037 ホウモンシャ
「セイちゃん…わたしに…手伝わせて…問題が一気に解決するわ…」
「…!? ホントに?でも本当は全部お前がやったんだろ?」
ボクはナツコにそう言った。
長い髪で顔が見えないがナツコは首を横に振った。
「違う。全部リュウちゃんの仕業よ?あなただってリュウちゃんがどんな人間かわかって来たはずよ。あなたのしらないところでみんなを困らせていた…それは幽霊になっても変わってないわ…」
「さっき…リュウちゃんの家で声を聞いた…やっぱりあれはニセモノなの?」
「リュウちゃんは確かに死んだわ。それは先生が言った様にあなた以外みんなが望んでいたから。だから私は手伝ってあげたの…リュウちゃんのパパもママも疲れ切っていた。私はほんのちょっと手を差し延べただけ。」
「でもかえって悪化してるじゃないか!幽霊になったリュウちゃんが今はみんなを苦しめてる!」
「そこからはあなた次第よ?私は『リュウちゃんが死んで欲しい』という願いを叶えてあげただけ。その続きをあなたが願えばいいのよ。」
「え?じゃあ…リュウちゃんを天国に行かせてあげて…!成仏させて…」
「………わかった。」
ナツコはあっという間に姿を消した。
「………。」
ボクはしばらくボッ〜としていた。
そして考える。
リュウちゃんが成仏したとしても今起きてる現実はさほど変わらない。
それに気付いたボクは自分でどうにかしなくては…という結論に達した。
ウジウジしたって何も始まらないのだ。
ボクは深呼吸し、教室に入った。
ガララ…。
「………。」
みんなの冷たい視線がまた突き刺さる。
でもボクは気にしないように席に向かった。
そして、めずらしく椅子の上にはウンコがなかった。
ボクは少し嬉しくなり椅子に座ると、みんながクスクスと笑う。
「…?」
ボクはよくわからなかったが、先生が来るのをまっていた。
ガララ…
先生が入って来た。
「みんな、おはようございま……誰?こんな事したのっ!」
先生は入ってくるなり怒鳴り出した。よく見ると教壇の上にウンコがあった。
「…あっ!」
ボクは思わず叫んだ。
先生がこっちを見る。
「またあなたね?セイちゃん!」
「ち・違います!」
先生はズカズカとボクの前にやって来てはビンタをした。
バシッ。
「今度という今度は許さないっ!」
「先生っ!ボクじゃないよぉ」
バシッ。
「…何で…何で嘘つくのっ!…もう…!」
バシッ!
ビシッ!
「先生を馬鹿にしてっ」
先生は涙を流しながらボクを殴っていた。
バシッ
ビシッ
ボクの唇の横が先生の爪によって切れ、血が飛び散る。
「どうしてっ!どうして私を困らせるのっ!?」
ビシッ
バシッ
先生の涙を見たボクはもうどうでもよくなって黙っていた。
どうせ誰もかばってくれないし。
なかなか叩くのを辞めないのでボクの意識はもうろうとして来た。
ガララ。
いきなり、教室のドアが開いた。
「……!」
みんなが一気にドアの方を見る。
一人の男が立っていた。
「…あっ。」
ボクは頭がクラクラになりながらも叫んだ。
だってそこに立っていたのはニセナオキだったから。
先生はボクを後ろに隠し笑顔で
「……ナオキさん…今日はどうして来なかったのですか?代わりに他の人が運転したのですよ?」
先生はゆっくりとナオキの方へ歩いて行った。
「…はぁ…はぁ…すいません…具合が悪かったもので…はぁ…はぁ…」
「大丈夫ですか?ホント顔色悪いですよ。」
「…はぁ…はぁ…」
「…ナオキさん?」
「…はぁ…はぁ」
「…へぐっ!」
突然、先生が奇声を上げた。
「…へぐぐぐぐっ!んぎゅるるぃぅぅぅ…」
その瞬間、一気に真っ赤な噴水が先生の首から見えた。
「…へ?」
ドサッ。
先生は首を押さえ倒れ込む。
「…先生!」
「…くひひひひ…あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
ニセナオキが大笑いしていた。