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第6話「病院ドクターズ」

 夏の終わり。リーグの後半戦を前に、久留米フレンズは思わぬ壁にぶつかっていた。

 走力とフィジカルを武器に戦ってきたものの、ここにきて怪我人が続出。疲労から肉離れや関節痛を訴える選手が相次ぎ、練習にも支障が出ていた。


 「このままじゃシーズンを戦い抜けんばい」

 キャプテン佐伯は不安を隠せずにいた。


 そこへやって来たのが、地元病院のスポーツドクター原田だった。

 白衣姿にジャージを羽織り、背後には看護師チームがストレッチマットや測定器を抱えている。


 「今日から私たちがメディカルサポートに入ります。怪我を防ぐ体のケアを徹底しましょう」


 そう言って原田が紹介された瞬間、選手たちはどよめいた。

 “病院ドクターズ”の参入である。



 その日から練習場は一変した。

 練習前には看護師たちが全員にストレッチを指導。練習後はアイスバスや栄養ドリンクで疲労回復を徹底する。


 「ほら翼、足を伸ばすのは反動つけちゃダメ!」

 「アランさん、今日は疲労度80%です。強度落としましょう」


 最初こそ「大げさだな」と苦笑していた選手たちも、体の軽さを実感し始めると真剣になっていった。



 そんな中、グラウンドの隅で腕を組んで見守っていたのが――八百屋の古賀はるえだった。

 「お医者さんは怪我を防ぐとね? じゃあ、うちは食べ物で守ったる!」


 はるえは翌日、大きなクーラーボックスを抱えて現れた。

 「今日の差し入れはゴーヤとトマト! ビタミンCとカリウムで疲労回復たい!」


 ドクターズが栄養ドリンクを配る横で、はるえは“古賀八百屋特製サラダ”を次々と差し出す。

 「走る体は食べもんで作るとよ! 肉ばっか食うと怪我するけん、野菜もちゃんと食べんしゃい!」


 その勢いに、医師の原田も思わず笑った。

 「なるほど……病院と八百屋のコラボですね」

 「当たり前たい! 久留米の選手は、うちが野菜で守っとると!」


 こうして、病院チームと八百屋の“異色タッグ”が誕生した。



 数週間後。

 怪我がちだった大城がフル出場を果たし、途中交代が多かった若手も最後まで走りきれるようになった。

 「体が軽い!」「疲れても翌日に残らん!」と、選手たちの声が弾む。


 そして迎えたリーグ戦。

 相手は当たりに強い武闘派クラブ。かつてなら接触で次々と倒れていたはずだ。

 だが――。


 「久留米、今日は誰も倒れない! 走り切っている!」

 実況が驚きの声をあげる。


 後半40分、佐伯がスライディングで相手のエースからボールを奪い、そのままカウンター。

 翼が繋ぎ、アランがゴールに突き刺す!


 スタジアムは総立ち。

 「怪我がないけん全員全力や!」「街の医者と八百屋のおかげたい!」と観客が口々に叫ぶ。



 試合後、原田医師は笑顔で選手たちに言った。

 「君たちを守るのは医者だけじゃない。この街のすべてが君たちを支えてるんだ」


 すると、すかさずはるえが胸を張った。

 「走らん奴は応援せん! けど、走る奴は全力で守るけんね!」


 選手たちは笑いながらもうなずいた。

 病院と八百屋が手を組み、クラブは“怪我を恐れず戦えるチーム”へと進化を遂げた。


 久留米の街の人々は誇らしげに語った。

 「うちのチームは、街の医者と八百屋に守られとるとよ!」


 ――久留米フレンズの挑戦は、ますます熱を帯びていくのだった。


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