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静寂の夜に

作者: 陽下 識
掲載日:2025/08/20

こちらに冷たい風を送ってくる乾いたエアコンの音がどうも耳障りで、耐えかねた私はベッドから身を起こした。

果たして昔の人は西暦何年の何月何日に残暑なんていう言葉を持ち出したのだろうという疑問を唱えたくなるような、寝苦しいとある夏の夜。ここ最近不眠に悩まされていた私は、この日も寝付けずいた。

不眠の原因はそれはもう色々ある。つい先日身内が倒れてしまい入院したことだったり、今私の身の回りで起きている対人関係でのトラブルだったり、それに付随したネガティブ思考だったり。元々悲観的な考えの持ち主である私は自分の過去全てを黒歴史だと捉えているので寝る前に限らず敢えて過去を思い出すようなことは基本的にしないのだが、それでも眠れない夜には最近あった落ち込むエピソードと共に過去の些細な失敗を思い返しては一人気分が沈んでしまうものだ。

そんな私も成長するにつれて人前で明るく振る舞う処世術のようなものが身に付いた結果、性格が明るくてポジティブだね、コミュニケーション能力が高いねと人から褒められるようになった。もちろんこれはありがたいことではあるのだが、その一方でこうして不眠に悩まされてはセンチメンタルな気分に浸っている自分は一体何なんだと頭を抱えずにはいられない、この日はそんな夜だった。

少しだけ窓を開けて今の外の世界を眺めてみると、雲一つ浮かんでいない暗闇にぽつんと三日月が顔を出していた。

私がまだ小さい頃はここに今よりもっと星が綺麗に見えていたのになんて、やはりネガティブな方向に思考が飛んでしまう。

しかし、とそんな中で私は思い直す。

今こうして眠れない夜に三日月を眺めているのは、きっと私だけではない。

この後結局私が心地のいい眠りについて明日がやって来れば、家族や友人やその他の顔見知り、私の横をすれ違うだけの人との新しい関わりを持つことができる。

何かと悲観的な私だったが、やはりこんな夜にも最後に勝つのは明日やその先に胸を躍らせるポジティブな感情だった。

窓をそっと閉めた私は、さてどうしようかと別の思考に脳をシフトする。折角一度起きたのなら、何か意味のあることをしてから寝よう。

そう思い立った私は、自分のスマートフォンを開いて今まで弄ったことのなかったサイトに登録し文字を綴り始めたのだった。

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