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なんでも屋の奇跡   作者: ハルノユキ
2/2

弐・『芽吹き』 ~2日目~

朝の6時半。まだ人通りは少ない。

だがそこには一人の男子高校生の姿があった。


「こんな朝早くに呼びつけるって、(こう)さんは一体何をするつもりなんだか…。」

俺はボソッとその言葉を吐いた。


今日は光にいつもより早く店に来いと呼び出されている。急に呼び出すのはいつものことだから慣れているが、その旨の伝え方がまた独特で…

使い魔的な感じのサイズの羽がある妖怪の足に手紙を括り付けて

その妖怪を俺の家まで飛ばすといったものだ。いわゆる伝書鳩(でんしょばと)的なものだ。

昨夜その使い魔が自分の部屋の窓にいるのに気づいたときには驚きで、座っていた椅子から転げ落ちてしまった。

(伝書鳩とかいくらなんで非現代すぎるだろ…まあ矢文(やぶみ)とかじゃないだけましか…)

などと思いながら歩いているといつのまにかなんでも屋についていた。なんでも屋の店の前の道には

道にある落ち葉をほうきで片づけている(なぎさ)の姿があった。

「渚さん!おはようございます。」

と俺は駆け寄りながら声をかける。すると渚はこちらを向くと笑顔で

「おはようございます、直央様!光様はまだお支度されているので少々お待ちください。」

と言い、俺をソファーに案内した。


(本当になにをするつもりなんだ?光さんは…)

すると奥から妖狐の姿の光が現れた。

「お、おはようございます!光さん。」

高校に通学している時との姿のギャップが激しくて俺はついつい驚いてしまう。

「あぁ、おはよう。直央。」

そういいながら光は微笑みかけてくる。その姿はあまりにも儚く、美しくて

不覚にも自分の心臓が「ドキッ」と脈を打つのが分かった。

(いや、その笑顔は卑怯!!男でもそれはドキッとしちゃうよ…!)


「今日は渡したいものがあってな、早めに来てもらった。すまんな。」

と光が。

「いえ、大丈夫です。でも渡したいものって何ですか?」

と俺が聞くと、そそくさと光が自分の羽織の内側をさぐって何かを取り出した。

「これだ。」

光の手の中には、少しアンティーク調な古めの小さいケースがあった。

「この中に何か入ってるんですか?」

と俺は首をかしげながら聞くと、光はそのケースを開けた。

するとその中には、指輪が付いた金属の首飾りが入っていた。

「これは、俺の術がかかった首飾りだ。これがあればこの間襲ってきた妖怪ぐらいの相手からなら自分を守ることができる。これでいつも勝手に行動する直央も安心だろ?」

と言われた。その言い方に申し訳なさと若干の苛立ちを覚えながらも

「ありがとうございます。」

と受け取った。

近くで見ると少し輝いて見えた。特に指輪の部分が。

「この指輪の部分、結構年代物なのに輝いて見えるんですが。これは光さんがかけた術の影響か何かですか?」

と聞くと、

「あぁ。術は主に首飾りの中心部分である指輪にかけたからな。俺の術は物にかけると少し光が帯びるようになっているからだな。」

と光が優雅にお茶を飲みながら答えた。

「なるほど、大切にしますね!」

と答えると、少し光の頬が赤くなったような気がした。


「光様~直央様~!お気をつけて行ってらっしゃいませ~!」

と渚が手を大きく振りながら見送ってくれた。

時刻は7時半。あの後なんだかんだ、お茶を飲みながら話していたら気づいたら一時間ぐらい時間が過ぎていた。


「光さん、そういえばなんですが高校には慣れましたか?まぁ、まだ一日しか通ってないですけど。」

と俺は笑ながら聞く。

「まぁな。それに人間の学び舎というのもなかなかに面白い。新たな人間の一部を知れる。まぁ少し女どもがうるさいがな。」

と光が歩きながら答えた。

(まぁ、そんなザ・イケメンみたいな顔とスタイルしてたらそりゃ女子達も黙っていませんよ…)

と内心思いながらも苦笑いで「あ~そうなんですね。ハハ…」と答える。今日も高校生イケメン・神谷 光の姿は健在だ。

「あ、でもそんなこと他の男子に言わない方がいいですよ。傲慢な悩みすぎて男子たちから怒られますからね。」

と俺が冗談交じりで言うと、

「そもそも、こんな会話直央以外の人間とはしない。」

とボソッと光が言うが俺は聞き逃し、

「え、なんか言いました?」

と聞き返すが

「な、なんでもない!」

と跳ね除けられて、急に光が歩幅を大きくして歩き始めた。


学校の校門につくと、空に後ろから誰かが肩によっかかってきた。

そこには(みなと)の姿があった。

「あ、奏!おはよう。」

と俺が声をかける。

「おう、おはよ直央。え、てか光も一緒なの!?」

と驚いた表情で話しかけてきた。

「一緒に来たからな…」

「うん!!家が結構近かったらしくてさ。たまたま会ったんだ!」

と光が言うのを強引にかき消して俺が答える。流石に昨日初めて会った転校生と一緒に登校はさすがに不自然だと思い、とっさに嘘をついた。

当然ながら光はもの言いたげな顔でこっちを見つめてくる。

「ふ~ん、仲いいんだな?」

「ま、まあね~。」

と苦笑いしながら俺は答える。

何故か奏ももの言いたげな雰囲気だった。

「なんだ?俺と直央が仲が良かったら悪いのか?」

と何故か光が強気に言い返した。その顔は奏をあおっているようにも見えた。

「いや、別に?」

と奏も何故か負けじと強気に答える。なんとなく自分を挟んで二人の間に火花が散っているように見えた。


「ま!いいや。てか直央!今日一緒に帰れたりする?」

と聞いてきた、

「えっと、、、なんで…?」

俺はここですぐに「いいよ」と答えると後々痛い目にあいそうだったので理由を聞いた。

「もうそろ、文化祭じゃん?買い出し頼まれててさ、帰るがてらに店に寄ろうと思うんだけど、思った以上に買い出しの量多かったからさ~。もし用事がなければ手伝ってほしくて!お願い!!」

と両手を合わせて頼み込んできた。奏はいつもこんな調子だ。

もちろんついて言ってやりたいのはやまやまだが明らかに後ろに立っているお狐様の機嫌が悪そうだったので

「なぁ、光。だめか?くれたこの首飾りもあるしさ!奏も一緒だし、遅くならないし。な?」

と俺は光の起源を伺いながら聞く。すると何が効いたのか少し光は顔を赤くしながら

「…早く帰ってこい。俺の家で待っているからな。」

と答えた。俺は全力でダメだと押し切られるか、俺もついていくと強引についてくるかのどちらかだと思っていたので拍子抜けだ。


「…なんでこんなやつなんだよ・・・。」

ボソッと奏がぼそっと聞こえた気がして奏の方を見るといつもより顔が曇っている気がした。

「奏、大丈夫か?」

と俺は奏の顔を覗きながら聞くと、奏はいつもの顔に戻って

「い~や、なんでもない!そんじゃ保護者(笑)の許可もとれたし放課後な!」

と笑顔で言い放った後、先に教室に向かってしまった。

「まったく…保護者って…。ほんとに奏は…ふっ。」

少し飽きれと笑いを含ませながら俺が笑っているところに上から俺の顔を光が怪訝そうな顔で見てきた。

「俺はお前の保護者になった覚えはないんだが?」

と真面目な顔で行ってくるものだから俺はさらに笑ってしまった。

「わかってるって!ほら俺らも行くぞ?」

と俺は光の腕を引っ張りながら教室に向かった。


放課後。ホームルームが終わると奏よりも先に光が俺のもとにやってきた。

「門限は7時だからな?」

と言ってくる光に思わず笑いがこぼれた。

「それじゃ、ほんとに保護者だぞ?」

まるで本当に保護者のようなことを言うので今朝の会話を思い出し、

笑いながら俺が茶化すように言うとすこし怪訝そうな顔をして

「絶対に守れよ?」

と念を押ししてきた。

「わかってるよ。」

と俺が答えると、

「ならいい。お前の好きな茶を入れて待っているぞ。」

と微笑みながら俺の顔を見つめてきた。

イケメンフェイスに当てられ俺の顔はゆでたこのように赤くなった。

と同時に

(こんな顔俺以外には見せてないよな…?)

とモヤモヤした感情が湧いた。

(いやいや別にそんなの関係ないだろ!)

と自分の顔を冷ましていると奏がやってきた。

「ほら、直央!早くいくよ!それじゃ、光。直央借りてくよ。」

と俺は奏にひっぱられ教室をあとにした。



「これで最後か~、はぁ疲れた。」

と俺はショッピングモール出てすぐにあるベンチに座り込んだ。

やはり文化祭というだけあって買わなきゃいけないものが多く、結局色んな店をはしごしなければいけなくなった。

ちょうどショッピングモールの中にあった店での買い出しが終わったところだ。

「それな~、てか疲れたしなんか食べる?」

と奏が提案してきた。近くになんかあるか?と考えていると近くに止まっていたキッチンカーが見えた。ソフトクリームを売っているようだ。

「そんじゃ、ソフトクリームでもどう?」

と俺はキッチンカーを指さしながら言う。すると奏は子供のように目を輝かせて

「食う!」

と言って小走りでキッチンカーに向かっていった。


「すみません、チョコレートとミルクのミックス1つ!」

「俺は、ストロベリーでお願いします。」

奏はチョコレートとミルクのミックスを、俺はストロベリーを頼んだ。

友達と立ち寄りでアイスを食べるなんて俺は今まで経験がなかったので少し浮かれている。


「う~ん!アイスうま~!」

「ほんとだ、うまいな…。」

そもそもソフトクリームを食べるのが久々だったということを一口目を食べようとしたところで気付いた。

放課後に友達と買い食い。死ぬまでにできてよかった。同じアイスなのに家で一人で食べるデザートのアイスより友達と食べるアイスの方が明らかにおいしい。奏とは一度こうゆう買い食いをしてみたいとは思っていたからかなってよかった。死ぬまでに春也も誘って三人でどこかに行きたい。などと思いながら、ふと奏の顔を見るとほっぺにチョコがついていた。

「おい、奏。ほっぺにアイスついてるぞ。」

「え、どこどこ!?」

俺が言った言葉に驚いて必死に拭こうとしているがまったく違う所を噴いているのが実に奏らしい。

「ちょっとじっとしてて。」

俺は奏のほっぺについているアイスを指で取り、舐めた。

「うん、甘いな。美味しい。」

と俺は舐めた指を紙ナプキンでふく。そのあとまた奏の顔を見ようとしたら俺と反対の方を向いていた。心なしか奏の耳が赤く見えた。

「何してんだ?」

と俺が顔を覗き込もうとするとまた違う方向を向いてしまった。

「ま、まだ顔についてないか確認してんの!」

と何故か焦ったように答えてきた。


アイスを食べ終わったあと、先ほどと同じベンチで休憩をしていた。

心地よい風が頬に当たりきもちよい。

すると、奏が突然俺の顔を真剣に見つめてきた。

「なぁ、直央。俺に隠してることないか?」

俺の心臓が跳ねる。病気のことか?それとも光さんのこと?それとも俺の財閥の話か?心当たりが多すぎる。

突然の質問に俺は顔に困惑が出るところだったがそれをぐっと抑えて、

「なんも隠してないけど、なんだよ急に。」

バレてはいけない、俺の病気のことも。光のことも。

ましてや俺の病気のことが気付かれたりしたら根のいい奏はきっと俺を心配する。

そんな心配、今更かけたくない。

俺が死ぬまでのあと少しの間ぐらいは笑い合って過ごしたい。こんなことで余計な心配など掛けたくない。

俺が答えたあと10秒ほど沈黙が続いた。そのあと

「…お前、やけに光とかいう転校生と仲いいよな?俺には言えなくて、あいつには言えるのか?」

急に光さんの名前を出してきて拍子抜けした。なぜ今あの人の名前を…

「いや、そうゆうわけじゃなくて…ー。」

と説得しようとした途端

「俺とお前の仲だろ!!!高1の時からずっと同じクラスじゃん、俺ら!隠し事とか…なんでするんだよ!…。」

と大きな声で言われてしまった。

こんな大きな声を出す奏を初めて見て俺も少し驚いた。

「あ、直央ごめん…。」

奏は謝ってきたがこれは完全に俺の落ち度だ。ただ別に奏との関係を軽んじているわけではない。むしろそうだからこそ言えない。

俺が俯いていると奏が俺の顔に手を当てて俺の顔を覗き込んできた。

「でも、俺怖いんだ。なんか直央が俺の全く知らない直央になっちゃう気がして…。最近も体調良くなさそうだったし…。俺にできることならなんでもしてやりたいんだ、’’直央には''。俺が頼りないのかもしれないけど、俺は、俺は…直央のことを大事に思ってるから。」

真剣なまなざしで俺の顔を見てくる奏に俺は少し涙が出そうになった。

(こんな俺にも、俺のことをこんなにも思ってくれる奴はいるんだな…。)

奏の目元には涙がたまっている。申し訳ない。

「そんな顔すんなよ、奏」

俺は少し目元からからはみ出した奏の涙を手で拭う。少し奏は驚いた顔をした。

「いつか、ちゃんと説明するから。」

死ぬ前に説明したい。でもこんなことを言ったらきっと奏も晴也は悲しむ。



あぁ俺がもっと『生きれたら』



午後6時半。奏と別れて現在光さんの家に向かっている。

この調子なら門限の10分前には光さんの家につきそうだ。

今日は奏には申し訳ないことをした。俺がふがいないばかりにあんなことを言わせてしまった。

明日どんな顔で会えばいいんだろう。

俯きながらそんなことを考えていると先ほどまでの心地よい風からは一変、急に風が冷たくなった。

周りの伝統もちかちかと点滅し始めた。薄気味悪い。

俺は急いで光さんの家に向かおうとした途端、どこからともなく声が聞こえた。


「悩める青年よ、俺が助けてたろか?」


気が付いたら俺の目の前に一人の男が立っていた。

黒髪の短い髪に大きい朱色の耳飾り。煙管(きせる)を指で挟みながらもっている。極めつけは頭から生えている長い黒い角。

まさしく鬼と呼ばれるような見た目だ。俺はびっくりして後ろ後ずさる。

「だ、誰ですか…あなたは!?」

と俺が強めに聞くとその鬼はふふっと笑って一瞬で俺の目の前まで詰めてきた。

俺は逃げようとしたが恐怖で足がすくんで動けなかった。

「俺は光の昔からの友人の、(れい)ゆうもんや。いごよろしゅう。」

と両腕を和服の袖にしまい不敵な笑みを浮かべている。

(光さんの知り合い…?本当にこの人が…?)

などと考えているとすかさず、

「自分、今こいつ本当に光の友達なんやろか~とか考えとったやろ~。ほんまやから安心しい。その証拠にほれ、見てみぃ。」

とおもむろに懐から小さいペンダントらしきものを出して俺に投げ渡してきた。

俺はそのペンダントを開けた。すると一枚の小さい写真が入っていた。三人の妖怪が映った写真だった。

「それな~俺と光ともう一人同期の妖怪との写真なんよね。何十年前のっやつやから白黒やけどなぁ。」

よく見ると光さんらしき人が仏頂面で映っている。確かにあの人写真とかあんまり好きじゃなさそうだしな。

その隣で無理やり光さんの肩に腕を回している鬼の妖怪がきっとこの人なんだろう。少し雰囲気が違う感じもするが。その隣にはきれいなウェーブ髪の男性も映っている。

(この人が光さんの友人なのは間違いなさそうだけど…怪しいというか、何というか…)

「君は~たしか、直央くんやっけ?光の新しい契約者だとかなんとか。」

「…!?お、俺のこと知ってるんですね…。それで?要件は何ですか。」

俺は一瞬俺の身元を知られていることに動揺したが毅然とふるまった。

「ふ~ん、自分中々飲み込み早いな。まぁ手っ取り早く今の状況をまとめるとな、俺は君の心の叫びを聞きつけてやってきたんよ。」

「俺の心の叫び…?」

「自分願ったやろ、まだ生きたいって。」

俺の心臓がひゅっと縮まったような気がした。背筋が凍る。

「い、いや俺はそんなこと…。」

「いや、君は願ったはずや。俺はそんな君の願いを聞いてやってきたんやからな。」

後悔はないと思っていた。だから光ともあの内容で契約を交わした。なのに…

俺は高望みをしてしまった。奏と今までできなかったたった数時間の青春を味わったから。


光さんという人と出会ってしまったから。


あの人に出会って初めての経験を沢山した。妖怪と初めて話して友人にもなれて誰かと一緒に登校して笑い合ったり時には怒ったり怒られたり。そんな何気ない日常は俺は嬉しくてついまだ


この人とまだ一緒にいたい。

もっといろんな人と出会いたい。奏とも晴也とももっと遊びたい。


そんな高望みをしてしまった。

「自分が隠してるその’’望み’’、俺やったら叶えてあげれるで?」

零さんは俺の心臓あたりをするどい爪が付いた長い指で指してきた。

俺は更に寒気がした。この人は俺の『全て』を見透かしている。

「は?そんなこと…俺が望んでいるのはつまり『寿命を延ばす』ことで…それは禁術なんじゃ…。」

というと「くくっ」と意味深な笑いをして体を横にしてそのまま宙に浮いた。

「俺をだれやと思ってるん?光と同じ上級妖怪やぞ。そんな事たやすいわ。」

と上から俺の目を金色の瞳で見つめてくる。穴が開きそうなくらい鋭い目で。

「で、でも俺はすでに光さんと契約を結んでいます!これ以上他の妖怪と契約なんて結べるんですか…?」

「ええ質問やね、君!それがねぇ


できるねんなぁ。


実際は上書きって感じやけど。」


意気揚々に答えると空中にあった足を地につけ、また先ほどと同じ距離感で俺の顔を見てきた。

「妖怪と人間の契約はな契約時におっきな力が発生するからな、その強い力を2つも人間の体に同時に共存させるには2つ以上の契約は人間には害やねん。せやから人間は妖怪と契約したらその契約が完遂するまで他の契約は結べないようになっとる。」

と俺の周りをコツコツと鳴らしながら歩き回って説明してくる。

「じゃ、じゃあやっぱり無理なんじゃ…。」

と言いかけると急に顔を俺の顔にぐいっと近づけて

「せやから''上書き''なんや。妖怪と人間の契約を上書きするにはもともとの契約の時に発生した力よりさらに強い力をつこて契約すれば最初の契約は帳消し!ほんで新たな契約が成立するってわけ。わかった?」

(つ、つまり光との契約を上書きすれば俺はもっと生きれるのか…?)

でもこんな都合のいい話あるのか?

「あ、もちろん代償は頂くで?」

「代償…何が欲しいんですか?…俺の魂ですか?」

と俺が聞くと顔色が少し変わった。

「ほ~ん、話早いやんけ、自分。でも俺が欲しいのはそれとプラスでもう一個!」

俺は息をのむ。

「寿命は俺の力を使っても伸ばせてせいぜい3、4年ってとこが妥当や。せやからそのあとの直央くんの魂の所有権は俺に渡してもらう。ほんで死んだ後は妖怪になったとしても光との関わりを一切禁じる。光との縁をすべて切ってもらう。」

そうか、俺が死んだ後妖怪になれば光とまた会えるかもしれない。でも零さんはそれを一切禁じると言った。

「縁を切る…。」

「そうや、縁を切るってことはどんなに相手側が干渉しようとしても相手と話すことはできんしましてや会うこともできん。一生すれ違い状態ってことや。」

「つまり、零さんは俺の魂は食べないけど、一生俺を零さんの奴隷にするってことですか?」

「奴隷なんて、人聞きが悪いな~。一生俺と一緒ってことや♪」

笑顔で言っているがその笑顔からは恐怖しか感じられない。背中に気持ち悪い汗が滝のように流れてくる。

「まぁ、今ここですぐに決めろとまでは言わんけど。君に残された時間は少ないんやからよお~く考えて早く結果伝えてな?ほな~。」

というと一方的に煙のように姿を消してしまった。

俺はどうするべきなんだ。まだ光さんとも奏たちとも一緒にいたい。文化祭はぎりぎり出れるけど、まだ他にもいろんな行事が残ってる…。まだやり残したことが沢山ある。でもここで零さんと契約をすると光さんとの契約を破ることになる。



俺はどっちを取るべきなんだ

こんにちは。ハルノユキと申します。

皆様、お久しぶりでございます。

試験やら~課題やら~なんやらでなかなか執筆する時間が取れず

1話からだいぶ(2年)間が開いてでの投稿となってしましました。誠に申し訳ございません。(汗)


今回は主人公・直央のクラスメイトの奏の登場が多かったですね~。個人的にはチャラチャラしているように見えて実は堅実で欲深い?というキャラ設定の奏ですが皆様の好みには刺さりましたでしょうか?

今回はタイトルの通り、いろんな心情や出来事の予兆がでてきた話となりました!

そしてついにあの人影の正体である鬼の妖怪・れいが登場しました!いや~めっちゃ怪しいですね、我ながらあいつは(笑)。


次話はついに文化祭の準備が本格化し、光との距離が縮まっていきます。その中で変わる直央の心境とは。零の動向も一体どうなっていくのか。


気になる第三話、お楽しみに~。

2025年7月25日 ハルノユキ


追記:コメント等などの反応くれると、とても励みになります…お手暇な際にぜひ…

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