ことのはじまり
新作です。この物語はドタバタギャグコメディだと思っていてください。決してシリアスにもSFにも動かないです。
この作品について、漫画アニメラノベ小説など、多くの作品を参考にさせていただきましたが、実在する人物・団体・地名及びあらゆる創作物とは一切の関係はありません。あらかじめご了承ください。
※読者様への注意
「・・・・・・
「・・・・・・」
の表記は同一人物の発言です。少々読みにくいかもしれませんが、仕様なのでご了承ください。
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面倒な話は全部省くにしても、三年前の平成四十三年に遡るが、何か、よう分からん爺さんが、電脳世界と人間の脳を完全に近いほど繋げるシステムを造り出して、世界を震撼させたらしい。正直、爺さんすげー、くらいの感想しか感慨しか、あるいは認識しか俺には湧かなかったが。
「それはこの世界に生きる人間としてどうかと思うけどね……」
知らねえ。大体、囚われないことが、あるいは捉えられない、っつーのが俺のコンセプトなんだよ。
……って、脱線しちまったが。とにかく、この爺さんのシステムを、世界中が欲しがった。爺さんのくせにモテるじゃねーか、うらやましくねえ。
「本題から外れに外れまくってますよ」
おっと……、そうだったそうだった。
で、そのなんちゃらシステムを造った爺さんが、医療発展のためにとか夢の無えジジイみてえな(実際かなりの爺さんだが)こと言って、世界中の求めたシステムの権利を売っちまったもんだから、ひと悶着。
そりゃあ、揉めに揉めまくったらしい。完全個人主義的な俺もちょいと焦ったもんだぜ。
んで、そっから三年。安全テスト、医療活用、海外導入、超小型化を経て、昨日の今日まで待ちに待ちまくって、ようやくシステムの他方解禁。
どの企業も迅速に動きまくった。俺たち、というか俺たちの親企業、表の世界では最も影響力を持つとされる唯一の財閥企業もまた、例外じゃねえが。てか、最大手だが。
……と、前置きは長々となっちまったが。そんな風に言いつつ、俺は新しい仲間たち……初の、ええと……
「フルダイブシステムです」
そうそう。初のフルダイブシステム導入型ゲームの企画開発運営チームの面々に視線を向ける。
まあ、俺を合わせても六人しかいねー訳だが。人員不足っつーか、この時代にゲームと云うのが嵌まんなかったのかも知れねえが、何にしろ、だ。
成功させなきゃ意味ねえ。大丈夫、fpsの一強の時代はちょちょいと終わらせてやるから。
てな感じで、色々面倒な上司の説得とかはあったんだが……正直、努力話は嫌いなもんで、以下省略。
え?そこがメインだって?しょうがねえな。まっ、簡単に云わせれば。
「えっ、あたしが言うの?
「えっと……三日前のことでした」
そう、三日前のことだ。俺は関係ないんで、こっからはト書きはナッシング。
「フルダイブシステムをフル活用した最新鋭の新進気鋭のゲームを開発したいと思います」
「何をバカな!あれはまだ安全試験の最中だ。それに問題外あとから発覚したらどうする!」
「そうだそうだ」「我が社の命運に関わる一大事を子会社ごときがどうにかして、どうかなったら我が社の責任だ!」「いや、私は賛同する」「貴様は黙っておれ!」「面白そうだからおっけー!」「気紛れでそういうこと言わないで下さい!」
「黙って待ってろよ」
「……そこまで言うのだから、何かしらのアテはあると考えてもいいんだな」
「ちょっと有能な新人が入って来ましてね」
「新人頼りとは呆れたな」「ホントに」「この忙しい時期に新人に委せるような企画なんて、これだから……」「その新人って、だーれ?」「貴方は黙っていて下さい」
「ならば、
「三週間で企画を纏めてこい」
「社長……?」
「ざわざわ……。ざわざわ」
「それまでに、その新人と其方の実績を出せ」
「は、はい!」
回想終了。
ま、こんな感じで社長説得して、企画を固めることになった。
と、今の話で分からせた通り、俺たちはゲームを造る……じゃねえな。超売れるゲームを企画開発する。
この六人でな。
「感張りましょう!」
そう、頑張らないといけないのだ。あの先輩のせいで。六人とは言えど、全員二十代とは言えど、チームを率いて。最年少の俺が。
……ふざけんじゃねえ!
と、こんな締まらない会話から世界を傾ける程の企画運営は始まったのだとさ。
そんなわけで、ゲームを造るんだが……ちょいと面倒なことに、俺は商売は出来ても、ゲームは触ったこともねえんだよ。
もっと言えば、ゲーム運営なんて分かるはずもねえんだよな。これも全部阿呆で無責任な先輩のせいなんだが。
「なんでもかんでも私のせいってことにしないでくださいよ……」
半分以上はあんたのせいだっつーの。
「でも、いまの時代にゲーム機に触ったことのない人なんていたんですね。異端ですよ。ある意味異才ですよ。異彩を放ってますよ」
ハッハー。誰がうまいこと言えっつったんだよ。でも、その言い方は語弊があるぜ。
俺はことゲームにおいて、ゲーム機に触ったことがないんじゃなくて、ゲームというジャンルに触れたことすらねえんだよ。
「上手いこと返しますねえ。では、そっくりそのままお返しして……誰がうまいこと言えっつったんだよ。なんちゃって」
ちなみに、上手いことを言うためにちょっと誇大表現使ったが、本当はゲーム機に触ったことはあるけど、データだけぶっ飛ばした。
「……え?なにこの人怖!新手の、荒手の怪異か何かですか?」
ホント、失礼な先輩だな。触れて記憶だけぶっ飛ばしてやろうか。
「それはハラスメント……というか、脅迫ですね」
そりゃそうだ。
まあまあ冗談は半分くらいにさておき、半分くらいで捨て置き。本題としよう。
まあ一応、それなりの予習はしてきたつもりだぜ。
「へえ珍しいですね。ぶっつけ本番タイプかと思ってましたよ」
そりゃまあ、そうなんだが……一応クビと将来が関わってるからな。
「そりゃあ、大変ですもんね。大変だという認識があることにビックリですけど」
ぶっ飛ばすぞ!……って、二番煎じは嫌いなんだよなあ……一番が好きだから。
「あなたらしいですね」
まあな。コンセプトっつーか、キャッチコピーだからな。ロリ(?)の頃から。
「ガキ大将張ってそうですもんねぇ……。
「……で、予習の成果は?」
まあまあ、ぼちぼちってとこかな。完璧じゃねえが俺にしては上出来ってとこだ。
三つくらい分かったんだがな。過剰気味な箇条書きみてーになっちまうが……。
まずもって、ゲームクリエイティブはビジネスだ。夢追い人ほど、その性質ゆえに向いてねえ。特に、フルダイブシステムみてえな、夢を描きやすいもんほど、戦略的撤退が出来る程度の覚めた心意気で、ちょうどいいんじゃねーかと思う。まあ、要するに戦略を見るあまり、本質を忘れるようなことがあったらいけねえからな。
次に、だ。尖らせちゃいけねー。まあ、万人受けは必要ってこった。なんてこった、早くもfps一強時代の終焉が遠ざかっちまった。
まあひとまず、その辺はあとに回すし、何とでも出来るとして……。
最後だが。オンラインゲームなんだから、仕手得手、もとい得手不得手があるのは妥協だ。実際、不得手で俺の右に出るヤツもいねーしな。だが、正直な話だ。
全員に平等に戦略くらいは魅せてやりてーじゃねえか。結果、ソイツがどうなってもな。
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んな、ゲーム素人の意見も採り入れられつつ、ゲームの基盤の取り決めを先輩が執り仕切り、進められていた。まずもって、ゲームジャンルはSFかファンタジーか……悩みどころも懸念要素も慎重にならざるをえない場面も、これくらいしかなかったが、何せ、この議題は最初に終わらせなくてはならなかった。そうしねーと、メンドクセーヤツがメンドーな文句ブーたれちまうからな。
「聞こえてんだよ、文句あんのか?」
おっと、声が漏れちまってたかな?わりーわりー。
自称二十五歳だっつー明らかなロ……女子中学生をテキトーにあしらっておく。まあ、実際に二十五歳なら割りかし、かわいそーなヤツなので、軽く紹介くらいはしておこう。
俺の目の前で文句をブーたれる小っこい茶髪ボブショートの吊り目暴言娘。名前は鈎新家沙智、絶賛反抗期中の、確か我がチーム唯一の機械全般担当。
いやー、みんなコテンパンに弱いんだよなー、機械系。そう言う俺もあんまし壊したくねーから触ったことねえんだけど……。てか、ここホントにゲーム開発チームかよ、理系少なすぎんだろ。俺含めて六人中四人が理系じゃねーって、どう考えてもヤバ過ぎんだろ。人材派遣会社に凸るぞ。
「オメーが凸ったら人材派遣会社ぶっ潰れっからやめとけ……。
「というか、そうだよ!人材足りねえよ!いくらウチが天才だからって、頭のネジぶっ飛んでんのかよ!」
そりゃー、こまっちまったなー。どーしよーかなー。
「ぶっ飛ばすぞ!」
「やめて下さい」
俺の後ろから声がかかる。
なんだ、先輩。珍しく俺の心配してくれんのか?なんだいいトコあるじゃん。
「その人ぶっ飛ばしたら、アナタのクビ飛んでますよ……。
「それにアナタ、その人ぶっ飛ばせないでしょう、私も無理です」
いや、ブッ飛ばすぞ!
「それくらいにしときなよ、開発局長。あなたが言うと本気に取られかねないでしょう?」
オメーも言うか、クソメガネ。
俺は苛立つほどに爽やかな声に振り返りついでに罵倒する。声をかけてきた男の名前は、伏島子遠。二十七歳の開発チームの情報担当。なんか、いつも飄々としてて一々ムカつく銀縁メガネの長身痩躯。所謂モテる男だ。
「声に出ていますわ、アホ」
誰がアホだ。お前がアホだ。
幼稚なセリフとともに現れたアホのことも、この際紹介してやるかー。
ホント、何か次から次に……。俺は自己紹介担当じゃねーっつうの。ホント、こんなみんなのこと紹介してあげるなんて、なんて寛大で優しい心の持ち主なんだー。
「ぶっ潰して差し上げましすわ、アホ。
「というか、誰に紹介してるんですの、アホ?」
言っとくけど、紹介はいい感じの暇潰しと発想の転換的な意味を兼ねてんだよ。
それで……。えっと、名前は……何だっけ?
「わたくしの名前、いつになったら覚えていただけますの?しょうがおへんなあ……わたくしの名前は政七海笏城ですわ。流石に覚えてらっしゃると思いますけれど、わたくしも機械系担当のプログラマーですわ!
「是非とも、そのアホな頭のど真ん中にでも堂々と輝かせて置いておいて欲しいものですわ!」
コイツ……、どんだけテンション高いんだよ。喋り方も相まってガチでアホみてえだわ。
んじゃまあ、ついでだしあいつも紹介しとくかー。
「呼んだ……?」
わー、びっくりしたなー。
と言うわけで、アホ女を押し除けてメンドクサそーな女ランキング堂々の第一位に輝きましたメンドクセー女。黒髪の癖っ毛気味なロングで、傍目にはちょっと地味目程度の一番フツーそうな、一番ヤベー女。それがコイツ。
「いぇーい、高槻舞夢ちゃんだぜー、年齢は秘密だぜー。覚えておかないと覚えておけよー。ぶっ潰して捻り潰してやっからよー」
なんなの?このチーム頭おかしい奴らしかいねーじゃん。と言うか、俺含めて女性率高えー。いくら時代が移り変わってるからって酷すぎだろ。そもそもまともなの、俺くらいじゃん。先輩は新人に企画押し付ける阿呆だし、鈎新家は明らか反抗期の女子中学生だし、伏島は敬語系メガネでムカつくし、政七海はですわ口調のアホアホ女だし、高槻は地雷だし。
ヤベー、俺しかまともじゃねー。
「みんなあなたには言われたくねーって思ってますよ。それこそ寸分狂わず、ナノミリ単位で思ってますよ」
そんなにか。いや、流石に分かっちゃいたんだが、まさかそこまで思われてるとは。
ハッハー、なんとも誉れ高いぜ。
でもまあ、気分転換もこれくらいに、片手間に出来上がった企画書持っていくかー。
「もう出来上がったことに驚きですけど、さっきから思ってましたけど、私の紹介がまだですよ。
「……それに、あなたの紹介もまだです。二人分でまだまだです」
ありゃりゃ。忘れてたぜ。あんま必要ねーと思うから軽々しく言わせてもらうぜ。
えっと……。まず先輩から。詳細はさっきの通りだし。名前は紅酸漿彼岸。名前意味わかんねー。一言で言うならスーパー仕事人間、それ以上に言うなら二十六歳のスーパービジネスウーマン。髪色はカーディナルらしいんだが、どうやら染めてないらしいし、名前も本名らしいんだが……、嘘だろ、マジかよ。ってのが本音である。ちなみに先輩とはこの企画以前からそれなりの交流があったんだが、この企画以前は正直あんま好印象はなかったぜ。
「失礼ですね、この新人は」
しょうがねえだろ、本当のことなんだから。
それじゃあ、最後に俺のことでも紹介するか。
ええと……名前は紀埜燈、大卒の二十四歳。常人よりちょっと身体能力の高いだけのか弱い乙女。以上。
「え、女……?」
「レディ!?
「紀埜が?アホが?マジですか!?」
「あれれ、知らなかったぞー」
「あれ?皆さん知りませんでした?」
ありゃ……、普通の少女に誰かツッコミかますかと思ったんだけど……。ていうか、俺が女ってこと知らなかったの?何か達観してそうな雰囲気出してるクソメガネ含めて先輩以外全員?
……マジ、ぶっ殺すぞ!
と、最後に微妙な雰囲気になったが……まあ、これからヨロシク。
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そんなバラバラでお互いがお互いを知りもしねえとこから、俺たちの物語は始まる……。
……なんてベタなことは言ってやんねー!こっから世界傾けんだよ!待ってろよ夢を追うアホども!俺たちがオメーらの現実ブッ壊してやっからよ!
誤字脱字誤植訂正、感想、改善点等々あれば、お気軽にコメントしていただければ幸いです。
ちなみに、私の他作品についてはあまりにライブ感で動かしていたので、ネタが固まるまで休憩です。そちらについても、ご了承ください。