貴族?そんなん知らん。そんな事よりも幽体離脱
続きました。
小説を読んでて思ったことがある。
貴族ってめんどくさくないか?
見栄と面目を最優先して、腹のさぐり合い、相手の隙を探して貶める。実にめんどくさい。大体何で中世あたりなんだ。別に現代でもいいじゃん。中世ってステータスか何かなの?
何?おお勇者よ死んでしまうとは情けない。っていうのを出したいがために王やら貴族がいる中世にするの?大統領に言わせりゃいいじゃん。大名に言わせりゃいいじゃん。なんだったらそこらのおっさんでいいじゃん。・・・いや、止めよ。俺が嫌だ。
まあ、貴族とか下克上に憧れるのは解るよ。コレの作者もそうだし。貴族になってハーレム憧れてるくらいだし。でも、台詞の裏に策略を忍ばせなければいけないなんてめんどくさいし。
まあでも、僕が小説家になったのなら中世のファンタジー物とか貴族に転生してチートや魔法でウハウハみたいな小説は書きたくない。絶対に書きたくない。
科白考えるのめんどくさい。というか体制考えるのもめんどくさい。
もしも書くとしたら・・・青春ラブコメディを書くかな。
そしてラブコメディ小説の中身は俺がモデルの主人公が女をとっかえひっかえする事になるな~。うっひっひっひ」
「地の文に入ってくるな」
「先輩だってメタ発言してるじゃないですかー。ぶーぶー」
「僕はいいんだよ。語り手だから。大体僕は俺なんて一人称使わないぞ」
しゃべり方にあってないとか言われるが、どうしても俺だと違和感が出てくるから僕にしている。まあ一人称なんて何でもいいんだよ。公式の場でなければ僕で通せる。
「今目覚める肉食系の血。さあ、他に人はいません。気持ちいい事しようじゃないですか」
「冗談でもやめてくれ叶。僕が学園を敵にすることになるから。生き残れないから」
叶運命。もうこの時点で名付け親の名付けセンスが理解できない。
しかし、五歳の時点で英語を学習。いや、解読をした麒麟児。どうやったら英語を解読できるんだ?
その後にも天才的頭脳を生かし、数々の数学の未解決問題を解き明かし、発明品を生み出し、莫大な資産を持っている。
その上黒髪ロングでメガネの美少女。性格の変態さを抜けば立派にもてる。しかし彼女はもてないのだからどれだけ残念なのか解るだろう。
「大丈夫ですよ。先輩がどうなろうと私関係ないんで」
「僕がどうにかなるのが確定しているのがおかしいんだよ!何で自分さえよければそれで良いみたいな事になるんだ!」
「見捨てたっていいじゃない。人間だもの」
「よくありません!僕がよくありません!」
「それはそうと先輩。この部屋に随分急いで入ってきましたけど何かありましたか?」
「話題を変えるな!はあ、全く。さっきのは知ろうとしていたから逃げてきただけだ」
「へー。無駄だって言う噂は聞かなかったんですかね」
「知らんよ。僕らはどうやったって七不思議については人に話せないんだから」
そう。教えたくなかったわけではない。教えることは出来ないのだ。話そうとすると、一回目は右目に激痛が襲う。次は左。三回目になるとただの死にたくなるほどの頭痛だ。この所為で突然右目を押さえだして何か喚いてる人みたいな評価をいただいたこともあった。
大体、人の口に戸は立てられぬと言うように、七不思議の秘密が漏れない筈がない。一応校則に「秘密」のネタバレ禁止みたいな項はあるが、皆飾りだと思っている。
しかし、あの校則の拘束力は本物だ。校則だけに。
「先輩ってくだらないこと考えてるとにやにやしますけど結構気持ち悪いですよそれ」
「大丈夫だ。君に心配されるほどでもない」
「そんな事よりも先輩。こんな所に幽体離脱できる機械があるんですけど・・・」
そういえば忘れていたが、叶は科学者だった。彼女は新しいものを作っては僕にそれを試す事が趣味となっていて、タイムマシンが出来ましたといって、第二次世界大戦の最中にとばされて地獄をみた。どこまでもドアの実験ではとばされたアマゾンの奥地で帰り道であるどこでもドアが爆発し、一週間アマゾンで彷徨うことになった。
「なんだ?今度は?なんの試練だ?」
「タイムマシンとどこまでもドアの事は謝りますって」
「あれだけじゃないぞ!式神が出て来たときも!この部屋が石器時代の貨幣に埋もれたときも!全部僕に任せて自分は次の物の開発に勤しんでいたじゃないか!もう嫌だ!もう実験台にはならないぞ!」
その事件の所為で俺は式神を五体。さらには状態のいい貨幣が見つかったといって国に表彰されたこともある。
叶が作る機械は一応全部効果があるから困る。それも二回目を体験できることはない。一回つかったら即オーバーホール。つまり、解体してしまうのだ。
この不気味な筒型の機械は幽体離脱できるとかいって今度はどんな不幸に巻き込まれるんだ?
「これは上手くいったら幽霊になるので女子更衣室とかも覗ける優れものでして」
「今度はなんてもの作ったんだ!」
「あれ?お気に召しませんでした?」
「全くしょうがないなー!」
「迷い無く物騒な機械に入っていく先輩は筋金入りの変態ですね」
しょうがない。これはしょうがない事なんだ。いや、これが悪用されたら困るし、効果はちゃんと試しておかないと。うん。それに今の時間は女子テニス部が更衣室を使っているはず。うん。完璧。
「で?どうすりゃいいんだ?」
「これの手順はですねー。まずそのボタンを押してください」
「これか?」
ガコン!と音がして筒型の機械のドアが閉まる。
モニターに移った叶がまた指示を出してくる。
『次は青のレバー。その次は黄色のスイッチを切り替えた後、紫のヘルメットを被る。』
「やったぞー」
『そしたら赤のレバーを引いて準備完了です。後は四時間ほど待つだけです。』
え?
『そしたら脳に激痛が走った後に幽体離脱できるはずなので、終わったらそのままにしておいて大丈夫です。それではさよなら。』
「え?ちょっと待て!ちょっと待て!」四時間てお前完全下校時間過ぎてるから一般の生徒残ってないじゃん!」
返事は帰ってこない。
えー。俺このまま放置ですかー。幽体離脱したっていうのに何もみれずにおわるのかー。
そのまま俺の意識は遠のいていった。
廊下を歩いているのは叶。
その足取りは軽い。今し方先輩を鉄の檻にぶち込んだというのに。いや、足取りが軽いのはそれをしたからか。正しいことは解らない。
誰もいない校舎端の階段を降りていく叶は呟く。
「これだから先輩は面白いんですよねー。次はどんなものを作りましょうかねー」
叶は笑う。無邪気とも邪悪とも取れる笑みを浮かべながら。
静かになった部屋。
中央に変な機械があるがそのほかは普通の部屋だ。ただ教室、と言うよりも生活スペースに近いかもしれない。
その隅に設置されていたハンモックに揺られ、今まで誰にもコメントされず、描写すらされてなかった存在がいた。
「叶が普通の物を出してくる訳がないのに・・・。まったく馬鹿だねえ」
青色の髪をした女がいた。染めたとは思えないほど綺麗な髪の持ち主。ヘッドホンを首にかけ、腰まである髪は後ろで高めに結ばれている。
顔のそれぞれのパーツは整っているが表情はめんどくさいと物語っていた。
七間名波。彼女もこの部屋の秘密を解いた一人であるが彼女が解いたのは部屋だけではない。遊戯は3つ。叶は4つ。彼女は6つだ。あともう一つで七つそろうがヒントはつかめていない。
さて、なぜ彼女が面倒くさい表情をしているのか。
それは遊戯を助けなければいけないからである。
それも一回目ではない。何時だって叶に振り回され、酷い目にあった遊戯を幾度と無く。文字通り死にそうになったこともあった。アマゾンに取り残された事もあった。
彼女はなぜ頑張るのか。それは遊戯が作るお菓子がおいしいってだけだ。他意はない。
今日も彼女は遊戯を見捨てれない。
この場合、学習しない遊戯がアレなのかお菓子のためにそこまで命を懸けれる七間がアレなのか。
私には解らない。