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事後処理と怒れる女神と天罰と



 荒地を照らす月明かりの向こう側から、馬車のものであろう……馬の蹄鉄と車輪の地を噛む音が聞こえてくる。


 未だぼんやりとした影にしか見えぬその姿は、前に吊られているカンテラが進むにつれ小刻みに揺れながら大きくなってきており、徐々にこちらへと近づきつつあるのが判るのであった。


 ――ミツハが去ってからのオレたちは、早速ウォルトさんをなんとか子爵邸へと運ぶべくその段取りを相談していた、なんせこの巨体である……当然オレが背負えたりするわけもなく、数メートル動かすだけでも大仕事なのは目に見えていた。

 かといっていくら完璧な治療が済んでいるとはいえ、先程まで瀕死の重体であったウォルトさんをこのまま地べたへ転がしておいてはマズイ、ずっと背を向けていたアリーシアもなんだか少し様子が変ではあるがようやく立ち上がり、まずはこの眠れる巨人をいかにして運ぶか、というのが最優先事項となる。


 やがて相談の結果イルビスが次元の裂け目を子爵邸につなぎ、カノポスに頼んでそこから影渡りで子爵邸内へ搬送しようという話に決まった。

 しかしそこで問題が一つ、実はイルビスが日中に岩山で行ってくれた洞窟近辺の境界面の修復は、かなりの属性力を消耗する作業だったらしく、さらにその後も相次ぐ戦闘で何度も全力での精霊使役をしていた彼女である……顔には出さぬが、本来ならばもうイルビスの属性力の行使は限界に近い状態であろうと、心配顔のアリーシアからの指摘があった。


 大丈夫じゃ! と、気丈に言ったイルビスではあるが、そう言われてみると疲労の翳が濃く見える様子でもある……オレもかなり逡巡したが、ウォルトさんを早く搬送しなければならない状況であるのも事実……やむなくここはもうひと踏ん張りしてもらい、次元の裂け目を創ってもらうしかないとの結論に至ったのではあった……その矢先に馬車の音が聞こえてきたのである。


「まったくアイツら……絶対来ちゃダメって言っておいたのになあ……」

 ようやく視認できるほど近付いてきた子爵家のものであろう軽快なオープンタイプの馬車の上に、ブンブンとこちらへ手を振るローサの姿を認めたオレは苦笑いをしながらボヤくように呟いた、御者台で手綱を握っているのはどうやらサマサのようである。


「なあぁっ⁉ なっ、なんじゃぁっ⁉ これわああぁ~っ⁉」

 驚いたことに、やって来た馬車にはローサとサマサだけではなく子爵まで乗っていた……当然、小山のように地に倒れ伏している黒竜の骸を見た子爵の反応である、どんなに剛毅な人間でも宵闇に浮かぶこの姿を突然見れば叫び声が出るであろう……


「なんじゃ~じゃないわよっ! だから説明したじゃないっ!」

 少し憤慨している様子のローサが、ガクガクしながら黒竜の骸を眺めている子爵へ、そらみたことかっ! と言わんばかりに畳み掛けている、なかなかに容赦のない言いっぷりであるが、どうやら彼女の伝えた説明は子爵には半信半疑でしか受け止められていなかったようであった……


 だがローサの言葉も耳に入らぬほど驚愕している様子の子爵に、こりゃダメね……と、諦めた風の彼女は馬車から飛び降りるとオレへと駆け寄ってくる。

「タクヤッ、無事でよかった……竜も倒せたのね……」

 心底心配してくれていたのであろう、今にも泣き出しそうな表情のローサに少し照れくさくなりながらもオレは。


「ああ、いろいろあったけどな……とりあえずなんとか村は護れたよ、でも経緯は後でだ、ウォルトさんがオレを庇ってやられたんだ……アリーシアの力を借りて治療は終わってるんだけど、なるべく早く子爵邸へと運ばなきゃならない」

「ええっ⁉ ウォルトさんが……? それは大変ですっ!」

 馬の手綱を曳いて歩いて来たサマサがこの会話を聞き、地へ横たわる巨人を認めて慌てて言った。


「そんなに危ない状況だったの……⁉ あっ! じゃあ、さっき見えた金色のすごい光って、アリーシアの治療の光だったのねっ?」

 珍しいことに鋭く察したローサである、森に一番近く危険度の高いであろう村はずれの牧場に避難指示を伝えるべく、説得に時間をかけられぬ場所ゆえに子爵自らが行くと言い出したそうで、急行していたときに黄金の光が見えて居ても立っても居られなくなり、せめて様子だけでも……と、こちらへやってきた旨を説明された。


 なるほど……と頷いたオレの頭頂にタイミング良くボフッとカノポスが着地し影渡りでウォルトさんを馬車の上へと運んでくれた、更にオレたち全員が乗ると定員オーバーでギュウギュウ詰めになってしまった馬車は、それでもなんとか子爵邸への帰路につくのであった……



 子爵邸へ到着してからがまた大忙しであった。


 ウォルトさんを客間のベッドへと搬送してアリーシアが容体の再チェックを始める。


 造血幹細胞とやらを賦活して大量失血した分を早急に補う治療も並行していたのは、オレの中のアリーシアから伝わってきていたので理解している、そのためであろう荒地にいたときよりも遥かに血色が良くなっているようであった。

 そんなウォルトさんの巨体はベッドに収まりきらず足首が出てしまっていたが、さすがにそれはやむを得なかった、サイドチェアーを並べてベッドの長さを水増ししてなんとか応急的に済ませる。


 それから子爵は半信半疑であったようであるが……さすがに村全体の危機を告げるローサとサマサの必死の警告により、避難準備の指示はしっかりと村全体へと出してくれていた、したがってその警報を解除しなければならなかった。

 なので村中に警報を出し終えて集合していた村の青年団員だという若者たちが十人ほどと、フィリアたち騎士団員、そして子爵とサラさんたちメイドの四人も含めたオレたち全員が前庭へと集まり、一体何がどうなっているのか? と、不安そうな表情の皆へオレが今回の騒動の経緯を説明することとなったのである。


「え、え~と、事の発端はまずオレたちが岩山で洞窟の入口を見付けた所から始まるんだけども……」

 結構な大人数を前にしての説明に少し緊張気味で上ずった声のオレであるが、順を追って話していく。


 こちらの世界の人々は次元の狭間の存在をなんとなくではあるが認識している、幼い頃に親から聞かせてもらう童話や物語の題材でよく取り上げられているらしく、よってそんな場所もあるんだなあと漠然とではあるが自然に受け入れられているようだ。

 元々物質界と精神界という二つの世界があることについても公然と周知されているのであり、二千年前の物質界からの侵略戦争からして歴史書にしっかりと記載されているのだ、二世界をつなぐ回廊を魔王が断ち切ったという伝承すらしっかりと残っている、そのために次元の狭間に存在する洞窟を発見したという所までの説明は、語るオレ自身が驚くほど皆にあっさりと受け入れられてしまったのであった。


 しかし、話に古代竜が出て来た途端に皆の眉が明らかにひそめられる……先程黒竜の骸を目の当たりにした子爵だけは何か考え込んでいる様子であったが、その他の皆はやはり信じられぬといった表情が浮かんでいた……よくこれで避難準備の指示を受け入れてくれたな……とも思ったが、まずは一通り説明を終えるのが先決である。

 細かい戦闘の経緯や隠しておかねばならぬ部分、特にミツハのことは全て伏せ、それからお忍び旅行中のアリーシアとイルビスの正体は村の青年団員たちには知られてはならない、なのでその辺はなんとかごまかしながら語った……アリーシアはアリサさん、イルビスはイル子さんと偽名で紹介をし、二人は仲間の精霊使いだということにして説明したのである。


「――というわけで、二匹の竜はなんとか倒すことができました……避難の準備をお願いしてましたが、もう大丈夫そうですので村のみんなに伝えてほしいんです」


 オレが話し終えた途端に場がザワザワと騒めいた、そりゃそうであろう……あの黒竜を見ていない者には竜退治など到底信じられるような話ではないのである……今度新領主になるこの兄ちゃんはとんでもないホラ吹きだったのか……? と、思われているかもしれなかった。


「ま、まあ、簡単に信じられるような話じゃないのは解ってるんだけど……」

 ザワザワが収まらない場へ、弱ったようにオレが言うと突然騎士団員の中から声がかかった。


「タクヤ殿! ということはその倒した親竜の骸は、今も村はずれの荒地に放置されたままということなんでしょうか?」

 声の主はフィリアであった、実に良い質問である……事の真偽を問う前に実際にあるのであろう竜の骸を確認するのが一番手っ取り早い、というのを騒めく皆へ教える意図であるのは明白であった。


「あ、ああ、とても動かせるような代物じゃないからなぁ……あっ⁉ でも、村のみんなが見に行って近寄ったりしても大丈夫なもんなんだろうか……?」

 村民への安全面に関する配慮が欠けていた……どうなんだろう? と、横に並ぶイル子さんへ顔を向けると、イル子というのが少々気に入らずにずっとオレをジト~ッと睨んでいたイルビスであるが、う~む……と少し考えて口を開く。


「ある程度近付くくらいならば問題ないであろうの……ただし触れたりはせぬ方が良いのう……まだ魔素と瘴気が残留しておる、外側へ放出しておる様子ではなかったがの……」

 なるほど……と頷くオレに、さっきまでザワついていた皆も興味がそちらへと移ったらしく、オレの話の真偽よりも竜の骸を見物してみたいという思いが強くなってしまったようである。


「ではタクヤ殿、その竜の骸の周囲にロープで囲いを作り、我等騎士団員が一人、側に交代制で歩哨に立ちましょうか?」

「そ、そうしてもらえるとありがたいけど……なんか悪いなぁ……」

 実はお忍びであるアリーシアとイルビスの護衛がメイン任務な騎士団の皆さんであった、若いが義務感と使命感の強い精鋭が選抜編成されているのである、なのでフィリアのこの提案に面倒だと嫌な顔などする者は一人もおりはせず、むしろ皆、任せて下さいっ! とばかりに胸を張るのであった。


 ふと横を見ると、うんうんエライわねぇ~、と自分も騎士団員なハズのローサが他人事を眺めるようにニコニコ笑っている……


 やがて解散となり、青年団員たちが警報解除を告げるべく村へと散り、騎士団員もとりあえず現場を見に行くと言って荒地へと向かって行った、残るオレたちはようやく一段落ついたので安堵のため息をつきつつ、夜もだいぶ更けた今になってようやく夕食にありつくべく食堂へと向かうのである。



「――タクヤ殿……ワシはタクヤ殿と皆さんに謝らなければならんのう……」


 食堂のテーブルを皆で囲みコースも半ばまで進んだ頃、スパイスの効いた大きな牛スペアリブと格闘中だったオレへ、それまでずっと無言で何か考え込んでいた子爵が突然口を開いた、オレたちが帰ってくるまで待っていてくれたのであろう夕食のスープにも未だ手を付けず、なんだかショボンとした感じだったので気になっていた矢先であった……


「あ、謝るって……何をです……?」

 給仕をしていたサラさんが心配そうに顔を上げるのを横目で見つつ、オレは子爵へと尋ねた。

「ローサ君とサマサ君が戻ってきて竜出現の話を聞かせてくれたときにの……昼にドラゴスレイ家の先祖のお恥ずかしい話をお聞かせしたじゃろ……? それでワシを慰めるために竜が出たなどという芝居をしてくれているのでは……と思ってしまったのですじゃ……」


 あぁ~……ローサとサマサの説明に半信半疑な感じだったのはそういうことだったのか……と納得しつつ、まあそう思われたって致し方ないほどの突飛な話であるのは重々承知の上であった、オレだっていきなり竜が出たなどと言われれば疑う方を優先させるであろう……


「いえ……そんなことは全然気にしませんよ、到底すぐに信じられるような話ではなかったですからね、むしろそれでよく避難準備の指示をしっかり出していただけたなと……感謝の気持ちしかありませんよ……」

 オレがそう言いローサとサマサがウンウンと頷くのを見ると、子爵はみるみるホッとした表情へと変わっていった、よっぽど黒竜の骸を目の当たりにしたショックが大きかったのであろう、あんなのと本当に戦っていたオレたちを疑ったという自分にかなり罪悪感を覚えていたようであった……


「そう言っていただけると救われる思いですじゃ……」

 胸をなでおろすという表現そのものの子爵の安堵の顔に、オレたちと一緒に帰って来てから何故か元気が無かった子爵の様子を見てずっと心配していたのであろう、同じようにホッとした顔のサラさんが、冷めた子爵のスープを温かいものへと取り換えながらおずおずと尋いてきた。


「お館様、実際に荒地へと行かれて見てらしたんですよね……? その……タクヤ様が倒した竜を……?」

 話の流れから竜の出現は本当らしいと思ったのであろう、興味が湧いてきた様子で荒地の様子を子爵に尋ねる、そんなサラさんに子爵は遠い目をしつつ真面目な顔で答えた。


「あぁ……まるで山のような大きさじゃったわ……タクヤ殿、ありゃあ頭から尾の先まででどのくらいありますかのう……?」

「ん~……四十メートル以上はあったと思いますが……」

「よっ、よんじゅ……⁉」

 絶句するサラさんに普段は冗談も多く言うのであろう子爵も、こればかりは真実であるという顔で頷いてみせた、そして切れ長の目を丸くして驚いている彼女へ。


「サラちゃんも夜が明けたら荒地へ行ってみるとええ、タクヤ殿が本当にこの村を救ってくれたというのがよく解るでのう……」

 しみじみと言う子爵の言葉に余程好奇心をそそられたのであろう、サラさんは少し頬を赤らめながらソワソワしだした様子になり。

「あ、あのですねお館様……先程から青年団の方々や村の皆さんがですね……朝になるまで待てないとおっしゃって、今から皆で見に行こうという話になっているようなんですが……」

 ほ? という子爵の少し驚いた顔に、サラさんはますます赤面しながらも恥ずかしそうに続ける。

「そ、その……エイラとヘレンとノーラも……行きたいと申してまして……」


 他の三人のメイドさんの名であろう、ここで子爵もようやく理解したらしく、フオッフオッと笑い声を上げながら。

「そういうことかの、よいともよいとも、夜道も皆と一緒に行くのであれば危険はないじゃろうし、荒地には騎士団の方々が先に向かわれていることでもあるしのう」

 笑いながらそう言う子爵の言葉にサラさんの顔もパァッと明るくなる、そんな彼女へ優しい表情になりながら子爵は続けた。

「我がドラゴスレイ家の次期当主が成した偉業、しかとその目で見ておいで、気を付けて行ってくるのじゃぞ」



 急いで食事の後片付けを済ませた後、荒地へと向かう村民一行と合流すべく、サラさんたち四人のメイドさんが急ぎ足で前庭を抜け楽しそうに門をくぐって行く……


 リビングの窓からその姿を見送ったオレが振り返ると、U字型に配置されたソファーで我が家の女性陣が思い思いにくつろいでいた。


 子爵は食事が終わった直後、村長と村の重鎮たちより緊急集会への招きがあり、迎えの馬車に乗って単身で出かけて行ってしまった、やはり青年団への説明だけでは不十分であったのだろうか……と思い、オレも行きましょうか? と言ったのであるが、子爵はフオッフオッと笑いながら、これはワシの仕事ですからのう~と留守を任されたのであった……


 よって今は我が家の五人しかおらぬリビングのソファーに座るや、スグにサマサが嬉しそうに果実酒のグラスを運んできてくれる、ここではお客様の立場なので家政婦スキルは封印していなければならない、なんともストレスが溜まっていたようで、普段通り給仕できる嬉しさに満面の笑みを浮かべてグラスを置いてくれるのである。


「おいっ、タクヤよ……」

 すると、ススッとオレの横へ滑って来たイルビスが小声で話しかけてくる……何だ? と思って見るとイルビスはオレではなく、対面側のソファーの端にポツンと座るアリーシアへと視線を向けていた。


「お前……ねえさまの様子がおかしいのに気付いておらぬのか……?」

 耳元でボソボソと尋ねられるが、しかしオレもずっと気にはなっていたのである……改めて見ると、今のアリーシアは普段はアルコールを飲まないのに珍しくワインのグラスを持っており、なんだか暗く沈んだ風にボーっと考え込んでもいる……そんな様子を目の端で眺めつつ、小声でイルビスへと答えた。


「いや……オレも変だなとは思ってたんだが……やっぱアレからだよな……?」

 ウォルトさんを治療すべく、アリーシアにオレの中へ入ってもらってから様子がおかしくなったという意味である、イルビスもその辺は承知しており頷きながらボソボソ言う。


「うむ、そうじゃろうのう……お前、何かねえさまに失礼なことを考えていたのではあるまいな?」

 ぐうっ……となるオレを黒紅色の瞳が至近からジトーっと睨んでいる、そんなコトないとは思うが正直自信はない……だがオレの中で精神が共有されたような状態になり、互いの感情や思考が流れ込み合う共感現象の後に様子がおかしくなったアリーシアである……原因はどうしてもオレにあるようにしか思えないのであった……


「で、でもさ……オレ、アリーシアに悪感情なんて持ってないってのだけは確かだぞ……? なのになんだか落ち込んでるようにも見えるんだが……」

 そう言うオレの言葉にウ~ム……と考え込んでしまうイルビスである、アリーシアが恥ずかしがるのは分かる……どうせオレがスケベなことでも考えていたのだろうと……だが、落ち込んで元気が無くなるのは解せない……イルビスもそんな考えであるようだった。


「じゃあイルビス、こうしよう……」

 ボソボソ伝える言葉にフンフンと頷くイルビスである、やがて彼女がウムッと大きく一つ頷くと、オレは皆に向けてコホンと咳払いをしつつ口を開いた。


「え~と、ローサとサマサには荒地でのことはまだ全部話してなかったなー、庭で説明した経緯はかなり伏せてる部分があったからさ……改めて本当にあった一部始終を教えるよ」

 オレがそう言うと、テーブルの上にあった知恵の輪を夢中でカチャカチャしてたローサと、いろんな酒瓶がズラッと並ぶ酒棚を面白そうに眺めていたサマサが揃って、お? とこちらを向いた。


 まあ、伏せていたといっても庭での説明で全く言わなかったのはミツハの出現だけである、それを伝えると未だミツハと面と向かって会ったことのないローサとサマサは、え~? また出たの……? といった程度の、あまりピンとこぬせいか……のほほんとした感じでしかない。

 それでも戦闘の詳細な経緯は身を乗り出して聞いていた、特にサマサはサクライ学部長への報告義務もあるので真剣な表情である、話が液状化現象を利用した辺りになると、あ~! だから竜の脚が地面に埋まってたんですね……と、得心のいった様子でもあった。


 そして場面が進み、ウォルトさんが黒竜の瘴気雷からオレを庇って瀕死の重体になってしまったところへ進むと、オレとイルビスはチラッチラッとアリーシアの方を窺い見始める……

 そうである、ローサとサマサへ荒地の経緯を説明しつつ、アリーシアの反応を窺って話の取っ掛かりを作ろうという作戦であった、だが当のアリーシアはというと……オレの話を聴いているんだかいないんだかすら判然としない様子で、掌に持つワイングラスのガーネット色の液面をただぼんやりと眺めているだけであった……


 う~む、よく判らん……と、アリーシアの無反応ぶりに二人揃って渋い顔になるオレとイルビスである……

 だが、話がさらに進んでウォルトさんの傷口の瘴気を除くため、オレがアリーシアの精神を己が身に迎え入れた場面になったそのときであった……


 ピクッとアリーシアの身体が動いた……ハッ⁉ としたオレとイルビスが彼女を見ていると、明らかにオレの話で何かを想い出しているのであろう……だが、グラスを見詰めている視線は動かさずに、むしろ何かを堪えているかのようにワナワナし始めているではないか……顔も紅潮してきているようである……


 お、おい……なんだかヤバイんじゃないか……? と、イルビスへ視線で訴えると、イルビスも急激に増してきた緊張感に、うぐぐっ……と顔を強張らせている、明らかに普段と違うアリーシアの様子に、何かとんでもないことが起こるのではないかという嫌な予感が膨れ上がってきたのだ……

 とはいえここでローサたちへの話をブツ切りにするとそれこそ不自然であった、心臓をバクバクさせながらも続きを語り、だがようやくミツハの去った最後までを伝え終えることができた、話している間もアリーシアが何かとんでもないことを言い出すのではないかと思って気が気ではなかったが、終始うつむき加減の彼女は沈黙したままだったのである。


「へぇ~……いろいろあったのねぇ……」

 戦闘の詳細な内容も含んでの話なので情報量が多かったせいであろう、把握しきれておらぬ様子のローサが大雑把な感想を言う……サマサも一所懸命整理しているようで、フムフムと細かく頷きながら語られたことを頭の中で反芻しつつまとめているようであった。


 しかしてそのとき突然、ローサの把握しておらぬがゆえの屈託ない言葉が、あたかも場を氷結させる特殊爆弾のように投下された……


「ねえタクヤ、アリーシアが元気ないのはどうしてなの? 何か怒ってるの?」


 当然オレとイルビスはスゴイ顔になり、パキ~ン! と凍り付く……


 もちろんオレたちも最終的にはそっちの方へと話の流れを持っていくつもりであった……だがモノには順序というものがある、探りを入れつつ様子を窺ってアリーシアの気持ちをなだめ、その上で問題があれば慎重に解決していく……つまりソフトランディングに全力を注いでいこうというのがオレとイルビスの考えであった……

 ところが今のローサの一言である……ソフトランデイングどころか上空一万メートルから突然地面にグシャッと叩き付けるような、いわゆる場の流れを墜落させるような言葉を突然発したのであった、オレとイルビスが急降下中のようなスゴイ顔になるのも当然と言えば当然である……


 言葉も発せずに固まったまま、それでもなんとか様子を窺うべくギギギ……と目だけが未だ沈黙しているアリーシアへと動く、するとそんなオレたちの状況を知ってか知らずか、相変わらずドヨ~ンとした雰囲気をまとう愛の女神さまが、ようやくグラスから目を離しこちらへと向いて口を開いた……


「わたひ……怒ってないれす……元気なくもないれす……」


 へ⁉ である……なんだかロレツが回ってない……アリーシア、もしかして……酔ってるのか……? と、驚きつつマジマジと観察すると確かに目の周りがポゥっと紅く染まっている、しかもなんとなく目つきが険しい気もする……美しい眉も少々吊り上がっているようだし、トロンとはしているがご機嫌斜めなジト目になっていて、なんだか不穏な空気を纏っているように見えるのであった……


「え~、そぉ? でもいつもと違う気がするしぃ~、あっ! もしかしてタクヤに力を貸したときに何かあったんじゃな~い? ムッツリスケベなコト考えられてたとか~?」

 総じて我が家の女性陣は不本意なことに、オレのことをそういう目で見ているようである……だがそれよりなにより今日のローサは鈍いんだか鋭いんだか訳が分からない、今は空気も読まずに核心へと遠慮なくズバズバ切り込んできやがる……青褪めてアワアワするオレとイルビスがアリーシアの反応を恐る恐る窺っていると、なんとアリーシアはローサのこの言葉に、うっ……となって黙り込んでしまった……


 やっぱりそうだったのぉ~⁉ と愕然とするオレであるが、イルビスはどうやら自分とは関係ない話のようであり、これは好機と狡賢く考えたのであろう……慌てて間に入るべく口を開いた。


「ね、ねえさまっ、一体なにがあったのじゃ? コイツがスケベなことを考えているのはいつものコトではありませぬか……何も言わずに落ち込んでいるのはねえさまらしくありませぬっ! どうかはっきりおっしゃって下されっ!」

「そ~よ、そ~よ、アリーシア言ってやりなさいよっ」


 もう既にオレが悪者になっている……


 しかしアリーシアがジトッと見返したのは、そんなことを述べるイルビスとローサの二人であった……あ、あれっ……⁉ とギクリとした顔になる二人を見ながら、アリーシアは心なしか、ム~……と唇を尖らせて不満顔になっているようである。


「そんらにおっしゃるのれしたら、わかりましゅた……お話しいたしましゅ……」

 そう言うや、突然半分ほど残ったグラスのワインを一気にキューッと飲み干した、あ、ああぁ……と青くなって見つめるオレたちの前で、ヒックと小さなシャックリをしたアリーシアはテーブルにコトンとグラスを置いて口を開いた……オレたちは固唾を飲んで耳を傾ける……


「タクヤひゃんり力を貸してほしいろ言われらろき……わらひとっても嬉しかったんれひゅ……必要ろしてくれれる、タクヤひゃんろ力になれる……っれ……ヒック……」


「うん……サマサ、アリーシアに水を……」



 サマサが渡した冷たい水を時間をかけてゆっくり飲んでいると、酔いの酩酊で虚ろだったアリーシアの目が幾分かシャッキリしてきた。


 にしてもアリーシアらしくないのである、普段アルコールを飲まない理由は今のを見て解ったのだが、非常に弱いからなのであろう……なんせグラス一杯分のワインでこの有様である……

 なのに今夜はあえて飲んだ……なんだか不機嫌というか落ち込んでるような雰囲気なのも併せて考えると、どうもこれはヤケ酒というヤツなのではないか……? と、今になって気付いたオレであった。


 と、いうことは何か不満に感じているのだろうか……? オレとの共感現象が原因なのも間違いなさそうなので、いよいよもって訳が分からなくなってきてしまった、オレってそんなにアリーシアを怒らせるようなコトを考えていたのだろうか……


「ねえさま、大丈夫ですかの……?」

「ええ、らいじょうぶれす……」

 心配顔で尋ねるイルビスに、まだちょっと怪しげではあるがしっかりした声に戻ったアリーシアが応える、だがその雰囲気は相変わらずというか……なんだか一層ドヨ~ンとした不機嫌なものになった気がする……


 それからリビングをしばしの間沈黙が覆った……アリーシアが話すと言ったので中断されている話が再開されるのを待っているのだが、彼女は一向に口を開かず黙ったままなのである……しかしてこの沈黙を打破したのは、空気を読めてないのか度胸があるのかは判らぬが、やはりローサなのであった……


「あの……アリーシア、話の続きは……?」

 それでもアリーシアの様子がおかしいので気を遣ったのであろう、少々遠慮気味に尋ねるローサの言葉に、数瞬何か考え込んでから決心するようにコクリと頷くアリーシアである、その動きに黄金の髪がサラリと揺れた。


「あのとき、震えるくらい嬉しかったんれす……必要とされるのがこんらに嬉しいものらとは知りませんれした……タクヤさんの中へと入ったとき、すぐに私たち四人をとても大切に想ってくらさってる気持ちが伝わってきました……とても暖かくて……とても力強くて……私が幼いころに触れた心のまま……いえ、そのときよりももっと深くて強い優しされ私たちを想ってくらさっていました……」


 へぇ……というオレへの視線がローサとイルビスから向けられる、二人とも少し頬を赤くしてニヤついていた、サマサは真っ赤になって天井を見上げている……もちろんオレは照れくさすぎてプルプル震えていた。


「れも……そのすぐ後に、タクヤさんの私への感情が届いてきたんれす……」

 その言葉にアリーシアへと向き直った皆の目がギョッ⁉ と見開かれる、酔いのせいで少し紅潮したその顔はしかしなんとも哀し気な表情を浮かべ、目にはいっぱいの涙が今にも溢れだしそうに溜まっているではないか……


「そのときタクヤさんから一番初めに届いた……私への一番強い想いは……お……」

「お……?」


 お……って、ま、まさか……アリーシアに想いを届けた張本人であるオレは最悪の予感で瞬時に血の気が失せ、ローサとサマサはググッと身を乗り出して言葉の続きに集中している、そこへアリーシアの震える声が小さくつぶやくように言った……


「おっぱい……と……」


 う、うわぁ~……というオレへの視線がローサとイルビスから向けられる、二人ともあからさまな軽蔑の眼差しでドン引きしていた、サマサはあちゃあ~……という表情で天井を見上げている……もちろんオレは言葉を発することすらできず白目を剥いてガクガク震えていた。


「サイテー……」

 二人の揃った声が追い討ちでオレへと突き刺さる、なんといっても共感現象で伝わったオレの想いである、否定することができない……否定するということはアリーシアが嘘をついていると言うのと同義になってしまうのである、アガガガ……と大口を開けてピクピクするしかできぬオレは、今回ばかりは言い訳の一つもできぬのであった……


「タクヤさん……タクヤさんにとって私は……おっぱいらけの存在なのれすか……?」

「ちっ、違うぞっ! オ、オレは……」


 確かにオレは普段、アリーシアを見るときの視線はまず胸からというのが多いかもしれない……何か会話をしていても、いつの間にかその豊かな胸に目が移っていることも多々あったであろう……水着姿を披露されたときなんかは、ソコに挟まって死にたいと想ったほどである……だが……だがしかし……

 これは我が家の家庭崩壊の危機ともいえる場面である、哀しそうな顔で尋ねるアリーシアへワタワタと手を自分でも訳が分からぬ動きで振りながら、そんなことはないという気持ちを伝えたいのであるが、これ以上ないほど慌てているせいで言葉がなかなか出てこない……


 しかしそのとき、そんな大慌てなオレをジト~ッと見ていたアリーシアがフッと微笑んだ……へっ⁉ と驚くオレへ、一転して穏やかな声が続いてきた。

「分かっています……本当は次から次へと……タクヤさんが想ってくらさってることが流れ込んで来たんれす、私のこともとても大切に想ってくらさっていました……」


 急に和らいだ表情になり雰囲気すら変わってしまったアリーシアに、ポカンとしつつオレは。

「そ、そりゃそうさ……でも、じゃあ、どうして……」


 そう尋くと、また少しジトッという感じになった目がオレを見つめて。

「らって……おっぱいって最初に伝わってきたのは本当れすもの……私、結構ショックらったんれすよ? らからイヂワルしちゃいました……」


 この瞬間、安堵のために全身の力がカク~ン! と抜けていく、未だちょっと不満そうに唇を尖らせているアリーシアであるが、どうやら許してくれそうだというのが判ったのである……


「はぃ……スンマセンした……」

 肩をガックリと落とし謝るオレにアリーシアも再び微笑んでくれる……だがそこへ、なんとか収まりそうだと思い安心したのであろうか、横からイルビスがニヤニヤしながら割り込んでくる。


「ねえさま、よいのですかの? もっとガツンと言ってやらねば、こ奴のスケベは治りませぬぞ?」

 オレへの皮肉タップリなその言葉でリビングにまた穏やかな空気が戻ってくる……もうっイルビスったらっ! と、笑いが起こってメデタシメデタシ……のような流れになるのをそのとき誰もが予想し、そして疑いもしなかった……だがそんな穏やかな流れは幻想であるかのように、アリーシアがゆっくりと視線をイルビスへと移す……


 それまで微笑んでいた目がスッと細く伏せられた……目は全く笑っておらぬのに口元にだけは微笑が貼り付いたように残されている……イルビスへと向いたアリーシアの表情がそう変わっていくのを、オレは呆然と眺めていた……


「そうれすね……しっかり言わなければなりませんね、でも――それはイルビス……あなたにもれす……」


 言葉は静かであるが、ズゴゴゴ……と聞こえるほどの威圧感がアリーシアから湧き出し始めた、そんな彼女から正面切って見つめられたイルビスは途端にヒッ! と息を飲み、瞳孔が収縮して身体も金縛りにあったようにビクッ! と跳ね、背筋を伸ばしたままの緊張状態で固まってしまう。

 突然自分に向けられたアリーシアの不穏な威圧に、イルビスも訳が分からないのであろう……喉の奥からヒッ……ヒッ……と掠れた声を漏らすばかりで言葉が出てこない、それを見るオレとローサとサマサも再び場を支配した異様な緊張感に身動きできなくなってしまう……


「ね、ね、ねえ……さま……どうなされた……のじゃ……?」

 無言の威圧を続けているアリーシアに、なんとか愛想笑いを浮かべようとしているのであろうが……頬も唇もただヒクヒクしているだけのイルビスがようやく言葉を絞り出して尋ねた、すると……


「イルビス……物質界れはタクヤさんと……それはそれは楽しく遊んれきたようれすね?」

「え……? えぇっ⁉」

 あくまでも内に秘めた感情を抑えて静かに言うアリーシアの言葉を、瞬時には理解できなかったのであろうイルビスがキョトンと目を丸くする、しかしそれからすぐにブレインエフェクター事件の時のことを言われているのだと思い至ったのは、オレとほぼ同じタイミングであったようだ。

 うわあああああぁっ⁉ と、驚愕の表情に変わるのもほぼ同時のオレとイルビスである……そんなイルビスへ、目だけが笑っておらぬ微笑みのままのアリーシアが続けた。


「タクヤさんの中れ……タクヤさんの記憶のイメージもいくつか私の中へと流れ込んできました……そのとき私が見たのは……イルビス?」

「はっ、はひっ⁉」


「物質界れは靴を買っていただいたようれすね……?」

「ひっ……」


「大きな本も買っていただいたみたいれすね……?」

「ひっ……ひぃ……」


「とてもおいしそうなパフェもごちそうになったようれすね……?」

「あ……あうぅ……」


「楽しそうに踊ってきたのれすね……腕を組んれ仲良く歩いたり……よかったれすね……?」


 ほぼ全部見られてるうぅ~っ⁉ まさかオレの記憶のイメージまで伝わっていたとは……アガガガ……と、そこから精神体が出てしまうんじゃないかと思うくらい大口を開いて、半分白目を剥いてヒクヒクするオレとイルビスである……


「あ、あんたたち……やっぱり……」

 ローサも察したのであろう、以前問い詰められた時分は知らぬ存ぜぬで押し通したオレとイルビスであるが、今や証拠としてアリーシアにオレの記憶のイメージをバッチリと見られてしまっているのである……とても言い逃れはできないのであった……


「やっぱり隠してたのねっ! ひどーいっ! ねえっ、アリーシア、この二人コソコソ隠し事するなんてヒドイと思わないっ⁉」

 一度オレたちが追及の手をかいくぐっているだけに余計腹立たしいのであろう……アリーシアに同調を求めつつ非難する気満々のローサが、鼻息も荒くオレとイルビスを交互に見ながら言った。


「そうれすねローサさん……コソコソ隠し事をするのは、本当によくないと思いますよ……?」

 

 だがローサの言葉に応えるそのとき、アリーシアの目だけが笑わぬ微笑みはイルビスからゆっくりと離れ、今度はオレたちを非難しようとする当のローサに向けられていった……


「えっ? えぇっ⁉ ア、アリーシア……? どうしちゃった……の?」

 未だ酔いの残る少しトロンとしたジト目に正面から見据えられ、まさかの矛先が向いてきたことに激しく動揺しているローサである……その目はバタフライで泳ぎ始めており、おそらくそれはアリーシアの機嫌を損なう原因で思い当たるフシを必死に考え始めてもいるのであろう……

 そんなローサをしばし無言で見つめていたアリーシアであるが、当のローサはいつまでたってもアウアウしているだけなので埒が明かないと考えたか、ゆっくりとその口を開いた……


「タクヤさんの子爵位継承権授与式の日の夜……夜更けにこっそりタクヤさんの部屋に行かれたようれすね……?」

 それを聞いた瞬間ローサは、ぐわあああぁっ⁉ っと叫び出しそうな顔でのけ反る、声は出ず喉の奥からヒィァァァ~と掠れた空気の音だけが漏れていた……もちろんオレもシンクロしたような同じ状態になっていたのは言うまでもない……


「ねえねえタクヤ? 今日のドレス姿ろうらった? う、うん……綺麗らったよ……とかなんとか言いながら……イチャイチャイチャイチャ……そのうち盛り上がってきてツンツンツンツンなんてしながらまたイチャイチャイチャイチャ……」

 またもやズゴゴゴと威圧感を増しながら、オレから伝わったイメージを逐一再現するアリーシアであった……おっしゃる通り授与式で美しくドレスアップして、陛下に公式の場でオレとの関係を発表されたローサは、その夜浮かれてコッソリとオレの部屋へ来たのである……


「ツ……ツンツンって……ど、どこを……?」

 そのときサマサが真っ赤な顔で茫然とつぶやいた、ハッ⁉ としたアリーシアはサマサへと、これは本物の微笑みをニッコリと向けるが、しかしそれはサマサにはまだ早かったわねという意味なのであろう、ドコをツンツンしていたのかは言わずにスルーなのであった……


 そして不機嫌極まりない黄金の女神さまは、オレたち三人へ更なるお怒りの言葉を告げるべく、続けて口を開いていく――



「――只今戻りましたっ! タクヤ殿っ‼ なんとも驚きましたっ! 想像していたより遥かに凄いっ! あんな化物を一体っ……あ?……あれっ……?」


 やがて荒地から戻って来たフィリアが報告のためにリビングへと現れる、黒竜の骸が予想を遥かに超えるものだったのであろう、興奮した様相で飛び込んできたのであるが……


 目元が真っ赤なトロンとした虚ろな表情で、グラスのワインをチビチビ飲んでいるアリーシアと、そしてその対面のソファーの上で白目を剥いてピクピクしている完全轟沈状態のオレとローサとイルビスの三人がフィリアの視界に映る……


「こっ、この状況は一体……⁉」

「あ……あは……は、は……」


 何がどうなってこんな状況になっているのか……呆気にとられているフィリアへ、アリーシアへ注ぐワインの瓶を持ったサマサが困りきった顔で笑うのであった……



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