017 リュウチャンノパパ
エレベーターはゆっくりと下りている。
ボクはあまりの恐さにじっと点滅している数字をみていた。
ゴォォ…
「………。」
「……セイくん…」
突然、ボクを呼ぶのでボクは声が裏返る。
「は・はい?」
ゴォォ…
「見たんだろ?」
「………!」
ゴォォォ…
「何を…?」
ボクはワザと知らないフリをした。
「誰にも言ってないだろ…?」
ゴォォ…
「何言ってるの?おじさん…」
リュウちゃんのパパはボクが知らないフリをしたのが気にいらないのか、急に顔を耳元に近づけて言った。
「君もリュウのようにポイ捨てされたいのか?」
「………!?」
ボクはあまりの恐怖にただ唾を飲むしかなかった。
ゴオォォォォーッ
ガタン。
一階に着くとドアが開いた。
ボクはリュウちゃんのパパと目を合わす事なく、エレベーターから降り、逃げる様に走った。
ダッダッ。
「はあ…はあ…」
タッタッタッタッタッ
後ろを見たが追ってくる気配はない。だけど、止まる事は出来ずそのままバス停まで走った。
「はあ…はあ…はあ…」
タッタッタッタッタッ
バス停に着いた。
到着予定時間でないせいかまだバスは到着していない。
「…はぁ…はぁ…」
ボクは必死に呼吸を整えようと、深呼吸をする。
「…すぅ〜はあ…すぅ〜はあ…」
バスが見えないか奥に目をやる。
すると、見えたのはバスではなくリュウちゃんのパパだった。
「……え?」
普段ならリュウちゃんのパパは反対方向でこっち側を歩くなんて有り得ない。そして何故かまっすぐにボクを見つめていた。
ザッ。ザッ。ザッ。
ゆっくりとボクに近づいて来る。
「………なんで?」
ザッ。ザッ。ザッ。
「……う…ああ…」
すごく恐くなったボクは恐怖で動けない。
ザッ。ザッ。ザッ。ザッ。
「…う…ああ…あ。」
リュウちゃんのパパは無表情でどんどん近づいて来て、その顔が無表情だって事もわかって来た。
ちょうどその時、バスの姿が見えた。
「…はっ!来たっ」
バスはリュウちゃんのパパを通り越し、ボクの前に停車する。
ガチャッ。
そして扉が開いた。
ダダダダダ…。
ボクは階段を駆け登り、バスに勢いよく乗る。
「もっと落ち着いて乗りなさいっ!」
先生の注意を無視してボクはいつもの席に座ると、窓から外の様子を見た。
「………あれ?」
リュウちゃんのパパの姿はどこにも見えない。そのまま会社に行ったのか、ボクの見間違いなのか…。
「ワザとらしい!そんなに目立ちたいの?」
「……え?」
萌ちゃんがボクに向かって言った。
「ちっ…違うよ!目立つつもりでしたんじゃない!」
「嘘よ!見え見えなのよ!年上のクセにガキね!」
「……っ!」
ボクはムカついたが、何も言い返さなかった。しかし何で萌ちゃんはボクにいちいち突っ掛かるのだろう…。
そう思ってるうちにバスは学校へと到着した。
ボクはゆっくりと立ち上がり、いつもの様に最後に下りようとしたら運転手さんがボクに話し掛けた。
「…よぉ、ボク。人生楽しんでるかい?」
「………?」
ボクは運転手を見つめた。
「……あ。」
「お兄ちゃんとゲームしようか?」
「………!」
そうか…!
どうりで見覚えあるはずだっ…!
昨日、ママのパソコンに出てた男…
ナツキお姉ちゃんが言ってた…
この運転手こそが…
…オオトモ ナオキ…