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『あのね...ブーケとったよ』
私は目の前に置いたブーケを見ながら彼に伝えた。
「おっ!!凄いじゃん!!」
『綺麗だから、後で写真送るね。幸せのお裾分け。』
「あ、もうドレス着替えちゃった?ブーケと一緒に写真送ってよ」
『えー、それはいいよ。ブーケだけ送る』
考えもしなかった発言に笑ってしまった。
「なんでだよ。ブーケとツーショット送って」
彼はなぜか楽しそうだ。
『うーん。考えとく。』
私は少し照れていた気がする。
「今度、その親友さん紹介してよ」
『な、ちょっとだめだよ!!もう人妻なんだからね!!』
突然何を言い出すのか、彼の意図をくみ取れず焦る私に
「何言ってんだよ。
大事な人の親友だから挨拶したいだけだよ。」
彼は冷静に答えた。
『なんだ!!そういうこと?』
普段、“人を紹介して”なんて言うことのない彼だからこそ、本当にびっくりしたわけなのだが
「当たり前じゃん。何考えてんの?」
と笑われた。
『実は親友にも結構前から“彼のこと私に紹介しなさい”って言われてたんだ。“咲月に相応しい相手かどうか私が判断してあげるから”って。』
「それはなんか怖いね。
でも、伝えておいてよ。ぜひお会いしましょうって。」
自分の大切な人達が対面するのは恥ずかしくもあり、嬉しくもある。仲良くなってくれたら楽しいだろうな。
「それに、きっかけをくれたお礼もしたいし」
『きっかけ?』
お礼をするようなことがあっただろうか。
「俺達もそろそろ結婚しようか。」
『え?』
彼からのいきなりの提案に一瞬頭が真っ白になる。
「ブーケとったんでしょ?次は咲月が幸せになる番じゃん」
『私、そんなつもりで言ったんじゃないよ』
本当にブーケの話はそんなつもりで言ったわけではなかった。
親友の幸せの欠片を形として分けてもらえた感覚が凄く嬉しくて、幸せで、彼に伝えたかっただけだった。
「分かってるよ。
でも、タイミングが分からなくてなかなか言えずにいたから。」
『......うん。』
私は少し声を詰まらせた。
「泣くなよ」
彼に笑われた。
『…泣いてないからっ!!』
もうすでに私の声は震えていた。
もしかしたら、親友からすればこの状況も充分“今!?”なのかもしれないが、この時私にはそんな余裕はなかった。
「その涙、まだとっておいてもらえませんか?今のはプロポーズの予行練習なので」
『え?』
プロポーズに予行練習なんてあるのだろうか。
「俺、プロポーズは直接言う派なので、今度会った時改めて言わせて?だから、それまで涙はとっておいてよ」
『......はい。』
そう返事をしたものの、もう涙は止められなかった。
「言ってるそばから泣いてんじゃん」
本番の私は大丈夫なのだろうか。
終