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王甥殿下の幼な妻  作者: 花鶏
第六章 王甥殿下の責務
76/109

06



 岩壁の要塞の上に、自然の大理石を彫り上げて作られた神殿が、蒼天を切り取るように聳える。

 麓からは見えない荘厳な姿に、マティアスとリリアは目を見張った。


 少し眠そうなラビンドラが、マティアスに説明する。


「この門を潜ったら、共通語はもう話さないでください」

「承知しました。眠そうだが、大丈夫ですか?」

「いやあ、殆ど寝てないので……リリアさんとのお話は、質問されたこちらがはっとさせられることもあって、興味深い時間でした……不謹慎で、申し訳ない」

「ご迷惑でなかったなら良かった」


「……殿下は、眠れましたか」

「はい。昨日は一日登山で疲れていたので」


 昨夜は書庫で仮眠を取ると出ていった二人を待たず、早々に眠りについた。

 今日は国の命運のかかった大切な会議に出席するので、言葉が分からないからといって眠い顔をする訳にはいかない。


「リリアも寝不足だろう、大丈夫か?」

「はい。調べ物をする時はよくあることです。思考効率に影響ない程度には仮眠をとりました」

「俺の嫁は、頼もしすぎるな」


 尋儀の儀長側に座るラビンドラと別れて、マティアスとリリアは門を潜る。神殿に入り、案内に付いていくと、高い天井の広間に通された。円卓に八人の長衣の儀長たちが座り、それぞれの背後に二人ずつ副官が立っている。



 その後ろの階段の上の王座で、イドゥ・ハラルの女王アイディティアが脚を組んでいた。



 マティアスたちとの距離は遠く、神幕の影でその姿ははっきりとは捉えられなかった。


 マティアスとリリアのための場所にも、椅子がひとつしかない。二人が無言で譲り合っていると、女王が何かを言ってもう一つ椅子が運ばれてきた。


 イドゥ・ハラルの神事を取りまとめる高僧の八人。その中にラビンドラが座っている。こうして見ると、他の老齢の儀長たちに比べて彼が随分若いことが分かる。

 彼も尋儀中は眠い顔などできないはずなのに、深夜までリリアに付き合ってくれたと聞いた。リリアがとても参考になったと言っていたのでありがたいことだった。


 儀長の一人が何かを宣言し、女王が立ち上がって右手を掲げる。



 ヴィリテ王国とイドゥ・ハラル王国の命運をかけた協議が、厳かに始まった。





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