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第8話:決意

1. ボス戦:連携と信頼


迷宮の最深部、ボスエリア。


待ち構えていたのは、巨大な装甲に包まれた機械ドラゴンだった。咆哮と共に、レーザーを放つその姿は、SMOの「可愛さ」の法則から逸脱した、純粋な「暴力」だった。


「ボス戦だよ! ナノ、解析を急いで!」


「了解! 弱点は、装甲の継ぎ目にある『コアクリスタル』! 短時間しか露出しない!」

ナノの精密な分析をもとに、シオンが即座に指示を出す。


「ルル、マリー! コアが露出した瞬間、最大火力を一点に集中!」


「任せて! スプリング・ブレイク!」


マリーは詠唱を省略し、渾身の魔法を構える。


「わたしも行くよ! きらめきフィニッシュだ!」


手慣れたものだ。ルルは強制発動するウインクエモートすら、攻撃タイミングに組み込む。

一方、ユイナは、自らの「善意の暴走」を反省し、リーダーではなく盾になることを決意する。


「シオン! 俺は、盾になる! 回復を頼む!」


シオンは無言で頷く。


機械ドラゴンのレーザーが、ユイナの盾を打ち砕いた。HPバーが一気に赤に変わる。その直後、シオンの光の粒がユイナを包む。正確無比のタイミングだった。


ユイナは、シオンの指示に従い、機械ドラゴンの動きを誘導した。その間にナノは、リアルタイムでボスのシールド値を分析し、ルルとマリーに「コア露出まで残り3秒!」と叫ぶ。


(──シオンの指示、精密機械かよ)


ユイナは内心ツッコむ。シオンの指示は、一秒の狂いもない。彼女の指示は、彼ら四人の「男」の力を、最高の「乙女」の力として融合させた。


コアが露出した瞬間、マリーの魔法とルルの剣技が炸裂!


──そして。


勝利のファンファーレ。ログが流れる。


《称号:春風の五乙女 獲得!》


2. 称号獲得とオフ会へ


疲労と、それ以上の達成感に包まれて、五人はダンジョンの出口に立っていた。


「やったー!」


「最高! 例の短すぎる衣装に着替えてスクショ撮ろ!」


ルルの提案で、全員がイベントで手に入れた「倫理観の下がる」衣装に着替える。


「「「「「……」」」」」


全員が赤面していた。


アバターは、極限まで可愛いポーズで並び、記念写真を撮った。

ユイナは、その写真を見ながら、決意を新たにした。


「ねぇ、みんな。オフ会、今週末でどうかな?」


ナノとマリーは、依然として緊張した面持ちだ。しかし、彼らの間に「拒否」という選択肢はなかった。


「……わかった。土曜日の夜なら、調整できる」


ナノが、諦めたように答える。


「ぼ、僕も……行きます」


マリーは、決死の覚悟だった。


ユイナは微笑んだ。


「ありがとう。なんかさ……笑いすぎて疲れたけど……」


「ん?」


「現実で会っても、やっぱみんな『仲間』って感じがするんだ」


「わかる」


ルルが言う。


「性別とか年齢とか、もうどうでもいい感じ」


シオンが、白い外套を翻して、静かに微笑む。その笑顔には、一切の迷いがなかった。


「うん。ゲームの中では、みんな同じ『少女』だったもん」


「……そうだな」


笑い声が重なり、ゲームの夜の街に溶けていく。


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