THE OTHER SIDE 5 -形ー
国立研究所へ向かう車中。博士は運転する私に尋ねた。
「H山には天文観測所が確かあっただろう。当らなかったのはまさに神の奇跡というしかないね。隕石は山頂を掠めたそうじゃないか」
「どうでしょうかね」
「ところで君、我々がイメージする神様は人型なのだと思う?。私が思うに、それは神が人であったからに他ならないからだと思う。おかしな言い方だったかな。つまりこういうことだ。もし犬の世界に神がいるとしたら、やはりそれは犬の型をしているはずだよ」
「はあ」
「逆に。猫神様が存在するとすれば、彼が作り出すのは、当然のことながら人では猫のはずだ」
我々の車は段々と山の奥深くに呑みこまれていく。
博士はたばこに火をつけ、窓に目をやりながら続けた。
「地方によっては八百万の神が万物に宿るそうだが、あの場合それぞれが神の形を取っているというより、宿った魂を抜き出した時、やはりそれは人の形をしているのではないだろうか。まあ今はどうでもいい話だがね。神の奇跡に考えていると、ふと思ったのさ」
彼はそう言い終え、シートに深く沈み込んでいき、そこからは、私と彼は到着まで一言も言葉を交わさなかった。