025 ワライゴエ
「ナツキお姉ちゃん?」
「まだ時間あるよね?中に入って…」
そう言うとナツキお姉ちゃんは奥へと歩きだした。ボクは中に入るとドアを閉めた。
バタン。
「…あの…叔母さんは?」
「昨日から泊まり込みで仕事に行ってる。ジュース飲む?そこに座って…」
「…うん…」
ボクは目の前にあったソファに座った。
「………。」
「昨日の運転手、たしかにナオキだった!」
「え!?」
お姉ちゃんはボクにジュースを差し出す。
「ありがと。」
「…あの後バスはそのまま動き出した」
「…うん。」
ボクは一口ジュースを飲む。
「どれくらい走ったかな?気付けば林の中だった。そこでバスは停まったの。」
「………。」
「すると突然、ナオキが笑い出したの。わたしは普通に「何がおかしいの?」って聞いたら「全部さ…」って。わたしは言ったわ「まだ馬鹿な事続ける気?」って。「馬鹿な事?何が?人を支配する事が?くはははは」…彼はずっと笑ってた。」
「………。」
「あ〜あ、わかってたのにね。」
「え?わかってたって?何が?」
「彼はね、ナオキじゃないわ。」
「え?でもパソコンに出てた顔だったよ!」
「うん、そう。パソコンそのモノが違う顔なの…」
「じゃあ名前が一緒で別人だったって事?」
「まあ…カモフラージュって事かな?」
「えぇぇぇ〜」
ボクは本物だと思ってたので白けてしまった。
「そろそろ時間じゃない?」
そう言われたボクは時計を見た。
「わっ!ホントだ!早いなぁ」
ボクは一気にジュースを飲んで立ち上がる。
「ごめんなさい!帰って来てからまたお話しよーね!」
ボクは急いで玄関に向かった。
「セイちゃん!」
お姉ちゃんがボクを呼び止める。
「んー?」
「…何でもない…行ってらっしゃい…」
お姉ちゃんは笑顔でそう言った。
「うん!行ってきまーす」
ボクは家を出た。バス停には既にバスが停まっていたので急いで乗る。
そして、運転席にはナオキがいた。
「セイくん…おはよー…ははは…」
ニヤけながらナオキは笑った。そして小声で
「お前の大好きなねーちゃんを犯してやったぜ。くははは…」
「…え?」
「セイちゃん!早く席に着きなさい!」
先生が怒鳴るのでボクは急いで座る。と同時にバスは動き出した。
ブゥゥゥゥ〜
「………。」
どういう事?『犯してやった』っていう意味がよくわからない。
「………?」
「…エッチな事を無理矢理やらされたって事だよ…」
背後から声が聞こえて来た。
「…リュウちゃん?」
「しっ!あまり声を出すな。後ろも振り向くな。」
「…ねぇ…もうやめようよ?こんな事して何になるの?」
「セイちゃんが苦しめばそれだけでいい。」
「どうして?意味がわらないよ。」
「僕にはセイちゃんしかトモダチはいない。」
「トモダチ?それがトモダチにする事か?」
「…トモダチだからこそ意味がある。イジメがいがね…クヒヒヒヒ。」
「………。」
「クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」
ボクは耐え切れず耳を塞いだ。
「クヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…」
学校に着くまでその笑い声は止まなかった。
そしてボクも後ろを振り向く事はなかった。
その笑い声はボク以外に聞こえていないみたいだった。