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第7章 共犯の沈黙

 心の叫びは、さらに深い恐怖によって消し飛ばされた。


 掌に刻まれる指先の痛みなど、魂の堕落がもたらす戦慄には遠く及ばない。


 エラとの関係は、とっくに醒めない悪夢となっていた。


 もう死は見たくない。


 だが、自分に死が降りかかることほど恐ろしいものはない。


 反抗の念は脆い泡のように、現実という氷の上で音もなく砕け散った。


 結局、口をついて出たのは、相変わらず臆病な嘘だった:


「ごめん、エラ、ちょっと驚きすぎたみたい」


 真実は飲み込まれた。


 あの精密な殺戮は、私の口の中で取るに足らない驚きに薄められた。


 すべての葛藤は、「生存」という名の暗い深淵に沈んでいった。


 私は進んでエラを抱き返し、硬直した腕で彼女の腰を囲み、彼女の目に一瞬よぎった、獲物を評価するような視線をなだめようとした。


 なぜ?


 どうにでもなれ――という毒蔓が心底で生い茂る。エラ・ヴァンス、その美しい皮肉の下に、いったいどれほどの冷酷な真実が隠されているのか、この目で確かめてやる。


 依存、あるいは死への恐怖が、私に沈黙を選ばせた。


 家なき者に、理想を語る資格はない。


 落ち着け、カレン。お前はまだ死にたくないんだ。


 私たちはセーフハウスに戻り、古いソファに詰めかけて座った。テレビの画面はちらつき、沙沙というノイズを発している。


「余計なこと考えないで、ダーリン」


 エラは数本のテープを取り出し、口調は普段の柔らかさを取り戻していた。下水道での一切がなかったことのように。


 この迅速な感情の切り替えに、心底寒気が走った。


「コメディがいい」私は疲れた声で言った。「今日は…少し賑やかさがいる」


 何かしらの音が、内心の死の静寂を覆い隠してくれるものを必要としていた。


「いいよいいよ!」


 ヴィナは興奮してワニの爪を拍ち、新しく換えた、あの少女の小犬歯が、笑うと不気味な白い光をちらつかせる。


「ヴィナ、お笑いの話一番好き!好き好き!」


 エラは自然に私とヴィナの間に割って入り、占有欲に満ちた障壁を形成した。


 コメディ映画の喧騒と罐詰の笑い声が、狭苦しい空間を埋め尽くす。


 私たちは食べ物を口にし、乾いた、その場しのぎの笑い声を上げた。


 虚妄の温もりは、薄い氷のように真実の汚水を覆っていた。


 私とヴィナは、多かれ少なかれその中に浸っていた。


 だが、エラだけは溶け込めない。


 映画が終盤に差し掛かり、主役たちが抱き合って团圆する場面で、彼女は突然立ち上がり、洗面所に駆け込んだ。生理的な耐え難さに襲われたかのように。


 ご苦労なことだ。私たちこの「怪物」二人が、人性の温もりを渇望しながら、愛と宽容についての映画を見終わるのにつき合うとは。


 あの妥協の抱擁のおかげで、彼女は私の反常を深く追求することはなかった。


 彼女の目には、私の「従順」は当然のことと映っている。


 —————————(翌日)——————————


「この下水道、妙に詰まってるぞ…」作業員が呟き、懐中電灯の光をパイプの中で揺らす。


「うっ!?あ…あれは子供!?なんてこった――!」


 恐怖の悲鳴が密閉空間に反響する。


 懐中電灯の光の先には、顔貌が損なわれ、焦げ肉の臭いを放つ小さな体があった。


「また内輪もめか…」後に駆けつけた所長のディロは、ハンカチで口と鼻をしっかり覆い、眉をひそめる。「子供すら見逃さないとは…」


「おやおや、これは尊い所長様では?」ヴィックのからかうような声が聞こえる。


「この事件は我々が管轄する」ディロは振り向きもせず、冷たい声で言う。


 ヴィックは口笛を吹きながらしゃがみ、大雑把に遺体を検査する。「ちっちっ、歯のためだけに?」


「追跡できるか?」


「ハッ!追跡できるならこんな悪臭の中で俺がここにいると思うか?」ヴィックはタバコに火をつけ、嘲笑した。


 ディロはそれ以上問い詰めず、手帳に「重度の腐食」、「精密打撃」、「肉体改造」などのキーワードを素早くメモする。「適切に処理しろ。両親には交通事故と伝えろ」


「了解しました、長官!」


「ふん、この手口をまだメモする必要があるのか?」ヴィックは皮肉な口調で言った。「俺は忘れやしない」


「確認のためだ。番号110と201は一緒にいる。番号745もいる可能性があるが、確率は高くない。彼女の性格では、こういう事は受け入れ難いだろう」


「そんなに確信してるのか?」ヴィックは眉を上げ、歪んだ笑みを浮かべる。「奴らは長い間同室だった。俺に言わせりゃ、三人とも確実に一緒だ」


「もしそうなら、逮捕難度は上がる」


「俺がいるから問題ない」ヴィックは武器を叩く。「お前は引き続き手がかりを探せ、俺は近くを『回って』くる」


 彼の直感はめったに外れない。


 彼は血の臭いを嗅ぎつけた猟犬のように、古びた銅ケーブルをたどり、慎重に前へと探索していく。


 —————————(セーフハウス)—————————


「ドアをしっかり閉めて、ダーリン」


 エラの声には切迫感がある。彼女はわずかな荷物を既にまとめ、驚くほどの速さで動いている。


「なぜここを焼き払わなければいけないの?」


 私はこの短い間の「家」を見つめ、その哀れな未練が自分自身にも嫌悪を感じさせる。


「永遠に安全な場所なんてない」彼女の口調は冷静で残酷だ。すでに促進剤を撒き散らし始め、その動作は何度も練習してきたかのように熟練している。「行くわ」


 彼女が火をつける。


 瞬く間に、この下水道の巣穴は炎と煙に飲み込まれた。


 彼女は何も持たなかった。すべての過去は、このように焼き尽くすことができる。


 おそらく彼女は正しい。


 生存の前では、未練は贅沢品なのだ。


 私たちは地上に戻り、マンホールの蓋を押しのけ、人気のない路地の影に着地した。


 エラは素早くタクシーを止めた。


「どちらまで、お三人様…うわあっ!?こちらのお嬢様は…!?」


 運転手がバックミラー越しにヴィナを見て、声を裏返して驚いた。


「心配しないで」


 エラは悠然と助手席に座り、一部の視界を遮り、振り返って非常に慰撫力のある完璧な微笑みを見せた。


「私の友人は特殊メイクアップアーティストで、リハーサルを終えたばかりで、メイクを落としていないだけです」


「そ、そうですか?本当に…リアルですね」


「これが…うううう!」


 ヴィナが口を開こうとしたところを、私はすぐに口を押さえた。


「彼女…役に入り込みすぎて」


 私は笑顔を作った。


 タクシーは曲がらなければならない交差点で止まった。


「ここで?お嬢さん、この辺りは安全じゃありません!別の場所までお送りしましょうか?」


 運転手は窓の外の、虚ろか貪欲な眼差しの人影を見て、親切に勧めた。


「ありがとう、私たちは注意します」


 エラは断固として車を降りた。


 彼女の目的がわかる――あの白い粉のためだ。


 彼女は一時的に男性への憎悪さえ棚上げにしている。


 私は好奇心旺盛にあたりを見回すヴィナをしっかりと引き留めた。


「エラも誰かとお話してる!手伝う?手伝う?」


「彼女には用事があるの、邪魔しないで」


 私はエラが街角で黒いコートの男と素早く、目立たないように取引を完了させるのを見つめた。


 その男の横顔は、私を不快にさせた。


 取引が完了し、エラは私たちを目的地へと導いた。


 汚い通りを抜け、荒廃したアパートの建物に入る。


 きしむ階段を上がり、彼女は鍵で塗装が剥がれた鉄のドアを開けた。


 カビとほこりの気配が顔を襲う。


「このソファ、替わってる…」エラは瞬間的に警戒し、私を背後に引き寄せると、その声は刃物のように冷たかった。「そこにいるのは誰だ?出て来い!」


「誰だと思ってる?エラ」


 見覚えのある影が、奥の部屋の薄暗い光の中からゆっくりと現れた。


「君たちが溺れ死んだって聞いて、少し残念に思ってたところだ」


「カミラ?あなたは命だけは硬いのね」


 エラは冷笑し、体の線は少し緩んだ。


「カミラさん、ご無事で何よりです」


 私はうなずき、複雑な思いを抱いた。再会の安堵は重苦しい罪悪感に押しつぶされていた。


 彼女の存在は、鏡のように、私が沈みゆく泥沼を映し出している。


「このソファ、すごく弾む!」


 ヴィナは興奮して飛び乗り跳ねる。自分の恐ろしい姿と重苦しい雰囲気をまったく気にしていない。


 私たち四人は、ほこりが充満するこのセーフハウスで再び集った。


 空気は凝固し、一秒一秒がとても長く感じられる。


 私はほとんど息もできず、カミラがその問題を口にするのを待ち、この脆弱な再会が崩れ去るのを待っていた。


 重苦しい、「共犯」という名の罪悪感が、私の喉を締め付けていた。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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