危険
フーシャとエルナは、森の中を進むにつれて道がだんだん険しくなってきた。陽光が木々の隙間から漏れ、彼女たちは静かな森の中で注意深く歩いていた。突然、周囲の音が途絶え、静寂が支配した。フーシャはその変化に気づき、ふと立ち止まった。
「なんだか、変な感じがする…」とフーシャが呟いたとたん、木々の間から不自然な影が現れた。そこには、現実のオオカミとはまるで違う、奇妙な生き物が姿を現した。
そのオオカミは、深い紫色の毛皮に覆われ、目の周りには炎のような模様が浮かび上がっていた。牙は長く鋭く、目は赤い宝石のように輝いていた。まるで異世界から来たような、恐ろしい存在感を放っていた。
「フーシャ、あれは…」とエルナが震えながら言った。
オオカミは、彼女たちの存在に気づいたようで、低い唸り声を上げながら近づいてきた。その姿に恐怖を感じた二人は、即座に逃げる決断をした。
「走って!」フーシャはエルナの手を引き、森の中を全速力で駆け出した。オオカミの咆哮が森の中に響き渡り、背後でその恐怖の気配が迫っていた。
「どうしよう…」とエルナは息を切らしながらも、フーシャの手をしっかりと握り締めた。
「冷静に、急げばきっと逃げられる!」フーシャは必死に前方を見つめながら言った。彼女たちは木々の間を素早く駆け抜け、オオカミの咆哮が背後でどんどん近づいてくるのを感じた。
突然、地面が崩れそうになり、フーシャたちは足を取られそうになった。目の前には深い穴が開いており、彼女たちは素早く左右に避けながら、さらに加速して森の出口を目指した。
オオカミはその強大な脚力で一気に距離を詰め、迫ってくる。その姿はまるで魔物のようで、恐怖が増していった。
「もうすぐ出口が見えるわ!」とフーシャは前方の道に希望を見出し、エルナに声をかけた。二人はさらにスピードを上げ、森の出口へと突き進んだ。オオカミの咆哮が背後に遠ざかり、フーシャたちはついに森の外にたどり着いた。
息を整えながら振り返ると、紫色のオオカミは森の中で姿を消していくのが見えた。フーシャとエルナはほっと息をつき、しばらくの間その場に立ち尽くしていた。
「大丈夫、私たちは無事だよ。」とフーシャは震える手でエルナを見つめ、優しく言った。
二人はお互いの無事を確認し、再び歩き出す準備を整えた。あの恐ろしいオオカミの姿は、彼女たちの心に深く刻まれたが、これからの冒険に対する決意も一層強くなった。