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001 リュウ セイ

ザアァァァァァァァァ




「セイちゃん!遅れちゃってごめんね…!」



「ママ遅いよ!雨も降って来るし…」



「ごめーん。道混んじゃってて…」



今日はめずらしくママが学校まで迎えに来てくれた。

普段は送迎バスで帰ってるボクには

少しでもママといれる時間が増えるのは素直に嬉しかった。




ザアアアァァァァァァ



「ねぇ…ママ…」



「…ん?なあに?」



「あそこ…」


ボクは大きな木があるトコを指差しながら言った。




「…? あそこがどうかした…?」



「…見えない?」



「見えないってなにが…?」


ママは首を傾げながらボクを見つめた。



ザアアァァァァァーッ



「………。」



やっぱり…見えないんだ。




「ううん。なんでもない。」


「…そ。ホラ早く車に乗って…」



「…うん。」


ボクは車に身を乗り出した。



バタン。



「………。」




ザアァァァァァァーッ




車が動き出した瞬間、

ボクはまたあの木を見た。


じっとこっち見てる。

あれは間違いなくリュウちゃんだ。




なんであそこで雨に濡れて立ってるんだろう。



…それよりも…

なんでそこにいるんだろう。



リュウちゃん、


一週間前に死んだはずなのに…。










ザアアアァァァァーッ



「それにしても今日はよく雨降るわね…」



「…うん。確か…こんな大雨だったね…」



「……なにが?」



「リュウちゃん…死んだの…」



「………。」


ママはボクの言葉に口を閉じた。



「…どうして、ベランダから落ちたの?」



「…セイちゃんも知ってるでしょ?

リュウくんは脳に障害があったから…」



ブウゥゥゥゥゥゥーン



「だから死んだの?」



「…そうよ。

きっとリュウくんはベランダから落ちても

死ぬとは思わなかったんでしょうね…」



「………。」


『死ぬとは思わなかった』?

『死ぬ』とはナンだろう?

ボクはママを見つめた。




ザアアァァァァァーッ



「死ぬってどういう事…?」



「天国に行っちゃうって事よ。

肉体が滅びるというか…

あ〜子供に言ってもわかんないか…。」



…わかるモン。


わかるけど…





ザアアアァァァァーッ




「天国に行けない人っている?」



「地獄に行く人?」



「…ううん。地獄にも行けない人…」



「なに、それ?」



「…だがら…ずっとここにいる人。」



「幽霊って事?…さあ…ママ見えないからねぇ…」




ブウゥゥゥゥゥゥーン






「ねぇ…ママ…リュウちゃんって…」


「セイちゃん!もうリュウくんの話はやめて。

それにリュウくんのお父さん、お母さんの前では

リュウくんの話はあまり話しないで…」



「…どうして?」



「だって思い出したらまた悲しくなるでしょ…?」



「…悲しい?」



「そ。寂しくて悲しくなるのよ…」




「寂しくて?」





ザアァァァァァァーッ





…さっき雨に濡れていたリュウちゃんも寂しそうだったな…







…でも違う…




ママもカン違いしてる。


リュウちゃんは確かに死んじゃった。



でも…そこにいる。



そこにいるんだ。


寂しいだけじゃなく、


…悲しくて…


…哀しくて…








ザアアアァァァァァァ




「セイ…ちゃん?どうしたの?静かだね…」



黙るボクに不安を感じたのか、ボクを見つめていた。


「…ママ…前…」



「え?」


ママが前を向くと、

雨が降りしきる道路の奥に小さな子供が立っていた。



「きゃっ。」


驚いたママが思いっきりブレーキを踏むと、

車は叫び声のような音を立てて停まろうとする。




キイイィィィィィーッ!!




…あれはリュウちゃんだ!



「キャアアァァ−ッ」




笑ってる。




リュウちゃんが笑ってる。





楽しそうに笑うリュウちゃんはただ不気味だった。




「…ケケケ…」



お久しぶりです!

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