008 ウシロ
ブウゥゥゥゥゥ〜ッ
ボクは毎日バスで学校へ向かっている。
そんなに遠くへ離れてるワケじゃにのに毎日バスだ。
正直バスは嫌いだ。
バスというより…このバスが嫌い。
ちょっとでも騒ぐと先生は怒るし規則がうっとおしい。
だから一度バスじゃなく歩いて行った。
距離的にはそんなに遠くないはずなのに。
全然学校に着けなかった。
どうしてだろう?
「セイちゃん…」
突然、後ろの座席からボクの名前を呼ぶ声がする。
その声に聞き覚えがあった。
ボクは固まった。
「リュウちゃん?」
「…決して後ろを振り向かないでね…」
「…う・うん」
「振り向いたら君は…死ぬ…よ…?」
「…絶対、振り向かないよ!神に誓って!」
「…ぷっ。『神様』なんていないよ、セイちゃん。
いたら、ボクら『障害者』なんて存在しないだろ?」
「………。」
「…そんな事より、君のママだよ。」
「ママが何か?」
「ボクを成仏させる為に…
霊能者をパソコンで探してるんだ。」
「……リュウちゃん…君は死んだんだ。
君はここにいちゃいけないんだ…ママがそう言ってた。」
「君は大人の言う事なら何でも信じちゃうのかい?
大人は嘘つきだ!
…それにボクにはやらないといけない事がある。」
「なにを?」
「決まってるだろ…君を監視する事さ!」
「ボクを…?」
「そう。だってボクら友達だよね?」
「何のために…?」
「…今にわかるよ。」
「………。」
「だから君からもママに言ってもらえないかな?
今は探ほっといてって…」
「君は…ホントにリュウくん?」
「なんでそんな事聞くの?」
「…だってリュウくんは…そんなに喋らないもん!
もっと無口な方だよ!君は…偽物だっ!
リュウくんを利用しているっ!」
ボクは我慢できず大声で叫んだ。
するとバスに乗ってるみんながボクを見る。
「どうしたの?セイくん…?」
このバスは養護学校の送迎バスなので先生が一人いつもいる。
その先生がボクを心配そうに声を掛けて来た。
「…何でもない。」
「何でもないワケないでしょう?あんな大きな声出して…」
「恐い夢見たんです」
「…まあ。」
先生はボクの頭を優しく撫でた。
すると突然、前に居た女の子がボクを指差し、
「ウソよ!起きてたよ!わたし見てたモン!
後ろを振り向くとか振り向かないとか…」
余計な事を言い出した。
「後ろ?後ろに誰がいたの?」
先生は後ろの席を見る。
「…誰もいないわよ。見てみなさい。」
「…え!?」
さっきリュウちゃんが言ってた。
後ろを振り向いたら死ぬって!
「誰もいないって事を自分の目で見なさい」
「……いやだ。」
「どうして?ホラ見てみなさいよ。誰もいないのよ?」
「……見れない。」
「…どうして?」
先生は優しい声で聞いて来る。
でも、答えられるわけないじゃないか。
リュウちゃんが言ってたなんて…。
「…だって見たら−」
「見たら?」
「あ〜じれったい!」
前にいた女の子が突然先生を払いのけ、
ボクの体を掴み無理矢理後ろを向かせた。
グイッ
「あっ!」
ボクは無理矢理向かされたのでひねられた腰が痛かった。
そして後ろには誰も座って無かった。
「誰もいないでしょ?ばぁ〜か!」
「萌ちゃん!乱暴はいけません!」
「だってトロいモン!年上のクセに!」
「………。」
ボクは後ろを見てしまった。
するとボクを振り向かせた女の子が耳元で囁いた。
「振り向くなって言ったのに…死ぬよ?」
「え?」