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第六話

 冒険者には六つの階級がある。


 上から神級、特級、上級、中級、下級、初級となり、ルシアンは下級冒険者だった。才女であるシャルロットでさえ一つ上の中級であり、上級冒険者となるとオラハムの冒険者ギルド内でも二人いるくらいだ。


(特級冒険者ね……詐欺とはいえ、大きく出たな……)


 ルシアンとしてもアムリを危険な冒険者にする気は無かったのだが、アムリが冒険者に登録してくると言って本当に登録してきてしまった。


「さあ、ルシアン様! 夫婦でパーティーを組みましょう!」


 ここにきて「この子はやべぇ奴なのではないか?」という考えが確信に変わっていた。少なからずの恐怖を感じはしたものの、ルシアンがどん詰まりであることも事実だった。


 出て行けと言っても出ていってくれないし、街の司法官に子供の変質者につきまとわれて困ってるんだ、と相談しても鼻で笑われる。友人を頼っても「失恋したからって将来の妻を育てるとか、その手があったか……ではなく最低だな」とか「美少女に言い寄られるとか、なにそれ自慢? 同じミリス教徒としてうらやま……もとい殺意しかわかないよ」とか言われて、異端審問にかけられそうになった。


「もうどうにでもなーれ♪」


「はい、どうにかしていきましょう! ふんす!」


 考えるのも億劫になってきたので、パーティーを組むことにした。新手の特殊詐欺でもなんでもいい。そうなったら、その時考えればいいのだ。


(全てを強引にポジティブ変換しちまえば、この世はいつでも神のパラダイス!)


 思考放棄し、無理やりテンションを上げることにした。

 実際、アムリの魔術は本物だから、後方支援には期待できる。ルシアンは剣士として前衛をこなせばいいので、案外、バランスのいいコンビかもしれない。

 とはいえ、一緒にパーティーを組むならば、それ相応の装備というものが必要になる。ルシアンはアムリを連れて古着屋を訪れていた。


「ルシアン様、ルシアン様、この服とこの服、どちらがお好みでしょうか?」


 およそ冒険者らしからぬヒラヒラした服を持ってきていた。


「もっと厚手の服にしろ。モンスターも出てくるし。基本は長袖長ズボンだ」

「お言葉ですが、魔術障壁を使うので服の強度は問題ありません」

「いや、常に魔術使うわけにはいかないだろ? 奇襲されたらどうするんだよ?」

「常に障壁は張りますよ? と言うか、今も張ってますし」


 しれっと言っていた。常時魔術障壁の展開など<王級>と冠される腕前の魔術師でなければ、できない芸当だ。浮浪児だから知識がなく、妄想の設定も甘いのだろう。苦笑を浮かべつつ「そいつはすごい」と肩をすくめた。


「とはいえ、少しでも生き残る可能性をあげたほうがいいぞ。お前に死なれたら、俺も困る」

「そこまで心配なさっていただけるなんて……」


 感極まったように紅潮していた。


「わかりました! もとより身も心もルシアン様のもの! ルシアン様のお許しなく、わずかな傷も受けないと、ここに誓います!」


 大きな声でそんなことをのたまったため、周囲の客から変な目で見られてしまった。十二歳の少女に手を出す鬼畜と映ったかもしれない。ため息をつきつつアムリの買い物を続けた。

 そんなやりとりをしていたのに、最終的にアムリは露出の多い服を選んでいた。


「おい、俺の話は聞いてたか?」

「かわいいほうが良いかと思ったのです。かわいいは凶器になると、リーシャ様もおっしゃってました。ふんす!」


 肩を出しているし、ズボンではなくスカートだ。女性冒険者がスカートをはいたり、肩を露出していることが無いわけではない。軽装のほうが動きやすいのは事実だし、シャルロットも基本はヒラヒラした服を着ていた。だが、そういう装備は魔術的な祝福が添付されている。いわゆる魔術障壁が服に施されているのだ。当然、値段は爆上がりするし、そもそも古着屋で扱うようなものではない。


「あのさ……」

「かわいいは凶器です! ふんす!」


 どうやら引く気は無いらしい。


「まあ、お前の金だからどう使おうと自由だけど、本当に大丈夫なのか?」

「はい。大丈夫です! きちんと下着もつけています! ふんすふんす!」


 やる気に満ちた鼻息を鳴らしていた。


(子守りって大変だな……)


 必要最低限の準備を終えた二人は、その流れのままギルド事務所に赴くことにした。



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