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000 プロローグ

ザアァァァァァァァァーッ



キキッ



激しく雨の降る中、

一台のタクシーがボクの住むマンションに停まった。



「…お客さん…」



「………。」



ザアァァァァァァァァァァ



「お客さん!着きましたよ!起きて下さい!」



「……ん……」


運転手さんが困った顔をして酔ったお客さんに声を掛けた。


「着きましたって!1640円になります!」



「…ん…あ…もう着いたのか。

…ったく…まだ雨止まないのか…いくらだっけ?」


「1640円になります。」



お客さんは半分寝ぼけた顔でお札を運転手さんに差し出した。



「……2000円からの預かりで360円のおつりですね…

凄い雨ですから足元滑らない様にね…」


「…ははは…わかってる…少し酒入ってるけど、

まだまだそこら辺の若い者には負けないぜ!」


ザアアアアアァァァァァァ


ドアが開く。



「あんがと。またいつか…」


お客さんは鞄を自分の頭の上に乗せ、傘代わりにして走り出した。


「…ありがとうございました…」


バタン



タクシーのドアが閉まる。


運転手さんはいざ出発しようと前を見た。


「……ん?」



雨が降りしきる中、奥に人影らしきモノが見えた。



ザアアァァァァァァァァァ



「……あれって……子供だよ…な?」



運転手さんは目を凝らしながらよく見たが、

やはり子供が奥に立っている様に見える。



「…なんでこんな雨の中……」



ザアアアアァァァァァァァ


「………。」



ドン!ドンドン!


いきなり助手席の窓を叩く音がしてびっくりする運転手さん。


窓を見るとさっきのお客さんが窓を叩いていた。


「…うおっ…ったくなんだよ…」



ザアァァァァァァァァァァ


ドン!ドン!ドン!


先ほど降りる時と打って変わって険しい表情をしながら

しつこく窓を叩いている。



「そんなに叩かなくたって…今開けますよ…」



運転手さんはボタンを押し窓を開けた。


「…どうしたんですか?」



ザアァァァァァァァァァァ



「…はあっ…はあっ…」


客の男は息を整えると先ほど来た場所を指しながら口を開いた。


「……あそこに……子供が……」


「…子供?」



「…はあっ……ああ…入口の横に子供が倒れて…

…はあっ…はあっ…多分…死んでる……」


「……え!?」



運転手さんは『子供』と聞いて、

さっき前方にいた子供の事を思いだし、前を見た。



「………。」



ザアアアアアアァァァァッ


だが、そこには誰もいない。


「……いない…」



「…はあっ…ちょっと運転手さん聞いてる?

…早く…警察を呼ばないと…はあっ…それと救急車も…はあっ…はあっ」


お客さんは雨に濡れながらも冷静を装おうとしていたが

見るからに動揺を隠せてない。


それを見た運転手さんは我に返り、



「……あ…ああ。」



携帯をすぐに取り出し電話をした。



「…もしもしっ」



ザアアァァァァァァァァッ



それは凄く雨の降った夜の出来事だった。





「セイちゃん!!」


「セイちゃんってば!」



「起きて!セイちゃん!」


「……んん」



その翌日、ボクはママに起こされたんだ。



「…んん…なにママ?……まだ起きる時間じゃないよ……んん」


「いいからっ!落ち着いて聞いてよっ……

リュウちゃんが…リュウちゃんが死んじゃったっ!」



「…え?」



ボクはゆっくりと身体を起こした。

ママは真剣な顔してボクを見つめ、また言ったんだ。


「…リュウちゃんが……

死んじゃったの…」



「……え?」



「…ベランダから落ちて…死んじゃったの……ぅぅぅぅぅぅ〜っ」



ママは目から涙をたくさん零しながらボクを抱きしめた。



「…リュウちゃんが…………死んだ?」



「…そうよ…」




『死んだ』?



…『死ぬ』ってどういう事なんだろう?


ボクはふと、そう思った。



そしてボクはママに抱き着かれながらゆっくりと視線を窓に移した。



「………。」



窓の向こうからこっちを見ていた。




…リュウちゃんが…。




そして、微笑んでいる。





死んだはずのリュウちゃんが立っていた。



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