032 ドアノムコウ
「…これ…どういう事?まさか…自分に手紙なんて書かないよね?」
「…自分で書いたのよ?よく見て!宛名は叔母さんの名前になってるでしょ?ここはわたしの家ではなくて叔母さんの家だもの。」
「………。」
ボクは勝手に封を切り中の手紙を取り出した。
「だめっ!」
ナツキお姉ちゃんはすぐにボクから手紙を奪い取るが、遅かった。手紙はシンプルにこう書かれていた。
“もうすぐ向かいます。”
「…もうすぐ向かいます?…それ…どういう意味?」
「簡単な事よ。わたしが叔母さんの家に向かうって事よ。ここにはいない事になってるし…」
「嘘だっ!外によくいたじゃないか!隠れてる様子もないしっ…」
「…本当よ!信じて!」
ゆっくりと近づいてくるナツキお姉ちゃんが恐くなったボクは後退りをして、走り出した。
「セイくん!」
タッタッタッ…
ボクは階段から上へ上がった。そして家に入りドアを閉め鍵をかけた。
ガチャツ。
「…はぁ…はぁ…」
ボクが呼吸を整えてるとチャイムがなった。
♪ピンポーン♪
「−え!?」
ボクは息を止めた。
♪ピンポーン♪
またチャイムがなる。
「………。」
ボクはドアにゆっくりと近づきスコープを覗こうとしたらドアの向こうから声が聞こえて来た。
「…リュウちゃん…わたし…ママよ…」
「…え?」
ボクは足を止めた。
「ご飯まだでしょ?ママが作って来たの…リュウちゃんの好きなハンバーグよ…?」
ドアの向こうはリュウちゃんのママ。ボクはそこから動けずドアをじっと見つめている。
ガチャッ ガチャッ
「……!」
リュウちゃんのママはドアを開けようとしていた。
ガチャッ ガチャッ
ガチャッ ガチャッ
「…開けてリュウ!…あなたの好きなハンバーグよ…?」
「違うっ!ボクはリュウちゃんじゃない!ボクが好きなモノはハンバーグじゃなくてスパゲティーだっ!」
「嘘よ!あなたハンバーグが好きだったじゃない!ママの作ったハンバーグが…」
ガチャッ ガチャ
「だからボクはリュウちゃんじゃないって言ってるだろ!」
ガチャ ガチャ
「どうして?どうしてそんな嘘つくのっ…!リュウちゃんはそんな子じゃないでしょ?…ママ怒ったわ…!」
「……?」
ドンッ!
「わっ!」
「開けなさいっ!さもないとこのドアをブチ壊してやるわよっ!」
ドンッ
ドンッ
「……ひっ」
ガチャ ガチャ ガチャ
「開けないさいっ!開けなさいったらっ!ほらっ!早く開けなさい!ただ開けるだけでいいのよっ!ほらっ!このドアを開けなさいっ!ほらっ!早くっ!」
ドンッ ドンッ ドンッ
ガチャ ガチャ!ガチャ!
「…ひっ…!」
ドン! ドン! ドン! ガチャ ガチャ ガチャ
「ホラッ!アケナサイ!アケナサイッテイッテルデショウ!ホラッ!アケテ!アケテッテイッテルダロォウガ!アケロォォォ」
ドン! ドン!ドン!ドン
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ドン! ドン!ドン!ドン
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ドン! ドン!ドン!ドン
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ボクはただ耳を塞いでいた。