031 ダレ?
「セイちゃん…お願いだからお姉ちゃんの言うこと信じて…」
「お姉ちゃんこそ…ボクの言うこと信じてよ!ナツコはイイ奴だよ。」
「………ふぅ。」
ボクはお姉ちゃんの溜息にムカついた。
「またした!時々お姉ちゃんの溜息がムカつくんだよね!」
「…あ…ごめん…」
「ボク…帰る…!」
そう言ってボクはナツキお姉ちゃんの家を飛び出した。
「セイちゃん!」
遠くでボクを呼び止める声がしたがボクは無視した。
誰もボクが言った事を信じない…
先生も友達も…
ナツキお姉ちゃんも…
ガチャッ。
ボクは家に帰って来た。相変わらずママはいなかった。
でもボクはいてもたってもいられなかったのでママに電話した。
『どうしたの?セイちゃん…』
電話の向こうではびっくりしているママがいる。
ボクはよっぽどじゃないと電話しないからだろう。
「…ママ…今すぐ帰って来て…!」
『…今は無理よ。もう少し我慢して…』
「やだ!今すぐ帰って来て!」
『どうしたの?今、ママ手が離せない仕事してるの…わかるでしょ?』
「でも帰って来て!」
『わかった。早めに帰るようにするから…待ってて…ピッ!』
電話を一方的に切られた。
「………。」
ボクは受話器を置くと部屋に入り窓の外を見つめた。
空模様は悪く今にも雨が降りそうだった。
「あ〜やだな。また雨か…」
ふと隣のベランダを見るとリュウちゃんのママもこっちを見ていた。
「………!」
ボクに向かって手を振る。
ボクは気持ち悪いのでカーテンを閉め、ベッドに横たわった。
「………。」
精神的に疲れ果てたボクは1分もしないうちに眠りについた。そして気付いた時には夜の10時を過ぎていた。
「……ママ?」
ベッドから起き上がるなりボクは部屋を出た。
まだママは帰って来てなかった。
「早く帰るって言ったクセに…!」
ボクはソファに座り込む。
「………。」
「…まさか!」
ボクはふとナツコの言葉を思い出した。
“…あなたのママもいずれ裏切る時が来るわ…”
(…まさか…でもナツキお姉ちゃんは…やっぱりボクの言うことを信じなかったし…)
ボクは考えれば考える程恐くなり妙な孤独感に包まれた。そしてソファから立ち上がり家を出る。
ガチャッ。
エレベーターに乗り、下へ降りた。
ゴオォォォォォォォ〜ッ
「………。」
1階に着く。
ボクは外でママを待つ事にした。
家では落ち着かないからだ。
雨はそんなに降ってはいなかったが気温が低く少し肌寒かった。
「…ママ…早く帰って来て…」
ボクは独り言をポツリと言った。
「………。」
ボクは何気にある場所に目をやった。
それはこのマンションのポスト。
部屋の数だけのポストが並んでる。
自分の家のポストを開けてみると中には何もなかった。
次に隣のリュウちゃん家のも見てみるとこっちも何もない。
今度はナツキお姉ちゃん家のポストを覗いて見た。
中には一通の封筒。
ボクは手に取り、裏も見た。
「………え?」
ボクは自分の目を疑った。いくらボクが頭悪いからって少しの字くらいは読めるさ。
これは読み間違いではない。
絶対そう書いてあるんだ…。
“ナツキより”
(…いくら何でも自分に手紙書かないよね?)
ボクが封筒を見つめていると背後から物音がした。
「セイ…くん?」
ナツキお姉ちゃんが変な顔をしてボクを見つめていた。