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ヒトに翻弄されるような優しい空だったら、私はいつまでも見上げていたいです。
近頃は夜が明るくて、申し訳ないと謝りたいですね。折角の星空、男の子、女の子も楽しみたいでしょうに。
総合評価A
知らぬ間に、無意識のうちに彼はそう書いていた。
書き終わってから我に返ってはっと気がつく。
この小説はけして自分に向けられたものではないだろう。いくら最後に投げかけて終わっているとはいえ。
自分が読んでいいものではなかったのだと。そう、感じた。
だが、書いてしまったものはしょうがない。
だって――――――見ていない振りなど、読んでいない振りなど、できようはずもなかった。
―――綺麗な話が書きたかった。
そう言って書きはじめられた、文章が―――
それだけのこと、と言って書きはじめられた「字」の集合体が―――
こんなにも人の心を打つ。温かい気持ちにさせる。
ノートには性格が出る。
先ほど自分が思ったこの考えを、無性に信じたくて。
彼女が書いた綺麗な小説が、彼女の性格さゆえであると思いたくて。
彼は無性に、空が見たくなった。