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女子2人に振り回されすぎて生きるの疲れた  作者: 藤原・凛


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とうも、教室デビュー

ついに始まる、トーマスこと「とうも」の日本での高校生活。

転校初日から待ち受けるのは、予想外のハチャメチャと、少しだけ甘い予感――。

ヘントの街、雨の午後。あの失恋から数時間しか経っていないのに、心はまだ痛みでいっぱいだった。トーマス・ファン・オールト《とーます・ふぁん・おーると》――いや、後で“とうもさん”と呼ばれることになる外国人の僕は、両親の一言で日本行きが決まった。


「福岡に引っ越すわよ。高校は向こうで通ってね」


飛行機の窓から見下ろす福岡の街並みは、ヘントとはまったく違う景色だった。少し胸が高鳴る。新しい生活、新しい学校、未知の文化。全部が僕を待っている。


制服に袖を通し、校門をくぐると、思った以上に緊張が押し寄せる。掲示板に貼られたクラス分け表を確認し、自分の席番号を覚える。外国人である僕が、果たしてここでやっていけるのか。


教室のドアを押すと、ざわめきと笑い声が飛び込んできた。深呼吸を一つして、一歩前に出る。


「……あの、今日から転校生です、トーマス・ファン・オールト《とーます・ふぁん・おーると》です」


声は小さかったかもしれない。でも、一瞬の静寂のあと、笑い声が飛んだ。振り向くと、茶色の髪を揺らし、瞳を輝かせた少女――橘陽花たちばな はるかがこちらを見ていた。


「へぇ、外国人だって!面白そうじゃん!」


彼女はすぐに席を立ち、僕の前にやってきた。手には紙飛行機を握りしめている。心の中で、「え、何するんだ?」と叫ぶ間もなく、紙飛行機が肩にポン、と当たる。


「ねぇ、とうもさん?自己紹介、ちゃんとできるかな?」


名前はまだ“とうも”と呼ばれることに慣れていない。しかも、陽花はるかのいたずら心が加わると、緊張は倍増する。僕は慌てて頭をかきながら、紙飛行機を拾う。


「えっと、はい……よろしくお願いします」


彼女は笑いながら、飛び跳ねるように席に戻っていった。教室の空気が一気に賑やかになる。周りの生徒もちらちらと僕を見て、ささやき合っているのが聞こえた。「外国人ってすごいね」「かっこいいかも」――なんだか、ちょっと恥ずかしい。


心の中で、僕は呟く。

「落ち着け、トーマス。まだ一日目だ…でも、もう振り回されそうだな…」


そしてその時、教室のドアが再び開く。静かで落ち着いた雰囲気の少女――中村結衣なかむら ゆいが入ってきた。髪は肩にかかり、目は少し不思議そうに教室を見渡している。僕と視線が合った瞬間、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。


「……え、なんだこれ?」

内心で小さく呟く。まさか、初日からこんなに心がざわつくなんて。


席に着くと、陽花はるかが再び僕を見てニヤリと笑う。

「とうもさん、昼休み、一緒にお昼食べよっか!」


いや、まだ話したこともないのに…!でも、断れる雰囲気ではない。僕は苦笑いしながら頷いた。


授業が始まり、先生が自己紹介を促す。クラスメイトの一人が「じゃあ、とうもさん、よろしく!」と笑顔で言う。少しずつ、名前が定着していくのを感じる。


授業中も、陽花はるかは机の下でこっそり小さないたずらを仕掛けてくる。ペンをこっそり落としたり、ノートに小さな絵を描いたり。周りの生徒は笑いながら見守る。僕は必死に平静を装うが、内心では笑いをこらえきれない。


昼休みになると、陽花はるかは僕を引っ張って校庭に向かう。小さな芝生の上で、彼女は紙飛行機を投げて遊ぼうと言う。僕は戸惑いながらも、少しずつ楽しんでいる自分に気づいた。


「とうもさん、もっとリラックスして!学校は楽しまなきゃ!」

陽花はるかの笑顔に、僕は自然と笑っていた。まさか、初日からこんなに振り回されるとは思わなかった。


そのとき、ふと視線を感じる。結衣ゆいが少し離れた場所から、僕と陽花はるかを見ているのだ。静かで落ち着いた表情。何だか、不思議な安心感を覚えた。


僕の高校生活は、ここから始まる――混乱、笑い、そして恋の予感とともに。果たして、陽花はるかのハチャメチャ、結衣ゆいの静かな魅力、そして外国人としての困難を、僕はすべて乗り越えられるのだろうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

転校初日から橘陽花たちばな はるかに振り回されるとうもを書いていて、作者もかなり楽しかったです。

これから少しずつ、彼の周りはもっと騒がしくなっていきますので、ぜひ次回もお付き合いください!

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