036 コンラン
バスがやって来た。
ぶうぅぅぅ〜ン。
キイッ。
そしてバスの扉が開く。
「………。」
ボクはニセナオキに会うのが恐かったが勇気を出してバスに乗った。ところがいつもいるはずのニセナオキの姿はなく、別の男の人が運転席にいた。
「………!?」
ボクは運転席をじっ〜と見つめながら歩いていたので誰かに足を引っ掛けられてコケてしまった。
ドサッ。
「………!」
「ぎゃーはっはっはっ」
「馬鹿だ、馬鹿!」
「ウーヒッヒッヒッ」
「………。」
ボクはゆっくりと立ち上がり埃を掃う。
「強がっちゃって!ホントは今にも泣きたいんでしょ?ママの胸でね!うふふふふ…」
萌ちゃんは相変わらず包帯だらけでボクに文句を言った。ボクは無視して席に座る。
「あたしを無視する気?アンタみたいのをヘソ曲がりって言うのよ!デベソ!」
「うるさい!ボクはデベソじゃないぞ!」
「デベソよ!お前のかあさんデーベソ!」
「うるさいっ!」
ベシッ!
ボクは頭に来て萌ちゃんの頭を叩いた。
「いたぁい!いたいよ!せんせーい!セイちゃんが…セイちゃんが萌の頭を…うえぇぇぇ〜ん」
萌ちゃんが泣きだし、先生がやって来る。
「セイちゃん!あなた男の子でしょう?女の子を泣かしちゃいけません!大丈夫?萌ちゃん…」
「だって!萌ちゃんがボクのママがデベソって…」
「デベソだっていいじゃない…何が嫌なの?もう…包帯撒いてる頭を叩いちゃ誰だって痛いわよ!ホラ謝りなさい!」
「先に言ったのは萌ちゃんだよ!」
「先に叩いたのはセイちゃんでしょ!ホラ!謝りなさい!」
「………。」
「なに黙ってるの!謝るだけでいいのよ!ほらぁ!」
「………。」
「もういいわ!…まともな人間ならここで謝るけど…萌ちゃ〜ん、痛かったねぇ〜だけど…もう泣かないで…ね?」
「 ひっく…うん…」
先生は優しい顔で萌ちゃんをみていた。
…ボクは面白く無かった。
ただ黙って窓の外を見ていた。
学校に着くと、先生に呼ばれた。
「セイちゃん!」
「…はい?」
「…あなた…みんなワザとやってるでしょ?さっきのバスの中での事、教室でウンコ漏らしたり。あなたリュウちゃんの真似してるつもりなの?」
「違う!ボクは何もしてない!どうして信じてくれないの!?」
「誰があなた達みたいな障害者を信じるってのよ…。仮にセイちゃん以外の人がやったとしても教室でウンコするようなアタマよ!そんなに先生の事が嫌い?…リュウちゃんもそうだった…いつも私を困らせる様な事ばかりを…だから…少し嬉しかった…リュウちゃんが死んでくれて。あなたもそうなってくれれば…先生…嬉しいわ…」
「………!」
先生は小声で言った後、教室へ向かった。
ボクはトイレへ向かった。
「………う。」
そして、涙が溢れた。
「…うっ…うぅぅぅっ…ひっく…ぅえっ…あぐっ…うえぇぇっ」
どんなに堪えても次から次へと涙が溢れ、声が洩れてしまう。
「…うっ…くっ…も…う…いやだ…もう…何もかも…リュウちゃんも萌ちゃんも先生もナツキお姉ちゃんもニセナオキも本物のナオキもリュウちゃんのパパとママも…ママも…なにもかも…ひっくく…えぐっ…全部いやだぁぁぁぁぁぁぁ〜っ…うえぇぇぇぇぇぇぇ〜ん…」
ボクはついに大声で泣いた。声がトイレで響く。
「…んふふ。」
鼻で笑う声が聞こえた。
ナツコの………