03
始まりの街を探索をかねて見て回っているとメッセージが表示される。
……ゲーム内時間の朝八時に転送されます。
さてお仕事の時間だろう。送られてきていたメールでは智美姉ちゃんの斜め後ろに立って一緒に遊ぶだけの簡単なお仕事だ。このお手伝いをするだけで無料でゲームが出来ると考えれば儲けもの。学生の僕には月額の課金料金は大きな負担になるからVRMMOは今まで出来なかったんだよな。
カウントダウンが表示され僕は転送される。
一瞬暗転した後、視界がすぐに戻った。目の前には大勢の人が集まっており、ほとんどの人が頭の上に青い文字でゲームマスターと表示されている。
「アリスさんが来ましたよ」ゲームマスターさんの一人がそう言いながら僕を出迎えてくれた。
ゲームマスターさんに案内されて噴水の近くに行くと鎧姿の智美姉ちゃんが居た。従姉妹の僕が言うのもなんだが可愛いと思う。
「智美姉ちゃんはゲームなのにリアルと姿同じなんだね。それよりさ、何で僕のキャラが女なんだよ! 僕は男だからら男の方がいいんだけど変えてもらえないの」
僕は怒った表情で智美姉ちゃんに抗議をする。
「ヒロ君、その名前はだめだよ。零だよ零。それからゲーム内ではレイって呼んで。それからヒロ君のキャラなんだけど客寄せの為には女の子の方が良いらしくてね、そのキャラ販促の為に特別にキャラメイクされたらしいよ。しかもスタッフ一同が開発に忙しいにも関わらず気合入りまくりで作ったらしいから見た目すごく可愛いよ。良かったね」
智美姉ちゃんは悪びれるも無く、それが当たり前のように笑顔で答えた。
「そんな訳あるかー! 大体、同姓しか選べないって公式に書いてたよ。キャラメイクも自分のリアルの姿を少し修正加えられるだけって書いてたよ」
「まー仕方ないよ。ここまで来ちゃったらやるしかないから」
智美姉ちゃんの態度に僕は呆れながらも怒りを表しさらに抗議したが智美姉ちゃんは気にせず、僕をなだめる様にそういった。
……また智美姉ちゃんにやられたよ。
そこにゲームマスターさんの一人が近寄ってきた。
「アリスさん、これを装備して貰えますか。トレードの仕方わかります?」
「わかります。一応、マニュアル目を通したので」
「そうかそうか、お姉さんより真面目だね」
ゲームマスターさんがそう笑顔で言ってくれた。その後は手早くトレードを行う。
受け取ったアイテムを確かめると
【始まりのゴシックドレス 赤黒】防御力 三 ステータス HP+八十 SP+十 MP+十 経験値が増量
【始まりのヘッドドレス 赤黒】防御力 一 ステータス オール+一 スキル上達率アップ
【始まりのフリルシューズ 赤黒】防御力1 移動速度+三パーセント
【祝福の杖】攻撃力 八 MP+十 INT+三 MPの自然回復力が高くなる。
「それは初回限定版に付いてる引換券で選べる装備です。装備してレイさんの斜め後ろで待機してもらえますか。後、連絡が行ってると思うんですがゲームや企業に不利益になる様な発言はしないでください。じゃ~よろしくおねがいします」
ゲームマスターさんが事前に注意事項を説明してくれた。
渡された装備してみるとゴスロリ衣装。まさかこんな服を自分が着る事になるとは……メッチャ恥ずかしいなこれ。
◇◆◇◆
しばらく打ち合わせをしてる智美姉ちゃんの姿を見ながら待っていると【イベント開始一分前】と目の前にメッセージが表示されカウントが始る。
その横に大量のログが表示される。どうやらソーシャルサイトのフォローブックのログの様だ。まじめな質問やガヤのようなもの、智美姉ちゃんに対するコメントなどが流れている。
「こんばんは、プロデューサーの松尾です。初回出荷分が予約販売で一瞬で完売してしまい申し訳ありません。予約できなかった方は毎週追加出荷しますのでお手元に届くまで暫くお待ち下さい」松尾プロデユーサーがそう言葉を切り出し……
行き成り土下座をするプロデューサー。
「という事で、正式稼働前の放送となりましたドリームシンフォニーオンラインちゃんねる。今日はキャンペーンガールのレイちゃんと私、松尾、広報担当の平田でお送りします」
しばらくすると、【そろそろ出番です。】のメッセージが表示される。
智美姉ちゃんが近寄って来て
「この装備が引換券で選べる装備の一つ始りセットだよ。あの有名イラストレーターのポンポコ氏によるもので性能は……これはすごい装備だよね。アリスちょっとくるっと回ってみて」と智美姉ちゃんは仕事モードで話している。
「えっ」
僕は焦ってそう声を漏らしてしまう。僕は恥ずかしいのを我慢しつつ訳のわからないままクルリと回る。
その後はもうなんだか頭の中が真っ白になって智美姉ちゃんに連れられ街の中を回った。
【十分間の休憩です】とのメッセージが表示される。
「アリス大丈夫?」
呆然とする僕に智美ねえちゃんが心配そうに声をかけてくれる。
「あ、智美姉ちゃん。だめ……緊張してもう頭真っ白で」
「だから、それ秘密だから名前はレイって呼んでって言ってるでしょ」
智美姉ちゃんが少し脹れてそういった後に無言で拳骨を僕に落とす。痛みはほぼ無いが衝撃に襲われた。
「休憩明けは戦闘だからもうちょっと頑張って」
智美姉ちゃんに頭をぽふぽふと軽く叩かれ気合を入れられる。
◇◆◇◆
レイが剣を振るいプチボーアを倒す。
プチボーアとは小さいイノシシ。コロコロ丸っこく可愛いと言った感じだ。
僕も少し離れた所にいるプチボーアにプチファイアの魔法で攻撃を加える。
スキルの所持はなかったが今は見習い魔法使いのスキルを所持している。
本来は街で学校に授業料を払い通って習得する流れなのだが戦闘で魔法を使用して欲しいとの事でゲームマスターさんがさくっと僕に習得させてくれた。学校に通って魔法を習得すると言うゲームとしての楽しみを奪われた感じがする。
プチボーアは流石に一撃では倒れなかった様で連続でプチファイアを放つ。狙いを定めて「プチファイア」と魔法名を唱えると勝手にキャストが始まり一杯になると発動するので攻撃するのはさほど難しくは無い。
二発目でプチボーアは倒れる。暫くするとその場にアイテムを残して光の粒子になって消えた。
レイが駆け寄り僕にハイタッチを求めた。
今更気が付いたが僕の背はゲームの中では智美姉ちゃんより低い様だ。
その後も数体のプチボーアを倒す。プチファイアはキャスト中にもう一度唱えると威力が大きくなる。重ねがけが5回できた。
「やったね、アリス。この爽快感はたまらないね~」
「そうだねーすごい楽しい。魔法を使うのもそんなに難しくないし使い方もすぐにわかたよ」
レイに話を合わせながら僕は答える。
【そろそろ終了時間なのでまとめには行って下さい】のメッセージが表示された。
智美姉ちゃんがささっと僕の横に並ぶ。最後に台本通りのお知らせをして智美姉ちゃんの仕事は終了の様だ。
「おつかれちゃーん」
松尾プロデューサーがニヤニヤしながら近寄ってきた。
「零ちゃん、良かったよ~。それから零ちゃんの従兄弟君も良かったよ。どうだいそのアバターすごいだろ。私たちの理想をキャラメイクしたんだ」
松尾プロヂューサーがもうこぼれんばかりの笑顔で熱く語る。
「お世話になります。その外見なんですが自分じゃ確かめられなくて」
「あ~鏡を使えばゲーム内でも見れるから見たらいい。ログアウト後はマイページでも確認できるからゆっくり見れるよ」
松尾プロデューサーはニヤニヤと僕を見ながら教えてくれる。
「わかりました」
「どんどん、ゲーム楽しんで。でもリアルの事は口外しないでくれ、詳しくは規約にもあるから読んでおいて。それより零ちゃん……」
どうやら松尾プロデューサーは智美姉ちゃんの熱烈なファンの様だな。智美姉ちゃん、ご愁傷様。
誤字変更
平尾>松尾
数対>数体
【イベント開始1分前】目の前に>【イベント開始1分前】と目の前に
出も>でも
学校に通うって憶えると言うゲームとしての楽しみを奪わないで>学校に通って憶えると言うゲームとしての楽しみを奪わんといてほしいわ