いち。
雨は好きかな。
雨に沢山濡れるのは、流石に苦手だけど。
雨の音とか、雨が降った後の匂いとか。
傘をさせば、傘の中に小さな自分の世界ができるのとか。
それが何だか、落ち着くんだ。
雨宿りも好き。
雨を見ながら、音を聴きながら本を読んだり。
そう言うの、好き。
雨宿り……。
頭の端に残る思い出。
雨を誰かと一緒に見たいって思いが叶ったときだったから、何となく覚えてる。
雨の好きな僕。
五月雨に降ってきた、恋模様。
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____キーンコーン……
どこの学校でも流れるようなチャイムが、終礼を告げる。
荷物の詰まった鞄を肩にかけ、階段を降りる。
「響、じゃーな!」
「うん、じゃーね!」
今日は学校が早く終わった。
早く家に帰れる。
いつも帰ったら本を読む。
恋愛小説とか、結構好き。
お気に入りの曲を聴きながらだと、もっと良い。
「それにしても、」
お腹が減ったな。
さっき、ちょっと、ぐぅって鳴った。
下駄箱のロッカーから靴を取り出して履き替える。
まだ家まで、バスと歩き、合わせて四十分はあるだろう。
バスに揺られて十分ほど。
いつものバス停で止まる。
ここから三十分も歩かなければいけない。
「お団子……」
バスを降りて、いつもは見ない周りを見渡したところに見つけた、ちっさめの店。
和の雰囲気が漂ってきそうだ。こう言う雰囲気も、好き。
お店の屋根には、
『雨の花』
と書かれている。
それが店名だろう。
ここら辺は背の低い草が生えているだけで他に店はなかったから、お団子だけでも、と店へ足を運んだ。
この小説は、偽貍狸さんと共同執筆をさせていただいています。
雨より君に。
花より君に。