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王甥殿下の幼な妻  作者: 花鶏
第一章 幼な妻の輿入れ
9/109

09



「マティアス殿下、本日も奥様からお手紙を預かっています」


 盆に乗った浅葱色の封筒を受け取って、マティアスは無言で小間使いを下がらせる。


 ―――なんでこうなった。


 嫁いで早々体調を崩した妻を心配して、少々頑張って問題を解決した。翌日から徐々に食事もとっているようだし、もう特に話すこともない。


 元々健やかに過ごしてくれれば関わるつもりも無かったので、以来こちらからは連絡を取ってはいない。

 婚礼と同時に母から充てがわれた同じ屋敷にいるが、屋敷自体も広いし、わざと距離のある部屋を使っているので偶然会うことも滅多にない。

 このまま恙なく四、五年を過ごし、恙なく離縁すればいい筈だった。


 ところが、その三日後から、彼女から手紙が届くようになった。


「また夜伽のお誘い?

 もう受けちゃえば?」

「うるさい。

 夫婦のやりとりを覗き込むんじゃない」


 肩口から覗き込むアーネストを押しやってマティアスは手紙を丸めた。


「話を聞いた時は変わった子だと思ったけど、そりゃあ困ってるところを助けてもらったら惚れちゃうかぁ。

 他の人の手柄にするとか根回ししといた方が良かったかもな」

「……そのことについては別に後悔していない。

 カロリーナの言ったことが理解できてる訳じゃないが、たぶん、あの日じゃないともう話してはくれなかったと思う。


 ―――本当なら初日にしっかり話しておけば、彼女を無駄に苦しませることもなかった……」


 リリアは回復してはきたものの、念のため診せた侍医は、二日間の強すぎるストレスの所為で今後もことあるごとに調子を崩す可能性がある、と言った。



「どうする?

 仕事を理由にずっと断るのも変じゃないか?」


 屋敷の使用人は殆どが母の用意したもので、恐らくこの手紙の事も筒抜けだ。

 母は悪い人ではないが謀略好きで、ヴォルフの廃太子を進めるためにマティアスに子どもを作らせたがっている。

 この点に於いてこの屋敷に、マティアスの意思を尊重してくれる使用人は、侍従のアーネストと侍女のカロリーナの他には数名しかいなかった。


「………こういうことは控えるよう、一度話してくる」




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