表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/45

029 アダナテイチャク



「セイくん!セイくんってば!」



「…え?」



先生の声でボクは目を覚ました。



「あなた朝から寝過ぎよ?とっくに学校に着いたわよ!早く降りなさい」


「…あ…ごめんなさい…」


ボクは起き上がるとすぐにバスを降りようとした。



「…くくく…」



運転席から笑い声がする。


偽ナオキがずっと笑っていたが、ボクは無視して急いで教室へ向かった。





教室が目の前に見えるとボクはドアの方を見た。そこに『ワナ』が仕掛けられてないかどうか確認したが、何もない。



ガララ…。



教室のみんなが一斉にボクを見る。


ボクはゆっくり席に向かった。そして昨日と同じく近づくにつれ臭って来た。



「………!」



案の定、椅子にはウンコがあった。


「………。」



ボクはただじっとそれを見つめていた。



ガララ…



先生が入って来た。



「ん?臭いわね!」



「先生ー!セイちゃんがまたおもらしを…」


萌ちゃんが言う。


「また!?昨日、あれほど言ったのに…!」


「違います!ボクじゃない!」


ボクは必死に訴えた。


だが、先生は表情を変えず、


「昨日も言ったでしょう?みんなが何と言おうとそれはセイちゃんがやったって…。」


「そうよ!そんな臭いモノ!さっさと捨てちゃって!」


「そうだよ!ウンコ!ただでさえウンコなのに…ぐひひひひひひ!」


「そうだ!ウンコだ!にゃはははははは…」


「いひひひひひ…」


「えへえへ…」


「あーはっはっはっ…」


「うんこ!うんこ!」


「うんこっ!!」


「ぎゃははっうんこ!」


クラスのみんなが口を開けて笑い出した。


みんな楽しそうに肩を震わせている。



「………。」



ボクは我慢出来ず、教室を飛び出しトイレへ向かった。



ガララッ


ダッダッダッダッ



「…うぅ。」



どんなに我慢しても涙が止まらなかった。



ダッダッダッダッ



「…んふふ。」



トイレに着くとボクは鏡を見た。



「んふふっ」



背後にナツコさんが立っていた。



「大丈夫よ?私が守ってあげるわ…」



「…お前だって信用できないっ!」


「誰だったら出来るの?…ママ?…ナツキお姉ちゃん?」



「………。」



「それはどうかしら?ママ…最近、家にいないでしょ?」



「……え?」



「仕事が忙しいって…ホンキで信じてるの…?」



「………?」



「まだわからないの?あなたから離れる唯一の楽しい時間だからよ?」



「…どういう事?」



「だから、あなたなんて二の次三の次って事!何が何でも仕事が大事ってコトよ!あなたはママの仕事の邪魔って事!」



「違うっ!絶対ありえない!」



「何故そう言い切れるの?じゃあ…ナツキお姉ちゃんも信じられるの?」



「うん!信じてるよ!」



「…んふふ…つい最近知り合った人をどんなして信じれるというの…?子供って単純で幸せだわね…きっと…この2人もあなたを裏切る時が来るわ…そんな時…私を呼びなさい…私があなたを助けてあげる…守ってあげるわ…」


「うるさいっ!お前なんかの助けてなんかいらないやいっ!ばか!あほ!」



「…んふふ。」



女は笑うと消えて行った。



「…はあ…はあ…」



ボクはしばらくトイレにいた。


でも誰も探しに来てくれない。


先生ですら。


だから仕方なく教室に戻った。


もちろん、そこにはウンコがそのままあってボクは泣きながら片付けた。




ブウゥゥゥ〜ン。




帰りのバスの中でボクはまた泣いていた。


涙が何故か止まらない。


ただ苦しくて仕方ないのだ。



バスが急停車する。



気付けばボク以外誰も乗ってないのだ。



「………?」



前にいる偽ナオキの笑い声が聞こえて来た。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ