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第5話「データの魔法」

練習場に、見慣れぬ人物が現れた。

 ノートパソコンを抱え、首には小型のGPS端末を提げた大学生。久留米大情報工学部の城戸真帆だった。


「えっと……今日からチームのお手伝いをさせてもらいます!」

 緊張しながらも、きっぱりとした声。


 黒田監督は怪訝な顔をした。

「おい悠真、なんだこの子は」

 キャプテン佐伯が苦笑いする。

「地元でサッカーオタクとして有名なんです。クラブオーナーズ会議で推薦されまして」


 真帆はおずおずと、手にしていたGPS端末を見せた。

「選手にこれをつけてもらえれば、走行距離やスプリント回数をデータ化できます。今のフレンズは走力もフィジカルも強くなってきました。なら……それを活かせる戦術を組めるはずです!」


 黒田は腕を組み、ふんと鼻を鳴らす。

「データ? サッカーは気合と根性やろ」


 だが真帆は怯まない。

「監督がいつも言ってる“もっと走れ!”“前から追え!”を、数字で裏付けられます。これで選手も納得して全力でやれるんです!」


 ――その言葉に、選手たちの表情が変わった。



 翌日、選手たちは胸にGPS端末を装着して練習に臨んだ。

 「ピッ」と音が鳴り、パソコン画面にはリアルタイムで走行距離やスピードが表示される。


「おお……俺、もう6キロも走っとる!」

 大城が驚きの声を上げる。


「アランさん、加速回数すごいですね!20本超えてます!」

 真帆の声に、アランはニヤリと笑った。


 練習後、真帆はチーム全員を集め、データを提示した。

「この一週間で、平均走行距離はリーグ1位のクラブを上回ってます。だから――ハイプレス、つまり前線から相手を追い込む戦術が可能なんです!」


 黒田は驚き半分、照れ半分で頭をかいた。

「……俺が感覚で言いよったことを、数字で証明したわけか」


 選手たちが一斉にうなずいた。

 「これなら信じて走れる!」

 「データで裏付けされると説得力あるな」



 そして週末のリーグ戦。

 相手はパス回しに長けた格上チーム。序盤は押し込まれる場面もあった。


 だが真帆の提案どおり、ハイプレスを仕掛ける。

 アランと翼が最前線で相手CBに襲いかかり、佐伯と中盤が連動してパスコースを遮断。

 相手は慌てて横パスを出すが――。


「カットした! 久留米、ボール奪取!」

 実況の声が響いた。


 そこからカウンター。翼のスルーパスを受けたアランが豪快にゴールを叩き込む。


 スタンドは総立ちとなった。

「フレンズがこんなに組織的に動くなんて!」

「走力と当たりの強さを活かした戦術だ!」



 試合後。

 真帆はノートパソコンを閉じながら、小さくガッツポーズした。

 「やった……データで証明できた」


 黒田がその肩をぽんと叩く。

「お前のおかげで、チームの走りが意味を持った。よくやったな」


 真帆は照れ笑いを浮かべた。

「監督の直感と、データ。両方あれば、もっと強くなれます!」


 こうして久留米フレンズは、“走力”と“フィジカル”に加え、“戦術的説得力”を身につけた。

 街の人々は誇らしげに語った。

 「監督は元ヤンでも、データがついとるけん安心やね!」


 久留米の挑戦は、さらに加速していくのだった。

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