表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/45

043 ナツキ


ボクは突然現れたお姉ちゃんにあるホテルの一室に連れてこられた。




「…中に入って」




「…うん… 」




ボクは言われるままゆっくりと部屋に入る。部屋の中には子供がベッドで眠っていた。




「………。」




「そこに座ってて…ジュースでも持ってくるから…」




ボクはゆっくりとソファに座り込む。



ゆっくりと部屋を見渡す。部屋の様子からして今日チェックインしたようだ。


ボクは女の人をジッと見つめた。彼女はボクの視線に気付き、



「…あ・ごめん…わたしの名前まだ言ってなかったよね?」




「ナツキお姉ちゃんでしょ?本物の…」




ボクの言葉に彼女は頷いた。



「もう一人のナツキお姉ちゃんはどうなったの?」



ナツキお姉ちゃんはボクにジュースを差し出し口を開く。



「…死んだわ…彼女はわたしの事件を担当した刑事さんの妹なの。ナオキを食い止めたいって言ったら喜んで協力してくれてね。でもこんな結果になるなんて…」




ナツキお姉ちゃんはテレビをつける。


テレビではボクの学校で起きた事件が臨時ニュースで報道されてた。


犯人は『覚せい剤常習犯のバスの運転手』。



「結局…止められなかったか……」




ナツキお姉ちゃんはタバコを取りだし火をつけた。


ボクはそれを見て言う。




「タバコは身体に悪いよ?ママも昔は吸ってたけどやめたんだ…」




「あ、ごめん。でも吸わないともっとイライラするの。」




「………う。」




ボクは大粒の涙を流していた。


それに気付いたナツキお姉ちゃんはびっくりする。



「…どうしたの?」




「…ママ……死んじゃった…ママが…ひっく……ボク…ひとりに…なっちゃった…ひっく……うわぁぁぁぁん…」




「………。」




お姉ちゃんはボクをやさしく抱きしめた。


その温もりが心地良かったが、今のボクにはママの温もりを思い出してしまうほど辛いものだった。



ボクはずっと泣いた。



涙が枯れるまで。




「ひっく…ボク…どうなっちゃうんだろう…ひっく…施設に行くハメになるのかな…?」




「………かも知れないわね…」




「しょうがないか…ママは死んだし…親戚のおじさんおばさんはボクを絶対嫌がるし…」




「だったらお姉ちゃんのトコ来る…?」




「…え?」




「わたしは構わないわよ?」




ボクは一瞬、ものすごく喜んだ。



だが、首を横に振る。




「ありがとう。でも迷惑かけられない。自分で出来る事は自分でしたいし…」




「そう?仕方ないわね」




「ーそれよりベッドに寝ているのはお姉ちゃんの子供…?」




「……ええ、そうよ」




「結婚してるの?」




「…ううん…シングルマザーよ?」




「パパは誰?」




ナツキお姉ちゃんは何も言わずニコリと笑った。




「………。」




ボクはその日ホテルに泊まり翌日、家に帰った。



ボクの家で起きた事件もテレビやマスコミに大きく取り上げられた。



犯人であるリュウちゃんのママは何故かリュウちゃんのお気に入りだった公園の噴水場で水死体で発見された。




…原因不明の溺死だったらしい。



そしてボクは結局、施設に預けられる事になった。




一体、ナツコやナオキって何だろう?




どんなに考えてもボクにはわかりそうもない。



知ってるのはボクとナツキお姉ちゃんだけ。




あの出来事すら、ボクの幻想だったのでは? と思ってしまう。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ