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現代文のノートの点検中のことだった。
彼はたんたんと事務的に作業をこなす。
配られたプリントがきちんと貼られているか。板書がきちんととれているか。それに加えて自分なりの書き込みがされているか。
そこで、ある名前に目を止める。
白城 空穂
…この生徒は確か、
あまり印象に残っていない生徒だった。
ノートには性格が出る。字の奇麗さだったり、プリントの貼り方だったりと個性豊かな味がでる。
そして、時にはコミュニケーションとなったりする。
落書きをそのままに出した生徒のノートに感想を書いて返却したら、予想外に卒業するまで応酬が続いた。
白城のノートをパラパラとめくると、ひどく読みにくい字だと分かった。
こういう字を書く奴なのか。
そう思いかけたところで、“ソレ”は表れた。
綺麗な細い線の、流れるような「字」の集合体。
それは、本当に川の清流のようで。
…なんだ……これは
それは、数ページにもわたって書かれたお話だった。
彼は吸い寄せられるように読み始める。
始まりはこうだった。
綺麗なお話が書きたかった。ただ、それだけのこと――――。