024 ヘン
「…ママごめんなさい。でもボク何もしてないよ!信じて!」」
ボクは今日一日だけ謹慎処分を受けた。ボクの発言があまりにも現実離れしていて信じて貰えなかった結果。
学校から出たママはあまりしゃべろうとしないのでボクから言い出した。
「わかってる。でもリュウちゃんの名前を出したのはマズかったんじゃない?死んだ人間が何かをやったとしてもそれは見た人しか信じられない話よ?」
「…うん。」
ボクはうつむいたまま歩いた。ママは一つ溜息を漏らすと笑顔になり
「もうやめよ?リュウちゃんの話は!そうだ!ママ今日はもう仕事ないから今から映画でも観に行く?」
「ホント!?行く!行く!」
ボクは体全部を使って嬉しさを表現した。それはそれはまるでミュージカルのように。だってママと出掛けるなんて久しぶりだもん。ママも嬉しそうなボクを見て微笑む。
そして、その夜。
映画を観たあと、ボクとママは買物や食事をした。
「ママ楽しかったね!」
「そうね…最近、セイちゃんの相手してあげられなかったからママも満足!」
ママがニコリと笑うのでボクもつられて笑う。
「……あれ!?」
奥の方にナツキお姉ちゃんの後ろ姿が見えた。
「ナツキお姉ちゃん!」
ボクは大声で名前を呼んだ。
「………。」
だが、その後ろ姿はこっちを振り向く事なくそのまま消えて行った。
「え?今のはナツキちゃんなの!?」
ママが言う。
「だと思ったんだけど、違うかな?」
「振り向かなかったって事は違うんじゃない?」
「…そうだね。」
こうしてボクとママは家に帰った。
翌日。
「行ってきまぁ〜す。」
「ちょっ…!セイちゃんいつもより30分早いわよ。今、バス停に行ってもまだバスは…」
ママが慌てて歩いて来た。
「うん、ちょっと下のナツキお姉ちゃんと話したくて…」
「こんな朝から迷惑よ!だいたいまだ寝てるかもしれないのに…」
「起きてるよ!毎日6時には起きてるみたいな事言ってたからさ。そのために早く起きて御飯も食べたんじゃないか…」
「ママはたまたま早く起きたと思ったのよ。あっちに迷惑じゃなければいいけどね…」
「大丈夫だよ!じゃっ、行ってくる。」
「いなかったらすぐに戻るのよ?」
「うん!」
ガチャッ。
バタン。
ボクはママがまだ何か言いた気なんで逃げるようにドアを開け、閉めた。
「…ふぅ。」
ボクは早速エレベータに向かおうと歩きだしたら、背後から音が聞こえた。
ガチャッ。
「…ん?」
振り向くとリュウちゃんの家のドアが少しだけ開いていた。
「………!」
そして、隙間からリュウちゃんのママの顔が見えた。
「………?」
ドアは更に開き、リュウちゃんのママが車椅子ごと出て来てボクに両手を広げた。
「わたしはここよ、リュウ。さあおいで…!」
「え?」
ボクがあっけに取られていると中からリュウちゃんのパパが出て来た。
「こら!よさないか!」
リュウちゃんのパパは車椅子を家に引っ込めようとする。
「あなた何するの!?わたしはただリュウに…」
「リュウは死んだんだ!まだわからないのかっ!?」
「何言ってるの?だって目の前に…あ!待って!行かないで!」
ボクは気持ち悪くなったので走り出した。階段から下のナツキお姉ちゃんのいる家へ向かった。
なんか…気持ちわるい。
♪ピンポーン♪
ガチャッ。
ドアの向こうからナツキお姉ちゃんが出て来た。
「朝からごめんなさい。昨日の事が気になって…」
「………。」
ナツキお姉ちゃんは黙ったままボクを見つめていた。