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短編

普通の恋愛がしたいんだ!

作者: 慧波 芽実

小さい頃からお姫様と王子様みたいな恋愛に憧れてた。

いつも振られまくってて正直実ったことはなかった。

人から好かれる友人が羨ましかった。

でも全然、こんなのを望んでいたわけではない!!


ことのはじまりはトイレに行こうとしたときである。トイレ前だからか真冬なのに窓前回の寒さの前。生徒はみなそこを足早に通る。もちろん、私もそのまま通り過ぎようとしたら腕を引っ張られた。というか痛い痛い痛い!!

腕の痛さと寒さに腹が立ってその人をみるとなんだか全身に鳥肌がたってしまった。私のレーダーが言っている。これ以上関わってはなんかだめだっ!

そんな悲しい気持ちも逃走を考える時間も必要ないくらいに彼はとろけるような笑みを浮かべた。

「好きだよ」

「あ、そうですか」

数秒の沈黙の後にそう返した私。

廊下は思わず静寂に包まれそして大発狂がいたるところから聞こえた。1番発狂したいのは私である。

告白をしてきた先輩はイケメンと有名な柏木先輩だった。

話した回数は一回のみ。ふらふらしてた柏木先輩が階段から落ちそうだったためその先輩の鞄を思い切りひっぱったことからはじまる。しかし落ちた。

綺麗な顔。笑顔を浮かべながら柏木先輩は言い放った。

「もう俺は君依存症だから」

思わず鳥肌がたってしまったのは仕方ないと思う。すでにたっていた鳥肌の比じゃない。わかっているわかっているんだ。なんか危険だと!

「お断りします」


「ルカ!さっき見てたよっ!告白されてたね!しかも柏木先輩とか!!知り合いなら知り合いって教えてよぉ!ね?あわせてくれる??」

きゃあー!という声を聞きながら、友人たちの話が盛り上がって行くのを見る。

「ルカにもついに!初彼だね!」

「あんなイケメンが初彼とかいいなー!」

きゃあきゃあいう友人たち。

教室にいるクラスメートの位置付けの他の女子の中には憎々しいといった表情で睨んでくる子もいた。モテるのがいい、とは思ってたけどもてすぎるのも大変なんだなぁと思いながらきゃあきゃあいう友人たちをなだめようと口を開く。

「断ったから、初彼はまだ先!」

「は!なんで!?」

「タイプじゃない」

これで終わりかと思っていた柏木先輩の告白はこの後ラッシュのように続くことになる。


ふと振り向いたら柏木先輩がいたり。

いきなりリストバンド外されて見せられたのはリスカの後で、君に会ってからしなくなったんだ、と堂々と言われたり。はたまた君が消えたら今度こそ生きる意味をなくしそう、と言われたり。

先輩の親友から何故か任されたり。

依存症宣言されたり。


重たい、重たすぎる。

いくら相手がイケメンでもこれはお断りだ。というか私のタイプはフツメン男子!雰囲気イケメン男子だ!

告白→お断り

を校内のいたるところで繰り返しているおかげか常識的な人たちはがんばれーと声をかけてくれるようになった。いや、それはいいんだけど。なぜあなたたちはどのくらいもつかでトトカルチョしてるんですかね!?付き合いませんってば!


そしてなぜか。

先輩ファンからの嫌がらせが始まった。

「潔く身を引きなさい、最低女、淫乱、おぉ、おぉ、すごいな。この人の語彙能力。最低女ってワードがめっちゃ出る出る」

「ルカ、それ嫌がらせだよ」

「なんで嫌がらせ受けてるんだろう?」

「付き合ってるからじゃん?」

「付き合ってないよ!!」

「まだ付き合ってなかったの!?」

「絶賛お断り中なの。まだとか言わない」

「あ、ルカ」

友人は教室の入り口を指差した。柏木先輩がひらひらと手を振っていた。

「ルカ、会いにきた」

思わず顔が引きつってしまうのは気のせいだろうか。

「あぁ、もう、ルカかわいい。ルカが家にいて、帰ったらご飯あっておかえりとか言われたら本当幸せだろうな。

ルカ、卒業したら一緒に住もうな?大丈夫、俺大学いくけど株で儲かってるし。ルカ1人なら養えるから。ルカは大学もバイトも買い物もしなくていいから。おはよう、いってらっしゃい、おかえり、おやすみの挨拶をくれるだけでいいから」

マシンガントークのように言われた言葉に危機感を感じた私はきっと悪くないと思う。

「という俺にはルカだけだからルカにも俺だけでいいよな。買い物もなにもいらないよ?俺がするからルカの目にうつるのは俺だけでいい。あぁでもこどもは5人くらいほしいな。ルカに似た女の子。うん。いいね。でもな、ルカが子どもにかまけちゃったら多分俺、ルカだけつれて海外とか行きそうな気がする。ルカに似た女の子だったらちっちゃいころのルカみたいでかわいいよなぁ男だったら、うん。ルカとるからな」

ぺらぺらと話す言葉にドン引きしたのは悪くない。すこし前までの完璧クール系イケメンの代名詞のついていた柏木先輩はどこに消えたんだろうか。

「先輩。ごめんなさい。付き合えません。お断りします」

最近の常套句である。

ちなみに嫌がらせはあるときを境にぱたりととまった。とってもステキな笑顔の先輩をみてなにか悟ったがなにも口には出すまい。


またある日、先輩は朝から下駄箱の前で待っていた。

「ルカ、今日は昨日より3分遅いね。昨日の夜長電話したからかな?俺にも電話欲しいな?

あぁ、そうそう。そろそろルカのご両親に挨拶に行きたいんだけどいつがいい?ルカの中心が俺で回るように、俺が卒業したらすぐ同棲したいな。あぁ、でもそしたらルカを学校に行かせたくない。今でもかわいいかわいい俺のルカが他の男子の目にはいっているかと思うとその男子の目を潰したくなるよね」

素敵な笑顔でいう先輩に恐ろしさを感じた。退避径路を探してみたが見当たらない気がする。


その後も続いた先輩の求愛。

先輩が卒業するまでの1年の間に校内名物となってしまった。

が、しかし。

先輩は卒業、きっともう何もない!

そう思っていたら携帯が震えた。

「ルカ、浮気しちゃったらルカ殺して俺も死ぬね」

記載された文章に血の気が引いたのは仕方ないと思う。

「もう諦めた方がいいよ?」

友人の苦笑にみちた声にギッと奥歯をかんだ。

「私は!普通の恋愛がしたいんだ!!」



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