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幸せそうな親友の姿を見てなんとなく彼が恋しくなり、電話をしてみることにした。
プルルルルという何度かの呼び出し音の後、
ずっと聞きたかった彼の声が聞こえた。
「もしもし。」
『あ、もしもし。今、お電話大丈夫ですか?』
嬉しさで少し声が弾みつつ、なぜか少し冗談交じりのような敬語になってしまった。
「ふふ。大丈夫ですよ。どうされましたか?」
彼からも同じような口調で返ってきた。
『あー、ちょっと......声が聞きたかっただけ......』
特に用事があったわけではない私は“どうされましたか”の答えに一瞬戸惑いつつ、ずっと心にあった本心を伝えた。
「そう?なんか久しぶりな気がする。」
『最近全然会ってなかったし、連絡もメッセージばっかりでほとんど電話はしてなかったからね。』
「ここのところずっと咲月さんはお忙しそうでしたからね。」
彼はわざと嫌みのような言い方で冗談を言った。
『私は別に......。』
もちろん本気で嫌みを言われているわけではないと分かってはいるものの
少しばつの悪さを感じた私は、もごもごと返事を返した。
「仕事忙しかったんでしょ?
この時期は毎年忙しいもんね。体調は大丈夫?疲れてない?」
会えなくても、なかなか連絡が取れなくても、状況を察し気遣ってくれる。
彼のそんなところが好きで、私はとても尊敬していた。
『うん。大丈夫。元気だよ!!
いつもありがとう。』
自分も彼にそんな風にできたらなと、彼の優しさに触れた瞬間にいつも思う。
「え、何が?」
『いや、なんでもない。健は?元気だった?』
しかし、それはいつも彼に先を越されてしまうのだ。
「俺?俺は元気だよ。」
『そっか。良かった』
彼が元気であることを確認し、安心していると
「今日どうだった?友達の結婚式だったんでしょ?」
彼からのいきなりの質問に驚いた。
『え?覚えてたの?』
最近は彼にその話をしていなかったのに、日付まで覚えているなんて。
「そりゃ、覚えてるよ。半年も前から親友の結婚式があるって喜んではりきってただろ」
『半年は嘘だよ』
大袈裟な期間を言われ少し反論する。
「嘘じゃないよ。だいぶ前から騒いでたもん」
『だって、本当に嬉しかったんだもん』
確かに結構前から喜んでいたことを思い出し、事実を認めつつも少し口を尖らせた。
「今日は泊まりだっけ?」
『そう。旦那さんのご実家の方で式をあげたから。
日帰りできないこともないんだけど、せっかくだし観光がてら泊まって行ってってホテルまで用意してくれたの。
なかなか会えない友達にも会えて楽しかった。
何より親友がすっごい綺麗だった。』
「良かったな」
彼は穏やかな声で言った。
『今までのこと思い出して、親友より先に泣いちゃった』
「え?主役より先に泣くなよ」
今度は笑った声で言った。