一章・消えた少女
初めまして。私の名前はくるみ。
ユラ、ミレイ、エレナちゃん、エルガ君、クロナちゃん(あとメウちゃん)の5人(6人)と一緒に冒険者をしてるの。
だけど最近仲間のひとりであるエレナちゃんが行方不明になっちゃって…。
今はそのことについて冒険者協会のロビーで冒険者協会総帥のヴァルスさんと一緒に話し合っていた。
「──いなくなったのはいつからだ?」
「先週ね」
「いきなり消えて…匂いをたどったけど見つけられなかったの」
「雨のせいでくるみの鼻が利かなかったんだ」
「あね様どこいっちゃったのだ…?」
「うーん…なにか痕跡があればいいんだが…」
ヴァルスさんもさすがに困っていた。
私は妖狐なので、鼻が利く。この鼻で人探しなどは容易いことなのだが、今回は雨のせいで匂いが掻き消されてしまった。そのため追跡が不可能になってしまい、ギルドに頼ることになったのだ。
「うーん…とりあえずこちら側で対処しよう。ギルメンにてわけして捜索してもらう」
「ありがとうギルマス…早く見つかるといいなぁ」
「そうね…」
ユラが頷きながらため息をついた。
とりあえず今私たちは、ギルドからの報告を待つしかできることはなくなったのだった。
○
5日後。
ギルドに呼ばれた私達はギルドハウスのロビーにいた。
「エレナの情報を見つけた」
「どこにいるのかしら?」
「それなんだが…」
ヴァルスさんは顔を曇らせた。
何かあったのだろうか…?
「…エレナが、人を殺しているそうだ」
「「「…えぇっ!?」」」
私たち5人は揃えて声を上げた。
エレナちゃんが…人殺し…?
元々エレナちゃんは他人に虐められていて、人を恐れていた。けど人に対してはとても優しくて、とても人を殺すような子ではなかった。
『…くるみさん…私…変わりたいです』
『変わりたい…?』
『はい…。私、このまま人が怖いまま生きていくのは嫌なんです。人と沢山喋ったり…遊んだり…関わってみたいです』
『エレナちゃん…』
エレナちゃんとの会話をふと思い出した。
彼女はあの時、うるうるな目で私を見つめていた…。
ずっと純粋で、透き通った音…。私に聞こえる心音は、とても優しい聞き心地だった。
「エレナちゃんが…そんなことするわけないよ…!」
「俺も何かの間違いじゃないかと思った。だが、ギルメンの情報を参照したが完全に一致。本人のようなんだ…」
「そんな馬鹿な…」
ここにいるみんなが頭を抱えた。
「…どこにいるのか分かるかしら?」
「今は西の大森林にいるらしい」
「それじゃあ…そこに行ってみよっか…」
「のだ!ほんとにあね様が人殺ししてるなら止めなきゃだぞ!」
「あぁそうだな。出来れば急ごう」
みんな頷いた。そしてユラを先頭に私たちはギルドを後にした。