表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/45

020 アカシ

「生きてる?どういう事?」


ボクはもう一度萌ちゃんに問い掛けた。だってリュウちゃんは死んだもん。ちゃんとこの目で…


「生きているの!」


「じゃあ…君にも見えるの?リュウちゃんの幽霊が?」



ボクは恐る恐る聞く。


「幽霊?幽霊って死んだ人がなるんでしょ?リュウは死んでないってば!さっきから言ってるじゃない!頭悪いね!年上のクセに!」


何故かキレる萌ちゃん。ますますボクは意味がわからず、言ってはいけない事を口走る。


「嘘だよ!だって見たんだモン!隣のベランダから落ちるの!」


萌ちゃんはしばらく黙ってたが、また口を開いた。


「セイちゃん…。気付いてた?クラスのみんなからいじめられてたの…。あんたいじめられてのよ???」



「え?」



「黒板消しが落ちてきたり、モノが失くなったりしてたでしょ?クラスのみんなからシカトされたり…自分で気付いてたでしょ?」



「え?そうなの?」



ボクは驚いた。みんなからいじめられてたなんて。初耳だ。…そうか、だから視線が冷たく感じたんだ。黒板消しもたまたま落ちて来たワケじゃなく…全部意図的なんだ?



「全部ね…リュウの命令なの。」



「え!?リュウちゃんの?」


ボクは更におどろく。



「そう。リュウは自分の手を汚さず、アンタをいじめてたの。その『イジメ』はまだ続いてる…。だからリュウは生きてるの。」


「じゃっ…じゃあ!やめたらいいじゃないか!リュウちゃんはもういないんだから!」


「アンタが悪いのよ!クラスで年上のクセに知能レベルが低いアンタがっ!見ててイライラするものっ!みんなそう思ってる!だからなくならないのっ!全部アンタが悪い!アンタの存在が『イジメ』を作ってるの!」


萌ちゃんは叫んでいた。口からはよだれが垂れ、瞬きすたらまともにできない。筋肉をうまくコントロールできない。

そうだよ。ボクらは障害者。ここにいる人間、まともじゃない。萌ちゃんだってりっぱな障害者。



でも、ボクは我慢出来ず、言ってやった。



「 クズ! 」



それがせいいっぱいだった。だけど、萌ちゃんには効いた。



「…うぅぅ〜」



突然、涙を流してはボクに向かって走って来た。



「ぅああああああっ!」



萌ちゃんはスムーズに動かす事の出来ない身体を走らせ、ボクを叩こうした。


だが、ボクは『ひょい』と萌ちゃんの攻撃をよけた。



「あっ!」



そう思った時には遅かった。リュウちゃんのママ同様、萌ちゃんも落ちたのだ。



「ぅあああっ!」





ゴロッ ゴロッ ゴロッ ゴロッ ゴロッ




「……あ。」




ドサッ。




「………。」



「………。」



しばらくの沈黙。

ボクはゆっくりと唾を飲み込む。




萌ちゃんは動かなかったが、意識はあるらしく声を出す。



「…ぅぅぅぅ。」



「萌ちゃん?」



萌ちゃんはゆっくりと身体を起こそうとした。だが、落ちたショックのせいかうまく起き上がれない。



「ぅあああああああ…」



身体をバタバタさせてうめき声をあげる。



「ぅぁアあウぁあっ」




「………。」



ボクはゆっくりと後退りをする。そして走り出した。



タッタッタッ…



「…はあ…はあ…」



ボクのせいじゃない。



あれはみんなリュウちゃんのせいだっ!



ボクは悪くないっ!!



リュウちゃんのせいっ!


「はあ…はあ…」



だが、ボクの走りはいつしかスキップに変わって行った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ