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第九話

 アムリはムチャクチャだった。


 ムチャクチャ強かった。


 ダンジョンの中に入ってもアムリは無双していた。


 指弾で飛ばした小石でオークの頭を打ち抜いた時は引いたし、小型のドラゴンの首を手刀で斬り飛ばした時はチビるかと思った。そんなアムリなので、ギルド登録から一週間で初級から下級にあがり、その次の週には中級にあがっていた。上級にあがってほしいとギルド側から乞われていたが辞去しているらしい。上級になると下級のルシアンでは同道できない依頼も振られるようになるからだそうだ。


 ともあれ、金銭的な不安は綺麗に消えた。


(なんて恐ろしいガキだ……)


 横で寝息を立てるアムリに視線を向ける。


 もともとベッドが一つしかないため、引っ越すことも提案したが、一緒に寝ればいいと押し切られた。そもそも、どうして一緒に暮らすことになったのか、ルシアンにだってわからない。


(逆らえる気がしない……)


 アムリの強さを利用しようにも、いつ何が理由で爆発するかわからないのだ。今はルシアンに対して献身的な態度を取っているが、それが本心だとはどうしても思えなかった。


(ガキとはいえ女だ。信じるわけにはいかない。もう二度とツボを売られるわけにはいかないんだ……)


 当のアムリは薄い寝間着を着ながら、女神のような微笑みを浮かべて寝息を立てていた。かなりの美少女だとルシアンも認めざるをえない。だが、さすがに十二歳の少女に手を出す気は無いし、ルシアンは不能なので、間違いは起こりようが無かった。

 とはいえ、ミリス教の教義に反する行為ではある。


(お許しください、ミリス様。俺の愛はミリス様に全て捧げてます。マジっす)


 七神教の中でも、最も貞節を重んじるのがミリス教徒だ。母親が敬虔なミリス教徒だったため、ルシアンもその影響を強く受けている。

 婚姻関係を結ぶまで童貞を貫くべきだと思っているし、妻以外の女性とは関係を持つべきではない。今となっては妻を持つ気すらなかった。女神への信仰に全てをささげ、生涯童貞を貫いて現世の女と隔絶した人生を送るつもりである。


 当然、ルシアンはアムリに対して訥々とミリス教の教えを説き、男女は七歳を越えたら同衾してはいけないということも伝えた。返ってきた答えは「私はミリス教徒じゃないので大丈夫です! ふんす!」というものだった。大丈夫ではない。


 そもそも、いつ寝首を掻いてきてもおかしくない相手と同じベッドで眠るのはストレス以外の何物でもなかった。ドラゴンと一緒に寝ている感覚に近い。


(もうダメだ……個室が欲しい。もっと広い家に引っ越そう……)


 一人暮らしを懐かしく思うルシアンだった。


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