018 イイカケ
ボクはジッと運転手さんの顔を見つめた。
「………。」
「どうした?俺の顔に何かついてるか?」
「ううんっ」
ボクは返事をするとバスから降りた。
「リュウが淋しがってるぜ。お前がいないからな…!」
「え!?」
振り返ると運転手さんは笑っていた。
「お前がリュウを殺した。」
「…ちっ、違う!殺したのはリュウちゃんのパパとママだっ!」
「でもお前は見ただろう?リュウの助けを求める目を…」
「…でもっ!ボクにはどうする事もっ…」
「そうかな?窓を開けて叫ぶ事が出来たはずだ。ママに助けを呼ぶ事だって…」
「間に合わなかったんだっ」
「ホントは違うだろ?」
「え!?」
「死んで欲しかったんだろ…?」
「……っ!?」
「お前にとってリュウは邪魔だった。うっとおしかった。」
「………っ」
「セイくん!何してるのっ!早く教室に行きなさいっ!」
奥から先生の怒鳴り声が聞こえる。
それでも構わずにボクは運転手さんを見つめていた。
「だから君を選んだ。」
「……え?」
ガダン。
バスのドアは閉まり、そのまま発車して見えなくなった。
「………。」
「セイちゃん!何ボッーとしてるの!早く教室へ!」
先生はズカズカと歩いて来てボクの手を引っ張った。
「全く!あなたはいつから問題児になったの!?まるでリュウちゃんみたい!」
「……え?」
「いつもそうやって周りの人を困らせてばかりで!
あなたもそんな風になって欲しくないわ!」
先生はすごく怒っていた。
それよりもボクは今、初めてここでリュウちゃんが問題児だと気付いた。
「え?いつどこでリュウちゃんが問題を起こしたの?」
そう言いかけたが、あえて聞かなかった。
教室に入るとみんながボクを見ていた。
相変わらずみんなのボクに対する視線はすごく冷たく恐かった。
「………。」
ガララッ。
ボクは静かに席につく。
「何ダラダラしてんのよ!年上のクセにトロいわね!」
萌ちゃんがボクを見るなり怒鳴る。
ボクは萌ちゃんをジッと見つめた。
「な・何よ!睨んだって恐くないわよ!アンタなんか…」
「…ねぇ…リュウちゃんの事なんだけど。」
「は?リュウがどうかした?」
「…問題児って本当?」
その質問に萌ちゃんは反応する。
「……誰が言ったの?」
「………。」
「あ・先生しかいないか…そんな事言うの。」
「ホントなの?」
「そうかもね。」
「え?なんで?だって別に学校では普通だったじゃない?
いつも一緒だったからわかるモン。
リュウちゃんはボクがいないと何にも出来ないし…」
「クスッ。ホント何もわかってないね。
セイちゃんは…。あのねー、
リュウくんはね−…」
「コラッ!今は授業中よ!静かにしてっ!」
萌ちゃんが何かを言いかけたが、
先生が注意してきたので話しはそこで終わってしまった。
「………。」
ボクは萌ちゃんの言いかけた言葉が気になり苛立ちを隠せなかった。