序章・死を与える者
ぐしゃり、ぐしゃり…
嫌な音が響く。
そこにいるのは赤髪の女性と、横たわる男。
男は既に息絶えていた。
女性は…男を踏み付けていた。男の体は、骨は折れ、内臓が飛び出ているほどに肉体に穴が空いていた。
女性の仕業だった。
「…残酷に殺してやったわよ…」
女性は独り言を呟いた。
そして男の死を確認し、その場を離れた…。
○
女性は森の中の小屋にいた。
そこにはもう1人分、人影があった。
20代くらいの男がいた。
「どうか…僕を殺してください…!!」
男はそう女性に向かって言った。
すると女性は優しく笑った。
「いいわよ。だけど…どうして死にたくなったのかお話を聞かせて欲しいわ…もしかしたら、私が力になれるかもしれないわ」
「そうですね…僕は…ずっと努力してきたけど…ダメだったんです…っ!」
男は涙を流しながら語った。
「幼い頃からこれといった才能がなく…それどころか何をやっても失敗続きで…親にも出来損ないと貶され…生きる意味を感じなくなってしまったんです…うぅっ」
「あら…ずっと頑張ってきたのね…可哀想に…」
「どうか…こんな僕を殺してください…!痛くても苦しくても、どんな方法でも構いません…だから…どうか…うぅっ…僕を…殺してください…エレナさん…!」
女──エレナは男の話を聞き、微笑んだ。
「わかったわ…ずっと頑張ってきたあなたは苦しまないように殺してあげる。すぐ楽になれるわ…」
エレナは立ち上がり、男の頬を撫でた。
その瞬間に…
ドサッ
鈍い音がして男が倒れた。
すでに息は止まっていて…死んでいた。
「…これでいいでしょう」
エレナはそう言い残し、小屋を立ち去った。
死を望む者に死を与える者、エレナ。
彼女の真意は一体…