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お母さん、一人暮らししたい
お母さん一人暮らししたくないわよ?
見事に、かわされた。
そもそもあんた、料理苦手でしょう
そう、私は料理が苦手だ。
料理をしたら殺人兵器になってしまうとか、ミッシングリンク的なものが起こってしまうだとか、そんなことは無い。
ただ、普通に味が美味しくないだけ。
両親は普通に食べられると言っていた。
…だめかー
無理だと分かっていても、期待はしてしまう。
そう、ツライだけなのにね。
それより、どうなったの、先生は
どうもこうもないよー
母には既にバレていて、応援は――――――
さっさと諦めなさい
してくれない。
当たり前か。
期待、期待、期待
一度、まっすぐに彼を見つめてみたことがある。
瞳の奥の奥の真っ黒を。吸い込まれそうな深い色を持つ彼の目を。
その中に、私は映っているかなと、期待をして、期待をして、期待をして。
私は、泣きそうになりながらのぞき込んだ。
けれど、
すぐさま彼は目をそらしてしまった。
私は、彼の中に私が存在しているのか、――――分からなかった。
………辛いなあー
諦めなさい
母はこう言う。
私は、
――――ー諦めたくない。
―――――若さゆえの“無謀”がある。
――――若さゆえの“希望”がある。