コンビニでの放課後
放課後の校門を出ると、藤原健人は笑顔でポケットに手を突っ込み、振り向いた。
「とうも、今日のリフレッシュタイム、まだ行くか?」
「うん、いいよ」
二人は校舎を抜け、徒歩で近くのコンビニへ向かう。通りの向こうでは夕日がゆっくりと落ち、街の色をオレンジ色に染めていた。
「そういえばさ、碁部の後、どう思った?」健人がぽつりと聞く。
「……なんだか面白かったかな。でも、ルールがまだ覚えられなくて」とうもは苦笑した。
「お、意外だな。てっきりすぐ諦めると思った」健人は肩をすくめる。
コンビニに着くと、二人は入り口で深呼吸した。店内の明るい蛍光灯と冷蔵棚の並びが、学校の窮屈な空気を一瞬で忘れさせる。
「じゃあ、好きなの選べよ」と健人が言う。カゴを手渡され、とうもは少し戸惑いながらも中に入る。
「やっぱり、スナックが多いな…」とうもは棚を見回し、チョコやポテトチップスを手に取る。
「ふふ、選ぶの迷うだろ?」健人は笑いながら、奥のアイスコーナーに向かう。「俺は絶対アイス買うんだよな」
「へえ…そうなんだ」
その時、コンビニの自動ドアがガラガラと開き、松田陸が入ってきた。髪を少し乱し、制服の袖をまくり上げ、手にはスマホ。まさにヤンキー系女子の雰囲気だ。
「お、こいつら、ここにいたのか」陸は声をかけると、少し笑みを浮かべた。
「お前、碁部の新入りだろ?ふーん、結構しぶといな」陸は言いながら、とうものカゴを軽く押した。
「わっ、やめ…」とうもは慌てるが、陸はただふふっと笑う。
健人は横で大笑いした。「ほら、とうも、面白いだろ?あいつは外でも容赦ないからな」
「……はい」とうもは少し赤面しながら、選んだスナックを手に取る。
三人でレジに向かいながら、陸が唐突に話し始める。
「碁部って、あれだけど…お前、意外と根気あるな」
「え?」とうもは驚く。
「初めてなのに、諦めずに石を置いてた。面白いじゃん」陸は少し照れくさそうに笑う。
健人も頷く。「おい、言ってやれよ。俺も同じこと思った」
とうもは胸が少し温かくなるのを感じた。学校ではまだ慣れていない自分を、誰かがちゃんと見てくれている気がした。
レジを終えると、三人は店内の小さなイートインコーナーに座った。カップ麺やポテト、チョコを広げ、何気ない会話が続く。
陸はとうもに話しかける。「あのさ、次も碁部来るだろ?今度は俺と対戦してみろよ」
「え、でも…まだ初心者だし」
「初心者でも、面白い手打てるだろ?」陸は笑った。軽くからかうようで、でもどこか真剣さがある。
健人も口を挟む。「ああ、見てろよ。とうも、これから俺らが色々教えてやるから」
とうもは小さく頷き、スナックをかじりながら二人の話を聞いた。学校とは違う空気、外での会話、そして誰かに認められる感覚――それが少しずつ、自分の中で心地よく広がっていく。
「……不思議だな。学校じゃ疲れちゃうのに、ここだとなんか落ち着く」
陸はふふっと笑った。「外の世界も悪くないだろ?まぁ、俺は毎回こうやって騒ぐけどな」
健人は隣でくすくす笑いながら、「騒がしいのも、たまには悪くないだろ」と言った。
夕日が差し込む窓から、三人の影が少し長く伸びる。とうもは静かに思った――今日の放課後は、確かに楽しかった。
そして、これから先、ここから始まる友情と騒動が、少しだけ楽しみになってきた。




