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第2話:チュートリアル「美少女地獄の草原」

ユイナ(中の人:神崎雄一、19歳・浪人生)

ナノ(中の人:田中直人、24歳・システムエンジニア)

ルル(中の人:鈴木亮、17歳・高校生)

マリー(中の人:佐藤正、35歳・市役所職員)

シオン(中の人:秘密)

1. ギルド:リリカルハーツ


「みんな、準備はいい? 最初のクエスト、受けるよ」


「「「「はーい!」」」」


ユイナがギルドメニューを開く。

ギルド名 《リリカルハーツ》は、ルル(中の人:鈴木亮、17歳・高校生)が「可愛くて破壊力のある名前にしたい!」と押し通したものだ。高校生らしい発想である。


「初期クエストは、『はじまりの森のスライム討伐』ね。

目標:スライム10体。

報酬:初期装備と『きらめく初々しさの証』」


ナノがすぐに分析ウィンドウでスライムのデータを引き出す。


「チュートリアルなので、防御力と攻撃力は最低レベル。ただし、このゲームは『アバターのかわいらしさ』が行動に影響を与えるというデータがある。油断しないように」


「任せて! 私、剣スキルだけは上げてきたから!」


ルルが胸を張り、初期装備の片手剣を構える。そのモーションは、華麗というよりは勢いがある。


「いや、だから。まだチュートリアルなんだってば!」


「細かいことは気にしないのが、このゲームの流儀でしょ?」


ルルは笑い飛ばす。

その無邪気さが、ユイナたちを現実の鬱屈から解放してくれた。


2. チュートリアル:美少女地獄の草原


最初の敵は、お約束通り、青いプルプルしたスライムだった。だが、SMOのスライムは、討伐対象でありながらやたらと可愛い。瞳がキラキラと光り、頭には小さなリボンまでついている。


「あ、かわいい! でも、容赦はしない!」


ルルが一番に駆け出した!アバターが剣を振り下ろす瞬間、ルルは現実でも力強く腕を振っているだろう。だが、アバターのモーションは「美少女が剣を振る」という規定に縛られる。剣の軌道は少し優雅になり、斬撃と共に小さな星のエフェクトが飛び散った。


「くっそ、モーションの強制補正が鬱陶しい! もっと踏み込みたいのに!」


ルルは内心で叫んでいるだろうが、アバターは「フンッ」と息を吐く、可愛い声しか出さない。


その横で、マリーが杖を構える。


「闇の炎を纏いし魔女の秘蹟よ!……って、あれ、まだレベルが足りないのか」


マリーは詠唱を中断し、初期魔法の《ファイアー・ボルト》を地味に放つ。火の玉がスライムに命中すると、スライムは「きゅるん!」という悲鳴と共に、大量のピンク色の花びらエフェクトを撒き散らしながら弾け飛んだ。


「うわぁ、花びらすごい! 視界がピンク!」


ユイナが目を細める。


「エフェクトが過剰すぎるわ。これが『美少女地獄』か」


ナノは分析しつつも、杖から《ウィンド・カッター》を放つ。その風の刃は、青い蝶のエフェクトを伴い、次のスライムを切り裂いた。


ハッ、と、ユイナが自分の役割を思い出す。

彼女はリーダーであり、前衛の剣士だ。


「みんな、囲まれないように! 私がヘイトを取る!」


ユイナはスライムの群れに突っ込んだ。アバターの動きは俊敏だが、ルルと同じく、一挙手一投足に優雅な補正がかかる。しかし、ユイナは現実での浪人生活で培った集中力を活かし、モーションの隙間を縫うように、スライムのコア(リボン)を正確に狙う。


「ハッ!」


剣が一閃するたびに、スライムはピンクの花びらと共に消滅していく。ユイナのHPバーが、スライムの小さな体当たりを受けて僅かに減る。


「危ない、ユイナ!」


ルルが救援に駆けつけようとした、その時だった。


3. 予期せぬトラブルと勝利


ルルが、右手のコントローラーの操作を誤った。


「きゃっ! 間違えて『キュートポーズ』が出た!」


ルルのアバターが片足を上げ、両手でピースを作り、ぶりっ子全開のポーズを取った。それに合わせて、巨大なハートマークのエフェクトが、彼女を中心にフィールドに炸裂した。低身長のロリキャラながら、ポーズを取る度に大きなお尻がチラチラしていた。


「敵、全員こっち向いたよー!?」


ユイナが叫ぶ。


「挑発効果ついてるの!? このエモートに!?」


ナノがデータ分析を急ぐ。


「ルル! それ攻撃じゃなくて、誘惑だよ!」


ユイナの悲鳴が草原に響く。

スライムたちは、ハートマークのエフェクトに釣られたのか、一斉にルルに向かって跳ね始めた。


「まずい! これじゃルルが集中砲火を浴びる!」


混乱の中、シオンだけが静かに動いた。


彼女は一歩前に出て、手に持った初期装備のロッドを掲げる。その動きには一切の無駄がなく、まるで訓練された兵士のようだ。


「落ち着いて。私が回復する」


シオンの声が、混乱したメンバーのヘッドセットにクリアに響く。


《ライト・ヒール》が放たれる。

その回復魔法のエフェクトは、他のメンバーの派手なエフェクトと異なり、白い光の粒が優しく、そして最も効率よく、ルルとユイナのHPバーを回復させた。


回復と同時に、シオンはロッドを一振りし、短剣を構えた。彼女の職業はヒーラーだが、その動きは完全に一級の暗殺者だった。


「残りは私で処理する。ナノ、右。マリー、左」


シオンの短く、冷静な指示が、パニック寸前のメンバーを瞬時に落ち着かせた。ユイナは、まるで精密機械のようなシオンの立ち振る舞いに、感心しながらも疑問を覚えた。


ナノとマリーは、シオンの指示通り、残りのスライムを側面から攻撃する。青い蝶と、爆音と共に弾ける花びらのエフェクト。


そして、シオンが放った最後の一撃──短剣による正確な突きが、最後の一体のコアを貫いた。

光が晴れたとき、スライムたちはすべて消えていた。


「ふう……危なかった」


ユイナは胸を撫で下ろす。

五人の少女が顔を見合わせる。

疲労感はあるが、それ以上の達成感が満ちていた。


「シオンの指示、マジで助かったわ。まるで軍隊の司令官みたい」


ルルが息を弾ませながら言った。


「データ分析と効率的な動き。『美少女アバター』という皮を被っているが、中身はガチで戦闘のプロがいる。これはギルド運営において非常に有利ね」


ナノは興奮気味に分析をまとめた。


「わたし、回復役なのに前衛で斬っちゃった……」


シオンは少し困惑したように首をかしげる。


「いいのいいの! 結果オーライ! 楽しかったから全部OK!」


ユイナが、現実で出すことのない最高の笑顔をアバターの顔に浮かべた。

ログに、クエストクリアの文字が流れる。


《リリカルハーツ》の冒険は、この美少女地獄の草原から始まった。


風が、再び金色の髪を揺らす。

最高の仲間、最高の舞台。

性別や年齢なんて関係ない。

この世界では、みんなが最高の『少女』なのだ。


ユイナ(雄一)は、現実を忘れ、その世界に完全に没入していた。


「さあ、次のクエスト、ぷにぷにの森へ行こう!」


笑い声とエフェクトの光に包まれて、少女たちは森の方向へ足を踏み出した。



次回:ぷにぷにの森の大混乱とナノの決意!


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