(13)世界の有り様
魔術どうのと言うのは取りあえずそういうものとして深く突っ込まないことにして、次の疑問に取り掛かる。
「じゃあ、あの男ってのは何者だ?人間・・・じゃ無い様だし」
悠斗の脳裏に、火の粉を散らして消える男の姿がよみがえる。
「男?」
「狼で襲ってきたやつだよ」
「ああ、あれはシールリア。あっちの世界の住人さんってところね。
私たちは略してシールって呼ぶけど」
「あっちの世界?」
「シールズの事よ。
んー・・・。話すと長くなるから、簡単に言ってしまうとこの世には二つ・・・まあ、もしくはそれ以上の世界が存在していて、それぞれに完結した空間を持っているの。一つは今私たちがいるこの世界、で、もう一つがシールリアのいる世界。
勘違いしないように言っておくと、世界どうしはさっきも言ったように完結しているから、あの世とこの世みたいに意味的繋がりがあるわけじゃないし、別の宇宙とか物理的に行き来できるようなものでもないの」
「ちょっとまて、今行き来できないって言ったよな?
なんで、その、いたんだ?シール・・・―――――」
「シールリア、よ。そのことについても今から説明するわ。
詳しい理由は分かっていないんだけど、ここ300年のあいだに”接触”が異常な頻度で起こっているらしいの」
「接触?」
「ええ。
ややこしいけど、世界どうしを繋ぐ空間―――というか世界が収まっている空間であるアナリスって言うのがあって・・・説明するのが難しいわね」
『つまりは、其処に幾つもの世界が内包されていると思え。世界というのはそれぞれ、結界に似た”壁”を持っている。暗闇に浮かぶシャボン玉でも想像してみるといい。』
「っ!!」
「ありがと、助かったわ」
「えっと・・・その声、は?」
「あら、紹介していなかったかしら。アリシアの”声”よ」
「アリシアの・・・・・・さっきから専門用語が多すぎて混乱する」
質問をしたのは自分であることも、そもそも答えが普通ではありえないことも、分かってはいたし、予想もしていたが、正直ここまで飛躍した話になるとは思っていなかったのだ。
頭を抱えたくなった(もちろん比喩的ないみで)悠斗の星羅が提案する。
「そうね。だったら、取りあえず質問を一つに絞ったらどうかしら、そのほうが説明しやすいし」
「ああ、そうするよ。
じゃあ、世界がいくつもある、みたいなのからたのむ」
「えっと、”接触”の話だったわね。
さっきも言ったようにアナリスに存在する世界どうしは基本的に交わることはないの。極々稀にそういうこともあるようだけど。
でも、今アナリスに何かの力が加わって、均衡が乱れているらしいのよ」
「それでこの世と、のそ、交わってしまったのか?」
「ごめんなさい。言葉がよくないわね。
私たちは、交わる、と呼んでいるけど、実際には硬いものがぶつかるイメージよ。
そして、その瞬間”回廊”が繋がるの。
それを通ってこっちにシールリアがやってくるのよ」
「なんで!」
「知らないわ。でも支部で聞いた話では、シールたちはこっちの世界に強い興味を持っているそうよ」
「どのくらいの数がこの世に来るんだ?」
「一回繋がると五体から十体は来ると言われているわね」
「このことは普通の人は知らないんだよな」
「そうよ」
「これだけの数がこの世に来ていて、何故」
「だから、はじめに説明したでしょ。結界を築くのよ」
「・・・・・・」
「こんなことが知れ渡ったら、世界中が混乱に陥るわ。私たちの目的の一つはそれよ」
「さっきから、”私たち”って言ってるけどそれってあれか?ヒーローモノの五人組みたいなのか?」
「・・・・・・今のはスルーしてもいいかしら」
「そうしてくれ」
「はぁ、悠斗ってなんかかわってるのね。性格が読めないわ」
「よく言われるよ。どっちかっていうと、変わってるっていうほうが多いがな」
「まあいいわ。フシリアの話だっけ?」
「その単語は初めてなんd――――――いや、ちがう。あの男・・・じゃ無くて、シールリアが何か言ってたな」
『・・・・・・もしや、覚醒前の、などとは言っていなかったか?』
「なっ!
驚いたぞ!いったいどこからきこえてくるんだ?」
「いいから。どうだった?」
「ああ、そういえばそんな事言ってたぞ」
「『!』」
「やっぱりそうなのね。確信は無かったけれど」
『どう伝えたものか』
「えっと・・・・・・覚醒前が、どうかしたのか?」
「聴いて。取りあえず。
とにかく混乱しないでほしいの」
「はあ?どうしたんだ急に」
「んーっ、ええと」
『ありのままを伝えたほうがこの者のためになるだろう』
「そうね。
じゃあ取りあえず事実から順番に話していくとして・・・
あなたは人間じゃないわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
与えられた情報を脳が処理する。そしてあまりに異端な言葉が浮き上がる。
思わず
だが、悠斗より頭半分したから見上げる目に宿るのは真剣みとわずかな動揺だった。
文字数の割りに書き上げるのに以上に時間がかかりました。
新しい用語、造語などたくさんでてきましたが、きちんと説明できているか不安です(爆)。
用語辞典の作成を助言されましたので、物語の進行に平行して作成したいと思います。