表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/45

028 トナリノコエ

学校が終わるとボクは家に帰らずにナツキお姉ちゃんの家へ向かった。



ガチャッ。



「どうしたの?セイちゃん?」



ボクの突然の訪問にナツキお姉ちゃんはびっくりしていた。

ボクはお姉ちゃんの顔を見ると涙が次から次へと溢れて来た。

悔しいやら哀しいやらで色んな感情が一気に押し寄せ我慢出来なかった。



「お姉ちゃん!」



ボクはお姉ちゃんに抱き着いた。


「………。」



「うわあぁぁぁーん」



姉ちゃんは何も言わず、「よし、よし」と頭を撫でてくれた。


だから

ボクは思い切り泣いた。








「ぶぁひやひやひやひやひやひやひやひや…ひぃ。見た?今の人の顔!びぁひやひやひやひや…」


「セイちゃん、さっきまで泣いていたと思ったら今度は大笑い?」



「だって…アホじゃない?このテレビに出てる人」



「ただの歌番組なのに何故おかしいのかしら?」


ナツキお姉ちゃんはボクに呆れていた。


「そういえばナツキお姉ちゃん…今日、あの運転手が変な事言ってたよ」


「え?」



「お姉ちゃんを…“犯した”って…」


「……そう。」


お姉ちゃんは返事をするとコーヒーを飲んだ。



「カラダは大丈夫なの?」



「大丈夫よ。それくらいの覚悟は出来てたし…」



「ふぅん。あ・それと…ナツコっていう女に話し掛けられた…。」



「…え?なんて!?」


ナツキお姉ちゃんはボクに顔を近づけて聞いて来た。



「…ボクを…守るって…」



「守る?誰から?」



「ボクをいじめてる人達から…」



「いい!?セイちゃん!彼女を信じちゃダメよ!彼女は人の心の隙間に入り込むんだから!そこを利用してみんなを苦しめるのよっ!」



「……わかってる…お姉ちゃん…痛いよ…」


ボクの言葉に我に返り、


「あ!ごめん…強く掴み過ぎちゃったね」



お姉ちゃんは掴んだ肩からゆっくりと手を離した。


そしてまたコーヒーを飲む。


しばらくしてボクは家に帰った。

家にはママがご飯を作っていた。



「セイちゃんおかえり!悪いんだけどさ、ママ仕事が入っちゃって今から行かないといけなくなったの!」



「…え? …うん。」



ボクは学校での事を言おうとしたが、急いで準備しているママを見て言え無かった。



翌日。



ボクは行きたくない学校へ行こうと家のドアを開けた。


「行ってきまぁ〜す!」


奥からは返事がない。

ママはゆうべ遅く帰って来たらしくまだ寝ていた。

朝ご飯はちゃんとテーブルに用意してあったのでそれを食べたのだ。ボクはもう一度言った。



「行ってきまぁ〜す!」



「………。」



やはり返事がなかった。ボクはゆっくりドアを閉め鍵をかけた。



ガチャン。



すると背後から−



「行ってらっしゃい」



と声がしたので振り返ると、そこにはリュウちゃんのママがドアの隙間から手を振って笑っていた。


「………!」



ボクは気持ち悪いので急ぎ足で下に降り、バスを待っていた。


バスがやって来てドアが開く。


もちろん、運転席には偽ナオキが笑って迎える。


「…楽しい一日の始まりだよぉ♪」


ボクは無視して席に着く。


すると萌ちゃんが、


「おはよ。ウンコ!今日も相変わらず臭いわね!」


…と言って笑い出した。


「ぎゃは〜っはっはっ」


「うんこだってよー」


萌ちゃんだけじゃない…バスに乗ってるみんなも笑い出す。



「………。」



「きゃははははは」


「あひゃひゃひゃひゃ」


「ぶははははははは」



………。



…はあ…疲れた。



…何やってるんだろう。



なんでボクはこんな事してまで生きなきゃならないんだろう…



みんなの笑い声が小さくなっていく。



どうやらボクは眠たいみたいだ。




そうだ!このまま永遠に目が覚めなければいい…




…ずっと覚めなければ…




ずっと。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ