の何かが嫌な事のはずなのだけど……」

 ジュリアは考えた。

(クライアントが最も嫌う事? そうだな~、地位をはく奪される事とかかな?)

 しかし、それでは、この夢の意味が解らない。

(次にクライアントが大事にしている事と言えば、サーバントよね?)

「サーバントが減ったりしていない?」

「それは確認した。その位の事は、私でも考えた。ユメは、本当にサーバントが大好きだったから」

 ユメノが悔しそうにそう言う。

「ユメノは、ユメが大好きだったんだね」

「あっ、はい、ユメノだってユメが付けてくれた名前でして……」

「えっ? ユメノって親はいないの?」

「はい、いませんが、それが何か……」

「苦労したんだね~」

 チャニがユメノの肩に手を置いてそう言った。

「いえ、苦労などしていません、ユメが、すべて嫌な事を消してくれましたから、お母さんと言っても過言じゃない位、私を大事にしてくださったんです」

「お母さん?」

 お母さんと呼ぶには、ユメは若すぎる気がしたので、少し不思議に思ってそう言うと。

「はい、私にとっては、お母さんですよ」

 ユメノは迷わずそう言った。少しおかしいと思ったが、クライアントと言う職業は、謎が多い物だから、少々不思議に思う事があってもおかしくないと思い。

「ユメが育ててくれたから、お母さんって呼んでいるのね? ユメノとユメは年が離れてないようだけど、ユメはお姉さんじゃなくお母さんなのね」

「はい、おかしいですか?」

「少々はね」

「少々って言うか、すごい違和感だよね」

 チャニがそう言うとユメノは。

「ユメは、クライアントでしたから、経済的にも余裕がありましたし、サーバントを従わせるほどの度胸もありました。だから、お姉さんと呼ぶ方が、私には違和感なのです」

ユメノの話を聞いたら、なんだか納得できた。確かにクライアントは、姉と言うよりも母だと思う。

「それなら、仕方ないか」

 ユメの夢の中では、相も変わらず、サーバント達とユメノと楽しそうに話している日常だった。

「やっぱり、もう少し考えさせて」

 ユメノに向かってそう言うと。

「良いですよ、一回、夢から出ましょう」

 そう言って、夢の外へ出してくれた。

「あなたには、二日間、時間をあげます。ですから、その間にユメの悪夢の謎を解いてください」

「わかりました」

 神妙な面持ちでそう答えた。

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