035 ゾウショク
「セイちゃ〜ん!何やってるのー?早くおいでよ。」
「………!」
何度聞いてもリュウちゃんの声だった。
「なんで?リュウちゃんはおじさんとおばさんがベランダからポイ捨てして死んだじゃないか…」
「…? 何を言ってるリュウは死んでなんかいない…何でおじさんがリュウを殺す必要が…?」
「…セイちゃぁぁぁん」
ドタドタドタドタ
家の奥から足音がこっちに向かってる気がしてボクは恐くなって逃げ出した。
「うわぁぁぁぁぁぁっ!」
「おいっセイちゃん!」
タッタッタッタッ。
リュウちゃんのパパはボクを呼び止めたが恐くなったボクはそのままエレベーターに乗った。
「…はあ…はあ…」
ゴオオオォォォォォォ〜ッ
「…はぁ…はぁ…」
ごぉん。
「…え?」
エレベーターが止まる。上の表示を見ると四階で点滅していた。
そしてドアが開く。
「……!」
ドアの向こうにナツキお姉ちゃんが立っていた。
「…わたしの話を聞いて!セイちゃん…」
「いやだっ!どーせお前も仲間だろ?おかしいと思ったんだ!だってニセナオキに犯されたってのに平気な顔してるし…」
「聞いて!確かにわたしは本物のナツキさんではないわ。でもナオキの仲間ではない!それだけは信じて…」
「うわあぁぁぁぁぁぁっ」
ボクはニセナツキお姉ちゃんを突き飛ばし階段で下まで一気に降りた。
「…はぁ…はぁ…わからない…死んでたはずのリュウちゃんは生きてて…ナツキお姉ちゃんは偽物で…本物のナオキは現れて…ママはそのナオキが好きで…はぁ…はぁ…はぁ…頭の悪いボクじゃ…どうしていいのかわからないよ…誰か…だれか助けて!…助けて!」
ボクはバス停へ向かった。
「あーはっはっはっはっ」
「………。」
「あーはっはっ。こりゃおかしいな。セイの奴、ホントにリュウがいると思ってやがる。ただリュウが映っているビデオの音量を上げただけなのに…走って逃げてったぜ。」
「………。」
「おい、まさかまだあいつをリュウだと思ってないだろうな?いいか?リュウは死んだんだ。俺達がベランダから落としたんだ」
「何言ってるの!リュウは死んでないわ!」
「死んだよ!俺達が殺した!あいつは毎日「死にたい」って言ってた…笑いながらな…わかってるだろ?人を困らせる神経しかなかった…リュウはそういう障害だった。お前だって毎日泣いてたじゃないか…なんでリュウが死んだことを認めない…リュウは…大人になってはいけなかったんだっ…!」
「………。」
「正直…ホッとしたよ。リュウがいなくなって…生憎、警察には俺達がやったとバレてない。」
「……ふふ。」
「……?なあ、俺達は今からまた新しい子供作って新しい生活を始めるんだ。死んだリュウもそれを望んでるはず…」
「…ふふ、あの人の言ったとおりだわ…」
「…誰だ?あの人って…」
「わからない。突然、現れたの…髪の長い女の人が…これであなたを殺せって…」
「…!…何を…?」
「私はリュウを取り返す為に戦うわ…まずは邪魔なあなたから…」
「何馬鹿な事を…誰だ…お前だれに話したんだっ!言ったのか?リュウのことを…」
「…しね…」
「おいっ…いい加減にしないかっ!」
「しねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇェェェェェェェ〜ッ!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!えぇぇ〜い!死んでくれぇぇぇ!うぅ!えいっ!くっ…ぇえいっ…やあっ!…くくっ…んん!…えいっ!えいっ!えいっ!えいっ!えいっ!…」