015 アノヒミタモノ
リュウちゃんはただ突っ立っていた。
そしてボクを哀しそうな目でみている。
「いつもあーしてボクを見ている。」
「あなたを?セイくん……。」
ボクはゆっくりと首を縦に振った。
「………。」
「お姉ちゃんのウシロにいる女の人もそうなんでしょ?
お姉ちゃんが不幸になるのをただ見つめている…そうでしょ?」
「………そうね。わたしにも分からない。何故、彼女は何もしないのか…。」
お姉ちゃんは決してウシロにいる女の人を見ようとはしない。
いる事に慣れて見ようとしないのか、それとも本当は見えてないのか…。
「じゃあボクやお姉ちゃんが死んだら喜ぶのかな?」
「それはないわ。自殺でもしようとしたら逆に止められるわよ。」
そう言うとお姉ちゃんは歩き出した。
「もうその話は終わってゲームでもしよっか。」
振り返ったその顔は笑顔だったのでボクも笑顔を作り、
「…うん!」
−と、返事をした。
そして、ボクとお姉ちゃんはゲームに夢中になり、
あっという間に夜になった。
「もう8時なのにママ遅いね。」
携帯の時計を見たお姉ちゃんはびっくりしながら言った。
「いつもそうだよ!仕事忙しいからね…」
「…わかるなぁ。キミの気持ち。
でも…やっぱり寂しいモンね。ちょっと休憩!トイレ借りるわねー」
お姉ちゃんはそう言うと立ち上がった。
「廊下の横にあるよ」
「…うん。あれ?あなたのママのパソコンつけっぱなしよ…」
「ママそそっかしいからね!いつものことだよ」
ボクは苦笑しながらお姉ちゃんを見た。
お姉ちゃんは何故かパソコンの画面を見ながら固まっていた。
「…お姉ちゃん?」
「あ・向こうにある?わかった。」
そう言ってトイレに向かった。ボクは気になりパソコンを見る。
そこには一人の男の人の顔とプロフィールらしきものが書かれていた。
「…大友…ナオ…キ?」
ボクはその男の顔をじっくり見る。
「…どこかで…」
だが、なかなか思い出すことが出来ない。
「……ふぅ。」
お姉ちゃんがトイレから戻って来た。
そしてすぐにボクに質問してきた。
「どこかで見覚えあるでしょ?」
「−え!?」
「君は絶対、この男と会った事あるはずよ。思い出して…」
「…わからない。そんな気するけど…思い出せないよ。」
「……そう。」
お姉ちゃんはゆっくりと腰を下ろした。
「お姉ちゃんは知ってるの?この人…」
「………。」
お姉ちゃんはボクの質問に顔を強張らせる。
「ねえ、セイくん…リュウちゃんが死んだのがこの男のせいだって言ったらキミは信じる?」
「…え?だってリュウちゃんはベランタから落ちて……。」
「なんでリュウちゃんはベランダから落ちたの?」
「……え?」
「…セイくん!君は本当は知ってるんでしょ?」
「…え?なにを?」
「リュウくんが死んだのは…事故なんかじゃないって……」
「え?わからない!」
「正直に言って!」
「知らないっ!知らないったら!」
ボクは立ち上がり部屋へと走り出した。
「…セイくん!」
そして勢いよくドアを閉めた。
バタン。
「………。」
ドン ドン ドン
「セイくんっ!開けて!お姉ちゃんが悪かった…ごめんっ」
「…………。」
「セイくんっ!ホントにごめんっ!」
「……あの日……」
「−え!?」
「あの日…ボクはシッコしたくて夜中に目を覚ましたんだ…。」
「………。」
「外に人の気配感じたから何気に窓からリュウちゃん家のベランダを覗いたんだ…
そしたら…口を塞がれたリュウちゃんが見えて…」
「…え?」
「そしたら!リュウちゃんのパパとママは…そのままリュウちゃんを…
リュウちゃんを『ポイッ』て…!」
「………!」