表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/45

042 シノビヨルヒト

ボクは窓に近づく。


この窓からは隣のリュウちゃん家のベランダが見える。



「…もう逃げられないわよ…リュウ!わたしと一緒に死ぬのよ…!」



リュウちゃんのママはジリジリと歩み寄る。


ボクは窓を開けた。



ガララ…




よく見ると窓の外側の壁に小さな地面の様なのものがある。

これを辿れば隣のリュウちゃん家のベランダに着く。


だが、一歩間違えれば確実にここ6階から落ちて死ぬだろう。




「………。」



選択の余地などないのでボクは窓をまたがり、外側に出た。




「あ・待ちなさい!」




リュウちゃんのママはボクを掴もうと手を延ばして来た。


ボクはそれをよける様に壁にくっついたまま横歩きをする。


視界はいつも見慣れてるはずの高所だが、状況が違う為すごく恐い。


「危ない!落ちるわよ!こっちに戻って来なさい!」



ひゅうぅぅ。




こんな時に限って風が強い。




「…はぁ…はぁ…」



「りゅう!危ないって言ってるでしょう!?」



ボクは焦りながらも慎重に横歩きをした。


ふと、横を見るとリュウちゃんのママも同じ様に横歩きをして追い掛けてくる。



ひゅうううぅぅぅ



「…待ちなさい!リュウ!」




「ボクはリュウちゃんじゃない!」



ひゅうぅぅぅぅぅ



隣のベランダが徐々に近づき、ボクはジャンプをした。



「えいっ」




ボクの身体は宙に浮き、何とか着地出来た。




「…はぁ…はぁ…はぁ…」




ボクはベランダの窓を開け中に入り、鍵を掛けた。


窓の向こうでリュウちゃんのママがこっちに向かっている姿が見える。




「…はぁ…はぁ」




ふと、この部屋に変な臭いがすることに気付き、周りを見渡した。



そこにはリュウちゃんが笑顔で立っていた。



「リュウちゃん?」




「ずっとボクをリュウちゃんだと思ってた?」




「…え?」




「んふふ。」



嫌いな鼻笑いが聞こえる。


すると、リュウちゃんはみるみると大きくなり、髪が一気に伸びたかと思えば見覚えのある姿になった。




ナツコである。




「最初からリュウの幽霊なんていないわよ。全部…わたしよ…んふふ。」




「お前が?」



「…そうよ…リュウは幽霊なんかなってないわ…あんなバカが幽霊になると思う…?」




「…お前は…幽霊なの…?」



「…さあ…」




ドン。




背後から大きな音がした。


次にガラスの割れる音がした。




ガシャアァアァァァァーン



リュウちゃんのママが体当たりして割ったのだ。




「リュウゥゥゥー!リュウゥゥゥゥゥー!」




「うわっ」




ボクはびっくりする暇もなく両肩を掴まれた。




ガシッ!




「…一緒に死のう…」




「いやだ!リュウちゃんはとっくに死んだ!お前達が殺したんじゃないか!」




ボクは突き放し、走り出そうとしたら足元を滑らせ地面に倒れ込んだ。


ドサッ



ベチャッ



そして生温い感触が全身に伝わる。




「何コレ」




よく見ると地面は真っ赤に染まっていた。




「ひっ…」




血をたどると奥の方にリュウちゃんのパパが倒れていた。



目は半開きにこっち見ている。



「…お…じさん?」



「この男も変な事いうの…リュウは死んだって…目の前にいるのに…死んだって言うの!邪魔するから殺したわ…」




リュウちゃんのママは無表情でボクを見下ろしていた。




「………。」




そしてゆっくりとボクの首に手を近づけ、力を入れ始めた。



…ぐぎぎぎ…



「……んっ」



ぐぎぎぎぎ



「んんんっ」



ボクは徐々に呼吸困難になって行く。




体力は既に限界なので反抗する力も無かった。



ぐぎぎぎぎ



「……ん」



視界がぼやけ意識が無くなり掛けた。



その瞬間、リュウちゃんのママの姿は消え、別の女性の顔が現れた。




「キミ!大丈夫?」




「ゥオッホ!ゴッホ!ゴホゴホ…!」




咳込むボクの身体を起こしその女性は口を開く。




「とにかく逃げるのよ…」




「…ゴホッ…!?」




その女性はボクの体を支え、歩き出した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ