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一つの空が割れた時、二つになった空はそれぞれ、感情を持ちました。
一つ目の空は、晴れの日が好きでした。
あったかい、ぽかぽかする空が大好きでした。
だからその空は、なるべく太陽に場所を譲りました。
一方、二つ目の空は、雨の日が好きでした。
雷を鳴らすのが、風をびゅうびゅう吹かせるのが、たまらなく面白かったのです。
だから、二つ目の空は雷を鳴らしましたし、台風も喜んで受け入れました。
二つの空は、自分の好きなようにしました。
お互い、邪魔をしたりはしませんでした。というか、割れていたので出来なかったのですけれど。
それからしばらくたって、二つの空の下で、とても、とても悲しいことが起こりました。
ヒト、が死んだのです。
一つ目の空は晴れの日が好きでした。だから雨は降りませんでした。
日照り続きの天候で、水は枯れてひとりの男の子は脱水症状に。
二つ目の空は雨の日が好きでしたから、大雨が続きました。
異常なほどに増した川の水量は、ひとりの女の子を呑み込みました。
やがて、生死をさまよった二つの大切な命は――――永遠に失われてしまったのです。
一つ目の空は泣きました。泣きました。泣き続けました。やがて、それは大地を潤し、いつもの通りに戻しました。
不器用な二つ目の空は、泣きませんでした。水量は減り、平和な日常が戻ってきました。
それでも、自然の摂理でしょうか、理でしょうか。
二つに“別れた”空の役目ははっきりと分かれてしまっていたのです。
性格にあらがうことは、とても辛く、苦しいことでした。
二つの空は、話し合いました。
わたしは、晴れの日がとくい。
……オレは、雨の日がとくいだ。
「「一緒になろう」」
二つの空は、一つに戻りました。
時々台風なども来ますが、抑えてくれるよう頼みます。
平和です。平和です。
一緒になった空でしたが、意志は残りました。
ある日突然、一つ目の空だった空は泣こう、と言い出しました。
二つ目の空だった空は恥ずかしがりました。
それでも―――――。一つ目の空の考えを聞いた途端に、態度を変えました。
空は、泣きました。しとしとと。静かに、穏やかに。
けしてヒトを殺さぬように。どうか大地が潤うように。
そして――――。
天国へ行った二人の子供たちが、
―――――虹を見ることができますように。
たくさんの色をまとった橋が空に架かった時、空の心は同時に少し救われました。
見れたかな、見れたかな。
「「ありがとう」」
二つの明るい声が、大地に響き渡りました。
女の子でした。男の子でした。
あの子たちではなかったけれど。
今日の空はごきでんです。
陽気な空、素晴らしい天気。今にも風が音楽を奏でそうで。
ヒトに翻弄される空なんて。
思わず頬がゆるみます。
あなたは、―――――どう思いますか?
終わり